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〘1㌻〙

第1章

1 元始はじめに神かみ天地てんちを創造󠄃つくりたまへり 2 地ちは定形かたちなく曠空󠄃むなしくして黑暗󠄃やみ淵わだの面おもてにあり神かみの靈れい水みづの面おもてを覆󠄄おほひたりき 3 神かみ光ひかりあれと言いひたまひければ光ひかりありき 4 神かみ光ひかりを善よしと觀みたまへり神かみ光ひかりと暗󠄃やみを分󠄃わかちたまへり 5 神かみ光ひかりを晝ひると名なづけ暗󠄃やみを夜よると名なづけたまへり夕ゆふあり朝󠄃あさありき是これ首はじめの日ひなり

6 神かみ言いひたまひけるは水みづの中なかに穹蒼おほぞらありて水みづと水みづとを分󠄃わかつべし 7 神かみ穹蒼おほぞらを作つくりて穹蒼おほぞらの下したの水みづと穹蒼おほぞらの上うへの水みづとを判󠄄わかちたまへり即すなはち斯かくなりぬ 8 神かみ穹蒼おほぞらを天てんと名なづけたまへり夕ゆふあり朝󠄃あさありき是これ二日ふつかなり

9 神かみ言いひたまひけるは天てんの下したの水みづは一處ひとところに集あつまりて乾かわける土つち顯あらはるべしと即すなはち斯かくなりぬ 10 神かみ乾かわける土つちを地ちと名なづけ水みづの集合あつまれるを海うみと名なづけたまへり神かみ之これを善よしと觀みたまへり 11 神かみ言いひたまひけるは地ちは靑草あをくさと實蓏たねを生しやうずる草蔬くさと其類そのるゐに從したがひ果みを結むすびみづから核󠄂たねをもつ所󠄃ところの果みを結むすぶ樹きを地ちに發出いだすべしと即すなはち斯かくなりぬ 12 地ち靑草あをくさと其類そのるゐに從したがひ實蓏たねを生しやうずる草蔬くさと其類そのるゐに從したがひ果みを結むすびてみづから核󠄂たねをもつ所󠄃ところの樹きを發出いだせり神かみこれを善よしと觀みたまへり 13 夕ゆふあり朝󠄃あさありき是これ三日みつかなり

14 神かみ言いひたまひけるは天てんの穹蒼おほぞらに光明ひかりありて晝ひると夜よるとを分󠄃わかち又󠄂また天象しるしのため時節󠄄ときのため日ひのため年としのために成󠄃なるべし 15 又󠄂また天てんの穹蒼おほぞらにありて地ちを照てらす光ひかりとなるべしと即すなはち斯かくなりぬ 16 神かみ二ふたつの巨󠄃おほいなる光ひかりを造󠄃つくり大おほいなる光ひかりに晝ひるを司つかさどらしめ小ちいさき光ひかりに夜よるを司つかさどらしめたまふまた星ほしを造󠄃つくりたまへり 17 神かみこれを天てんの穹蒼おほぞらに置おきて地ちを照てらさしめ 18 晝ひると夜よるを司つかさどらしめ光ひかりと暗󠄃やみを分󠄃わかたしめたまふ神かみこれを善よしと觀みたまへり 19 夕ゆふあり朝󠄃あさありき是これ四日よつかなり

20 神かみ云いひたまひけるは水みづには生物いきもの饒さはに生しやうじ鳥とりは天てんの穹蒼おほぞらの面おもてに地ちの上うへに飛とぶべしと 21 神かみ巨󠄃おほいなる魚うをと水みづに饒さはに生しやうじて動うごく諸すべての生物いきものを其類そのるゐに從したがひて創造󠄃つくり又󠄂また羽翼󠄅つばさある諸すべての鳥とりを其類そのるゐに從したがひて創造󠄃つくりたまへり神かみ之これを善よしと觀みたまへり
 1㌻ 
22 神かみ之これを祝しゆくして曰いはく生うめよ繁息ふえよ海うみの水みづに充牣󠇯みてよ又󠄂また禽鳥とりは地ちに蕃息ふえよと 23 夕ゆふあり朝󠄃あさありき是これ五日いつかなり

24 神かみ言いひ給たまひけるは地ちは生物いきものを其類そのるゐに從したがひて出いだし家畜かちくと昆蟲はふものと地ちの獸けものを其類そのるゐに從したがひて出いだすべしと即すなはち斯かくなりぬ 25 神かみ地ちの獸けものを其類そのるゐに從したがひて造󠄃つくり家畜かちくを其類そのるゐに從したがひて造󠄃つくり地ちの諸すべての昆蟲はふものを其類そのるゐに從したがひて造󠄃つくり給たまへり神かみ之これを善よしと觀み給たまへり 26 神かみ言いひ給たまひけるは我儕われらに象かたどりて我儕われらの像󠄃かたちの如ごとくに我儕われら人ひとを造󠄃つくり之これに海うみの魚うをと天空󠄃そらの鳥とりと家畜かちくと全󠄃地ぜんちと地ちに匍はふ所󠄃ところの諸すべての昆蟲はふものを治をさめしめんと〘1㌻〙 27 神かみ其その像󠄃かたちの如ごとくに人ひとを創造󠄃つくりたまへり即すなはち神かみの像󠄃かたちの如ごとくに之これを創造󠄃つくり之これを男をとこと女をんなに創造󠄃つくりたまへり 28 神かみ彼等かれらを祝しゆくし神かみ彼等かれらに言いひたまひけるは生うめよ繁殖ふえよ地ちに滿盈みてよ之これを服󠄃從したがはせよ又󠄂また海うみの魚うをと天空󠄃そらの鳥とりと地ちに動うごく所󠄃ところの諸すべての生物いきものを治をさめよ 29 神かみ言いひたまひけるは視みよ我われ全󠄃地ぜんちの面おもてにある實蓏たねのなる諸すべての草蔬くさと核󠄂たねある木果このみの結なる諸すべての樹きとを汝等なんぢらに與あたふこれは汝なんぢらの糧かてとなるべし 30 又󠄂また地ちの諸すべての獸けものと天空󠄃そらの諸すべての鳥とりおよび地ちに匍はふ諸すべての物もの等など凡およそ生命いのちある者ものには我われ食󠄃物しよくもつとして諸すべての靑あをき草くさを與あたふと即すなはち斯かくなりぬ 31 神かみ其その造󠄃つくりたる諸すべての物ものを視みたまひけるに甚はなはだ善よかりき夕ゆふあり朝󠄃あさありき是これ六日むいかなり

第2章

1 斯かく天地てんちおよび其その衆群しうぐん悉こと〴〵く成󠄃なりぬ 2 第七日なぬかめに神かみ其その造󠄃つくりたる工わざを竣をへたまへり即すなはち其その造󠄃つくりたる工わざを竣をへて七日なぬかに安息やすみたまへり 3 神かみ七日なぬかを祝しゆくして之これを神聖󠄃きよめたまへり其そは神かみ其その創造󠄃つくり爲なしたまへる工わざを盡こと〴〵く竣をへて是この日ひに安息やすみたまひたればなり

4 ヱホバ神かみ地ちと天てんを造󠄃つくりたまへる日ひに天地てんちの創造󠄃つくられたる其その由來ゆらいは是これなり 5 野のの諸すべての灌木きは未いまだ地ちにあらず野のの諸すべての草蔬くさは未いまだ生しやうぜざりき其そはヱホバ神かみ雨あめを地ちに降󠄄ふらせたまはず亦また土地つちを耕󠄃たがへす人ひとなかりければなり 6 霧きり地ちより上のぼりて土地つちの面おもてを遍󠄃あまねく潤うるほしたり
 2㌻ 
7 ヱホバ神かみ土つちの塵ちりを以もつて人ひとを造󠄃つくり生氣いのちのいきを其その鼻はなに嘘入ふきいれたまへり人ひと即すなはち生靈いけるものとなりぬ 8 ヱホバ神かみエデンの東ひがしの方かたに園そのを設まうけて其その造󠄃つくりし人ひとを其處そこに置おきたまへり 9 ヱホバ神かみ觀みるに美麗󠄃うるはしく食󠄃くらふに善よき各種もろ〳〵の樹きを土地つちより生しやうぜしめ又󠄂また園そのの中なかに生命いのちの樹きおよび善惡ぜんあくを知しるの樹きを生しやうぜしめ給たまへり 10 河かはエデンより出いでて園そのを潤うるし彼處かしこより分󠄃わかれて四よつの源みなもととなれり 11 其その第一だいいちの名なはピソンといふ是これは金きんあるハビラの全󠄃地ぜんちを繞めぐる者ものなり 12 其その地ちの金きんは善よし又󠄂またブドラクと碧玉へきぎょく彼處かしこにあり 13 第だい二にの河かはの名なはギホンといふ是これはクシの全󠄃地ぜんちを繞めぐる者ものなり 14 第だい三さんの河かはの名なはヒデケルといふ是これはアッスリヤの東ひがしに流ながるゝものなり第だい四しの河かははユフラテなり 15 ヱホバ神かみ其人そのひとを挈󠄄とりて彼かれをエデンの園そのに置おき之これを理をさめ之これを守まもらしめ給たまへり 16 ヱホバ神かみ其人そのひとに命めいじて言いひたまひけるは園そのの各種すべての樹きの果みは汝なんぢ意こゝろのまゝに食󠄃くらふことを得う 17 然されど善惡ぜんあくを知しるの樹きは汝なんぢその果みを食󠄃くらふべからず汝なんぢ之これを食󠄃くらふ日ひには必かならず死しぬべければなり

18 ヱホバ神かみ言いひたまひけるは人ひと獨ひとりなるは善よからず我われ彼かれに適󠄄かなふ助者たすけを彼かれのために造󠄃つくらんと 19 ヱホバ神かみ土つちを以もて野のの諸すべての獸けものと天空󠄃そらの諸すべての鳥とりを造󠄃つくりたまひてアダムの之これを何いかと名なづくるかを見みんとて之これを彼かれの所󠄃ところに率󠄃ひきゐいたりたまへしアダムが生物いきものに名なづけたる所󠄃ところは皆みな其その名なとなりぬ〘2㌻〙 20 アダム諸すべての家畜かちくと天空󠄃そらの鳥とりと野のの諸すべての獸けものに名なを與あたへたり然されどアダムには之これに適󠄄かなふ助者たすけみえざりき 21 是こゝに於おいてヱホバ神かみアダムを熟ふかく睡ねむらしめ睡ねむりし時とき其その肋骨あばらぼねの一ひとつを取とり肉󠄁にくをもて其處そのところを塡塞ふさぎたまへり 22 ヱホバ神かみアダムより取とりたる肋骨あばらぼねを以もて女をんなを成󠄃つくり之これをアダムの所󠄃ところに携つれきたりたまへり 23 アダム言いひけるは此これこそわが骨ほねの骨ほねわが肉󠄁にくの肉󠄁にくなれ此これは男をとこより取とりたる者ものなれば之これを女をんなと名なづくべしと 24 是故このゆえに人ひとは其その父󠄃母ちちははを離はなれて其その妻つまに好合あひ二人ふたり一體いつたいとなるべし 25 アダムと其その妻つまは二人ふたり俱ともに裸體はだかにして愧はぢざりき
 3㌻ 

第3章

1 ヱホバ神かみの造󠄃つくりたまひし野のの生物いきものの中なかに蛇へび最もつとも狡猾さがし蛇へび婦󠄃をんなに言いひけるは神かみ眞󠄃まことに汝等なんぢら園そのの諸すべての樹きの果みは食󠄃くらふべからずと言いひたまひしや 2 婦󠄃をんな蛇へびに言いひけるは我等われら園そのの樹きの果みを食󠄃くらふことを得う 3 然されど園そのの中央なかに在ある樹きの果實みをば神かみ汝等なんぢら之これを食󠄃くらふべからず又󠄂また之これに捫さはるべからず恐おそらくは汝等なんぢら死しなんと言いひ給たまへり 4 蛇へび婦󠄃をんなに言いひけるは汝等なんぢら必かならず死しぬる事ことあらじ 5 神かみ汝等なんぢらが之これを食󠄃くらふ日ひには汝等なんぢらの目め開ひらけ汝等なんぢら神かみの如ごとくなりて善惡ぜんあくを知しるに至いたるを知しりたまふなりと 6 婦󠄃をんな樹きを見みれば食󠄃くらふに善よく目めに美麗󠄃うるはしく且かつ智慧󠄄かしこからんが爲ために慕したはしき樹きなるによりて遂󠄅つひに其その果實みを取とりて食󠄃くらひ亦また之これを己おのれと偕ともなる夫をつとに與あたへければ彼かれ食󠄃くらへり 7 是こゝにおいて彼等かれらの目め俱ともに開ひらけて彼等かれら其その裸體はだかなるを知しり乃すなはち無花果樹いちじくの葉はを綴つづりて裳もを作つくれり 8 彼等かれら園そのの中うちに日ひの淸凉すずしき時分󠄃ころ步あゆみたまふヱホバ神かみの聲こゑを聞ききしかばアダムと其その妻つま即すなはちヱホバ神かみの面かほを避󠄃さけて園そのの樹きの間あひだに身みを匿かくせり

9 ヱホバ神かみアダムを召よびて之これに言いひたまひけるは汝なんぢは何處いづこにをるや 10 彼かれいひけるは我われ園そのの中うちに汝なんぢの聲こゑを聞きき裸體はだかなるにより懼おそれて身みを匿かくせりと 11 ヱホバ言いひたまひけるは誰たが汝なんぢの裸はだかなるを汝なんぢに吿つげしや汝なんぢは我わが汝なんぢに食󠄃くらふなかれと命めいじたる樹きの果みを食󠄃くらひたりしや 12 アダム言いひけるは汝なんぢが與あたへて我われと偕ともならしめたまひし婦󠄃をんな彼かれ其その樹きの果實みを我われにあたへたれば我われ食󠄃くらへりと 13 ヱホバ神かみ婦󠄃をんなに言いひたまひけるは汝なんぢがなしたる此事このわざは何なにぞや婦󠄃をんな言いひけるは蛇へび我われを誘惑まどはして我われ食󠄃くらへりと 14 ヱホバ神かみ蛇へびに言いひたまひけるは汝なんぢ是これを爲なしたるに因よりて汝なんぢは諸すべての家畜かちくと野のの諸すべての獸けものよりも勝󠄃まさりて詛のろはる汝なんぢは腹行はらばひて一生いつしやうの間あひだ塵ちりを食󠄃くらふべし 15 又󠄂また我われ汝なんぢと婦󠄃をんなの間あひだおよび汝なんぢの苗裔すゑと婦󠄃をんなの苗裔すゑの間あひだに怨恨うらみを置おかん彼かれは汝なんぢの頭かしらを碎くだき汝なんぢは彼かれの踵くびすを碎くだかん〘3㌻〙 16 又󠄂また婦󠄃をんなに言いひたまひけるは我われ大おほいに汝なんぢの懷姙はらみの劬勞くるしみを增ますべし汝なんぢは苦くるしみて子こを產うまん又󠄂また汝なんぢは夫をつとをしたひ彼かれは汝なんぢを治をさめん 17 又󠄂またアダムに言いひたまひけるは汝なんぢその妻つまの言ことばを聽きゝて我わが汝なんぢに命めいじて食󠄃くらふべからずと言いひたる樹きの果みを食󠄃くらひしに緣よりて土つちは汝なんぢのために詛のろはる汝なんぢは一生いつしやうのあひだ勞苦くるしみて其それより食󠄃しよくを得えん
 4㌻ 
18 土つちは荊棘いばらと薊あざみとを汝なんぢのために生しやうずべしまた汝なんぢは野のの草蔬くさを食󠄃くらふべし 19 汝なんぢは面かほに汗あせして食󠄃物しよくもつを食󠄃くらひ終󠄃つひに土つちに歸かへらん其そは其その中なかより汝なんぢは取とられたればなり汝なんぢは塵ちりなれば塵ちりに皈かへるべきなりと 20 アダム其その妻つまの名なをヱバと名なづけたり其そは彼かれは群すべての生物いけるものの母はゝなればなり 21 ヱホバ神かみアダムと其その妻つまのために皮衣かはごろもを作つくりて彼等かれらに衣きせたまへり

22 ヱホバ神かみ曰いひたまひけるは視みよ夫人かのひと我等われらの一ひとりの如ごとくなりて善惡ぜんあくを知しる然されば恐おそらくは彼かれ其その手てを舒のべ生命いのちの樹きの果實みをも取とりて食󠄃くらひ限無かぎりなく生いきんと 23 ヱホバ神かみ彼かれをエデンの園そのよりいだし其その取とりて造󠄃つくられたるところの土つちを耕󠄃たがへさしめたまへり 24 斯かく神かみ其その人ひとを逐󠄃出おひいだしエデンの園そのの東ひがしにケルビムと自おのづから旋轉まはる焰ほのほの劍つるぎを置おきて生命いのちの樹きの途󠄃みちを保守まもりたまふ

第4章

1 アダム其その妻つまエバを知しる彼かれ孕はらみてカインを生うみて言いひけるは我われヱホバによりて一個ひとりの人ひとを得えたりと 2 彼かれまた其その弟おとうとアベルを生うめりアベルは羊ひつじを牧かふ者ものカインは土つちを耕󠄃たがへす者ものなりき 3 日ひを經へて後のちカイン土つちより出いづる果みを携來もちきたりてヱホバに供物そなへものとなせり 4 アベルもまた其その羊ひつじの初生うひごと其その肥こえたるものを携たづさへ來きたれりヱホバ、アベルと其その供物そなへものを眷顧󠄃かへりみたまひしかども 5 カインと其その供物そなへものをば眷かへりみ給たまはざりしかばカイン甚はなはだ怒いかり且かつ其その面おもてをふせたり 6 ヱホバ、カインに言いひたまひけるは汝なんぢ何なんぞ怒いかるや何なんぞ面おもてをふするや 7 汝なんぢ若もし善よきを行おこなはゞ擧あぐることをえざらんや若もし善よきを行おこなはずば罪つみ門戶かどぐちに伏ふす彼かれは汝なんぢを慕したひ汝なんぢは彼かれを治をさめん 8 カイン其その弟おとうとアベルに語ものがたりぬ彼等かれら野のにをりける時ときカイン其その弟おとうとアベルに起󠄃たちかゝりて之これを殺ころせり

9 ヱホバ、カインに言いひたまひけるは汝なんぢの弟おとうとアベルは何處いづこにをるや彼かれ言いふ我われしらず我われあに我わが弟おとうとの守者まもりてならんやと
 5㌻ 
10 ヱホバ言いひたまひけるは汝なんぢ何なにをなしたるや汝なんぢの弟おとうとの血ちの聲こゑ地ちより我われに叫さけべり 11 されば汝なんぢは詛のろはれて此地このちを離はなるべし此地このち其その口くちを啓󠄃ひらきて汝なんぢの弟おとうとの血ちを汝なんぢの手てより受うけたればなり 12 汝なんぢ地ちを耕󠄃たがへすとも地ちは再ふたゝび其その力ちからを汝なんぢに效いたさじ汝なんぢは地ちに吟行さまよふ流離子さすらひびととなるべしと〘4㌻〙 13 カイン、ヱホバに言いひけるは我わが罪つみは大おほいにして負󠄅おふこと能あたはず 14 視みよ汝なんぢ今日けふ斯地このちの面おもてより我われを逐󠄃出おひいだしたまふ我われ汝なんぢの面かほを覿みることなきにいたらん我われ地ちに吟行さまよふ流離子さすらひびととならん凡およそ我われに遇󠄃あふ者もの我われを殺ころさん 15 ヱホバ彼かれに言いひたまひけるは然しからず凡およそカインを殺ころす者ものは七倍しちばいの罰ばつを受うけんとヱホバ、カインに遇󠄃あふ者ものの彼かれを擊うたざるため印誌しるしを彼かれに與あたへたまへり

16 カイン、ヱホバの前󠄃まへを離はなれて出いでエデンの東ひがしなるノドの地ちに住󠄃すめり 17 カイン其その妻つまを知しる彼かれ孕はらみエノクを生うめりカイン邑まちを建󠄄たて其その邑まちの名なを其その子この名なに循したがひてエノクと名なづけたり 18 エノクにイラデ生うまれたりイラデ、メホヤエルを生うみメホヤエル、メトサエルを生うみメトサエル、レメクを生うめり 19 レメク二人ふたりの妻つまを娶めとれり一ひとりの名なはアダと曰いひ一ひとりの名なはチラと曰いへり 20 アダ、ヤバルを生うめり彼かれは天てん幕まくに住󠄃すみて家畜かちくを牧かふ所󠄃ところの者ものの先祖せんぞなり 21 其その弟おとうとの名なはユバルと云いふ彼かれは琴ことと笛ふえとをとる凡すべての者ものの先祖せんぞなり 22 又󠄂またチラ、トバルカインを生うめり彼かれは銅あかがねと鐡てつの諸もろ〳〵の刃󠄃は物ものを鍛きたふ者ものなりトバルカインの妹いもうとをナアマといふ 23 レメク其その妻つま等たちに言いひけるはアダとチラよ我わが聲こゑを聽きけレメクの妻つま等らよわが言ことばを容いれよ我われわが創傷いたでのために人ひとを殺ころすわが痍きづのために少年わかうどを殺ころす 24 カインのために七倍しちばいの罰ばつあればレメクのためには七十七倍ばいの罰ばつあらん

25 アダム復また其その妻つまを知しりて彼かれ男子をとこのこを生うみ其その名なをセツと名なづけたり其そは彼かれ神かみ我われにカインの殺ころしたるアベルのかはりに他ほかの子たねを與あたへたまへりといひたればなり 26 セツにもまた男子をとこのこ生うまれたりかれ其その名なをエノスと名なづけたり此時このとき人々ひと〴〵ヱホバの名なを呼よぶことをはじめたり
 6㌻ 

第5章

1 アダムの傳でんの書ふみは是これなり神かみ人ひとを創造󠄃つくりたまひし日ひに神かみに象かたどりて之これを造󠄃つくりたまひ 2 彼等かれらを男女なんによに造󠄃つくりたまへり彼等かれらの創造󠄃つくられし日ひに神かみ彼等かれらを祝しゆくしてかれらの名なをアダムと名なづけたまへり 3 アダム百三十歳さいに及およびて其その像󠄃かたちに循したがひ己おのれに象かたどりて子こを生うみ其その名なをセツと名なづけたり 4 アダムのセツを生うみし後のちの齡よはひは八百歳さいにして男子なんし女子によしを生うめり 5 アダムの生存いきながらへたる齡よはひは都合すべて九百三十歳さいなりき而しかして死しねり

6 セツ百五歳さいに及およびてエノスを生うめり 7 セツ、エノスを生うみし後のち八百七年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 8 セツの齡よはひは都合すべて九百十二歳さいなりき而しかして死しねり

9 エノス九十歳さいにおよびてカイナンを生うめり 10 エノス、カイナンを生うみし後のち八百十五年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 11 エノスの齡よはひは都合すべて九百五歳さいなりき而しかして死しねり〘5㌻〙

12 カイナン七十歳さいにおよびてマハラレルを生うめり 13 カイナン、マハラレルを生うみし後のち八百四十年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 14 カイナンの齡よはひは都合すべて九百十歳さいなりきしかして死しねり

15 マハラレル六十五歳さいに及およびてヤレドを生うめり 16 マハラレル、ヤレドを生うみし後のち八百三十年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 17 マハラレルの齡よはひは都合すべて八百九十五歳さいなりき而しかして死しねり

18 ヤレド百六十二歳さいに及およびてエノクを生うめり 19 ヤレド、エノクを生うみし後のち八百年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 20 ヤレドの齡よはひは都合すべて九百六十二歳さいなりき而しかして死しねり

21 エノク六十五歳さいに及およびてメトセラを生うめり 22 エノク、メトセラを生うみし後のち三百年ねん神かみとともに步あゆみ男子なんし女子によしを生うめり
 7㌻ 
23 エノクの齡よはひは都合すべて三百六十五歳さいなりき 24 エノク神かみと偕ともに步あゆみしが神かみかれを取とりたまひければをらずなりき

25 メトセラ百八十七歳さいに及およびてレメクを生うめり 26 メトセラ、レメクを生うみしのち七百八十二年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 27 メトセラの齡よはひは都合すべて九百六十九歳さいなりき而しかして死しねり

28 レメク百八十二歳さいに及およびて男子をとこのこを生うみ 29 其その名なをノアと名なづけて言いひけるは此この子こはヱホバの詛のろひたまひし地ちに由よれる我わが操作はたらきと我わが勞苦ほねをりとに就つきて我われらを慰なぐさめん 30 レメク、ノアを生うみし後のち五百九十五年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり 31 レメクの齡よはひは都合すべて七百七十七歳さいなりき而しかして死しねり

32 ノア五百歳さいなりきノア、セム、ハム、ヤペテを生うめり

第6章

1 人ひと地ちの面おもてに繁衍ふえはじまりて女子をんなのこ之これに生うまるゝに及およべる時とき 2 神かみの子こ等たち人ひとの女子むすめの美うつくしきを見みて其その好このむ所󠄃ところの者ものを取とりて妻つまとなせり 3 ヱホバいひたまひけるは我わが靈みたま永ながく人ひとと爭あらそはじ其そは彼かれも肉󠄁にくなればなり然されど彼かれの日ひは百二十年ねんなるべし 4 當時このころ地ちにネピリムありき亦また其その後のち神かみの子こ輩たち人ひとの女むすめの所󠄃ところに入いりて子女こどもを生うましめたりしが其それ等らも勇󠄃士ゆうしにして古昔いにしへの名聲なある人ひとなりき

5 ヱホバ人ひとの惡あくの地ちに大おほいなると其心そのこころの思念おもひの都すべて圖󠄃維はかる所󠄃ところの恒つねに惟ただ惡あしきのみなるを見みたまへり 6 是こゝに於おいてヱホバ地ちの上うへに人ひとを造󠄃つくりしことを悔くいて心こころに憂うれへたまへり 7 ヱホバ言いひたまひけるは我わが創造󠄃つくりし人ひとを我われ地ちの面おもてより拭去ぬぐひさらん人ひとより獸けもの昆蟲はふもの天空󠄃そらの鳥とりにいたるまでほろぼさん其そは我われ之これを造󠄃つくりしことを悔くゆればなりと〘6㌻〙 8 されどノアはヱホバの目めのまへに恩めぐみを得えたり
 8㌻ 

9 ノアの傳でんは是これなりノアは義人たゞしきひとにして其その世よの完全󠄃まつたき者ものなりきノア神かみと偕ともに步あゆめり 10 ノアはセム、ハム、ヤペテの三さん人にんの子こを生うめり 11 時ときに世よ神かみのまへに亂みだれて暴虐󠄃ばうぎやく世よに滿盈みちたりき 12 神かみ世よを視みたまひけるに視みよ亂みだれたり其そは世よの人ひと皆みな其その道󠄃みちをみだしたればなり

13 神かみノアに言いひたまひけるは諸すべての人ひとの末期をはりわが前󠄃まへに近󠄃ちかづけり其そは彼等かれらのために暴虐󠄃ばうぎやく世よにみつればなり視みよ我われ彼等かれらを世よとともに剪滅ほろぼさん 14 汝なんぢ松󠄃木まつのきをもて汝なんぢのために方舟はこぶねを造󠄃つくり方舟はこぶねの中うちに房󠄃まを作つくり瀝靑やにをもて其その內外うちそとを塗ぬるべし 15 汝なんぢかく之これを作つくるべし即すなはち其その方舟はこぶねの長ながさは三百キユビト其その濶ひろさは五十キユビト其その高たかさは三十キユビト 16 又󠄂また方舟はこぶねに導󠄃光牖あかりまどを作つくり上うへ一いちキユビトに之これを作つくり終󠄃あぐべし又󠄂また方舟はこぶねの戶とは其その傍かたはらに設まうくべし下牀したと二に階かいと三さん階がいとに之これを作つくるべし 17 視みよ我われ洪水こうずゐを地ちに起󠄃おこして凡すべて生命いのちの氣息いきある肉󠄁にくなる者ものを天下てんかより剪滅ほろぼし絕たたん地ちにをる者ものは皆みな死しぬべし 18 然されど汝なんぢとは我われわが契󠄅約けいやくをたてん汝なんぢは汝なんぢの子等こらと汝なんぢの妻つまおよび汝なんぢの子等こらの妻つまとともに其その方舟はこぶねに入いるべし 19 又󠄂また諸もろ〳〵の生物いきもの總󠄂すべて肉󠄁にくなる者ものをば汝なんぢ各おのおの其その二ふたつを方舟はこぶねに挈󠄄たづさへいりて汝なんぢとともに其その生命いのちを保たもたしむべし其それ等らは牝牡めをなるべし 20 鳥とり其類そのるゐに從したがひ獸けもの其類そのるゐに從したがひ地ちの諸すべての昆蟲はふもの其類そのるゐに從したがひて各おのおの二ふたつ汝なんぢの所󠄃ところに至いたりて其その生命いのちを保たもつべし 21 汝なんぢ食󠄃くらはるゝ諸すべての食󠄃品くひものを汝なんぢの許もとに取とりて之これを汝なんぢの所󠄃ところに集あつむべし是これ即すなはち汝なんぢと是等これらの物ものの食󠄃品くひものとなるべし 22 ノア是かく爲なし都すべて神かみの己おのれに命めいじたまひしごとく然しか爲なせり

第7章

1 ヱホバ、ノアに言いひたまひけるは汝なんぢと汝なんぢの家いへ皆みな方舟はこぶねに入いるべし我われ汝なんぢがこの世よの人ひとの中うちにてわが前󠄃まへに義ただしきを視みたればなり 2 諸すべての潔󠄄きよき獸けものを牝牡めを七宛ななつづつ汝なんぢの許もとに取とり潔󠄄きよからぬ獸けものを牝牡めを二ふたつ 3 亦また天空󠄃そらの鳥とりを雌雄めを七宛ななつづつ取とりて種たねを全󠄃地ぜんちの面おもてに生いきのこらしむべし 4 今いま七日なぬかありて我われ四十日にち四十夜や地ちに雨あめふらしめ我われ造󠄃つくりたる萬有󠄃あらゆるものを地ちの面おもてより拭去ぬぐひさらん
 9㌻ 
5 ノア、ヱホバの凡すべて己おのれに命めいじたまひし如ごとくなせり

6 地ちに洪水こうずゐありける時ときにノア六百歳さいなりき 7 ノア其その子等こらと其その妻つまおよび其その子等こらの妻つまと俱ともに洪水こうずゐを避󠄃さけて方舟はこぶねにいりぬ 8 潔󠄄きよき獸けものと潔󠄄きよからざる獸けものと鳥とりおよび地ちに匍はふ諸すべての物もの 9 牝牡めを二宛ふたつづつノアに來きたりて方舟はこぶねにいりぬ神かみのノアに命めいじたまへるが如ごとし 10 かくて七日なぬかの後のち洪水こうずゐ地ちに臨のぞめり〘7㌻〙 11 ノアの齡よはひの六百歳さいの二月󠄃ぐわつ即すなはち其その月󠄃つきの十七日にちに當あたり此この日ひに大淵おほわだの源みなもと皆みな潰やぶれ天あまの戶と開ひらけて 12 雨あめ四十日にち四十夜や地ちに注そそげり

13 此この日ひにノアとノアの子こセム、ハム、ヤペテおよびノアの妻つまと其その子等こらの三人にんの妻つま諸俱もろともに方舟はこぶねにいりぬ 14 彼等かれらおよび諸すべての獸けもの其その類るゐに從したがひ諸すべての家畜かちく其類そのるゐに從したがひ都すべて地ちに匍はふ昆蟲もの其類そのるゐに從したがひ諸すべての禽とり即すなはち各樣もろ〳〵の類たぐひの鳥とり皆みな其類そのるゐに從したがひて入いりぬ 15 即すなはち生命いのちの氣息いきある諸もろ〳〵の肉󠄁にくなる者もの二宛ふたつづつノアに來きたりて方舟はこぶねにいりぬ 16 入いりたる者ものは諸もろ〳〵の肉󠄁にくなる者ものの牝牡めをにして皆みないりぬ神かみの彼かれに命めいじたまへるが如ごとしヱホバ乃すなはち彼かれを閉置とぢこめたまへり 17 洪水こうずゐ四十日にち地ちにありき是こゝにおいて水みづ增まし方舟はこぶねを浮󠄃うかめて方舟はこぶね地ちの上うへに高たかくあがれり 18 而しかして水みづ瀰漫はびこりて大おほいに地ちに增ましぬ方舟はこぶねは水みづの面おもてに漂ただよへり 19 水みづ甚はなはだ大おほいに地ちに瀰漫はびこりければ天てん下かの高山たかやま皆みなおほはれたり 20 水みづはびこりて十五キユビトに上のぼりければ山々やまやまおほはれたり 21 凡おほよそ地ちに動うごく肉󠄁にくなる者もの鳥とり家畜かちく獸けもの地ちに匍はふ諸すべての昆蟲ものおよび人ひと皆みな死しねり 22 即すなはち凡おほよそ其その鼻はなに生命いのちの氣息いきのかよふ者もの都すべて乾土くがにある者ものは死しねり 23 斯かく地つちの表面おもてにある萬有󠄃あらゆるものを人ひとより家畜けもの昆蟲はふもの天空󠄃そらの鳥とりにいたるまで盡こと〴〵く拭去ぬぐひさりたまへり是等これらは地ちより拭去ぬぐひさられたり唯たゞノアおよび彼かれとともに方舟はこぶねにありし者もののみ存のこれり 24 水みづ百五十日にちのあひだ地ちにはびこりぬ

第8章

1 神かみノアおよび彼かれとともに方舟はこぶねにある諸すべての生物いきものと諸すべての家畜かちくを眷念おもひたまひて神かみ乃すなはち風かぜを地ちの上うへに吹ふかしめたまひければ水みづ減へりたり
 10㌻ 
2 亦また淵わだの源みなもとと天あまの戶と閉塞とぢふさがりて天てんよりの雨あめ止やみぬ 3 是こゝに於おいて水みづ次󠄄第しだいに地ちより退󠄃しりぞき百五十日にちを經へてのち水みづ減へり 4 方舟はこぶねは七月󠄃ぐわつに至いたり其その月󠄃つきの十七日にちにアララテの山やまに止とどまりぬ 5 水みづ次󠄄第しだいに減へりて十月󠄃ぐわつに至いたりしが十月󠄃ぐわつの月󠄃朔ついたちに山々やまやまの嶺いただき現あらはれたり

6 四十日にちを經へてのちノア其その方舟はこぶねに作つくりし窓まどを啓󠄃ひらきて 7 鴉󠄄からすを放出はなちけるが水みづの地ちに涸かるるまで往󠄃來ゆききしをれり 8 彼かれ地ちの面おもてより水みづの減少ひきしかを見みんとて亦また鴿はとを放出はなちいだしけるが 9 鴿はと其その足あしの跖うらを止とどむべき處ところを得えずして彼かれに還󠄃かへりて方舟はこぶねに至いたれり其そは水みづ全󠄃地ぜんちの面おもてにありたればなり彼かれ乃すなはち其その手てを舒のべて之これを執とらへ方舟はこぶねの中うちにおのれの所󠄃ところに接入ひきいれたり 10 尙なほ又󠄂また七日なぬか待まちて再ふたたび鴿はとを方舟はこぶねより放出はなちけるが 11 鴿はと暮くれにおよびて彼かれに還󠄃かへれり視みよ其その口くちに橄欖かんらんの新葉わかばありき是こゝに於おいてノア地ちより水みづの減少ひきしをしれり 12 尙なほ又󠄂また七日なぬかまちて鴿はとを放出はなちけるが再ふたたび彼かれの所󠄃ところに歸かへらざりき〘8㌻〙

13 六百一年ねんの一月󠄃げつの月󠄃朔ついたちに水みづ地ちに涸かれたりノア乃すなはち方舟はこぶねの葢おひを撤のぞきて視みしに視みよ土つちの面おもては燥かはきてありぬ 14 二月󠄃ぐわつの二十七日にちに至いたりて地ち乾かわきたり 15 爰こゝに神かみノアに語かたりて言いひ給たまはく 16 汝なんぢおよび汝なんぢの妻つまと汝なんぢの子等こらと汝なんぢの子等こらの妻つまともに方舟はこぶねを出いづべし 17 汝なんぢとともにある諸もろ〳〵の肉󠄁にくなる諸すべての生物いきもの諸もろ〳〵の肉󠄁にくなる者もの即すなはち鳥とり家畜かちくおよび地ちに匍はふ諸すべての昆蟲はふものを率󠄃ひきゐいでよ此これ等らは地ちに饒おほく生育そだち地ちの上うへに生うみ且かつ殖增ふえますべし 18 ノアと其その子等こらと其その妻つまおよび其その子等こらの妻つまともに出いでたり 19 諸すべての獸けもの諸すべての昆蟲はふものおよび諸すべての鳥とり等など凡およそ地ちに動うごく者もの種類しゆるゐに從したがひて方舟はこぶねより出いでたり

20 ノア、ヱホバのために壇だんを築きづき諸もろ〳〵の潔󠄄きよき獸けものと諸もろ〳〵の潔󠄄きよき鳥とりを取とりて燔祭はんさいを壇だんの上うへに獻さゝげたり 21 ヱホバ其その馨かうばしき香にほひを聞かぎたまひてヱホバ其その意こゝろに謂いひたまひけるは我われ再ふたたび人ひとの故ゆゑに因よりて地ちを詛のろふことをせじ其そは人ひとの心こころの圖󠄃維はかるところ其その幼少時おさなきときよりして惡あしかればなり又󠄂また我われ曾かつて爲なしたる如ごとく再ふたゝび諸もろ〳〵の生いける物ものを擊うち滅ほろぼさじ 22 地ちのあらん限かぎりは播種時たねまきどき、收穫時かりいれどき、寒󠄃熱さむさあつさ夏冬󠄃なつふゆおよび日ひると夜よる息やむことあらじ
 11㌻ 

第9章

1 神かみノアと其その子等こらを祝しゆくして之これに曰いひたまひけるは生うめよ增殖ふえよ地ちに滿みてよ 2 地ちの諸すべての獸畜けもの天空󠄃そらの諸すべての鳥とり地ちに匍はふ諸すべての物もの海うみの諸すべての魚うを汝等なんぢらを畏おそれ汝等なんぢらに懾をののかん是等これらは汝等なんぢらの手てに與あたへらる 3 凡おほよそ生いける動物どうぶつは汝等なんぢらの食󠄃しよくとなるべし菜󠄄蔬あをもののごとく我われ之これを皆みな汝等なんぢらに與あたふ 4 然されど肉󠄁にくを其その生命いのちなる其その血ちのまゝに食󠄃くらふべからず 5 汝等なんぢらの生命いのちの血ちを流ながすをば我われ必かならず討たださん獸けもの之これをなすも人ひとをこれを爲なすも我われ討たださん凡おほよそ人ひとの兄弟きやうだい人ひとの生命いのちを取とらば我われ討ただすべし 6 凡おほよそ人ひとの血ちを流ながす者ものは人ひと其その血ちを流ながさん其そは神かみの像󠄃かたちのごとくに人ひとを造󠄃つくりたまひたればなり 7 汝等なんぢら生うめよ增殖ふえよ地ちに饒おほくなりて其その中うちに增殖ふえよ

8 神かみノアおよび彼かれと偕ともにある其その子等こらに吿つげて言いひたまひけるは 9 見みよ我われ汝等なんぢらと汝等なんぢらの後のちの子孫しそん 10 および汝等なんぢらと偕ともなる諸もろ〳〵の生物いきもの即すなはち汝等なんぢらとともなる鳥とり家畜かちくおよび地ちの諸もろ〳〵の獸けものと契󠄅約けいやくを立たてん都すべて方舟はこぶねより出いでたる者ものより地ちの諸もろ〳〵の獸けものにまで至いたらん 11 我われ汝等なんぢらと契󠄅約けいやくを立たてん總󠄂すべて肉󠄁にくなる者ものは再ふたたび洪水こうずゐに絕たたるゝ事ことあらじ又󠄂また地ちを滅ほろぼす洪水こうずゐ再ふたたびあらざるべし 12 神かみ言いひたまひけるは我わが我われと汝等なんぢらおよび汝等なんぢらと偕ともなる諸すべての生物いきものの間あひだに世々よよ限かぎりなく爲なす所󠄃ところの契󠄅約けいやくの徴しるしは是これなり 13 我われわが虹にじを雲くもの中うちに起󠄃おこさん是これ我われと世よとの間あひだの契󠄅約けいやくの徴しるしなるべし 14 即すなはち我われ雲くもを地ちの上うへに起󠄃おこす時とき虹にじ雲くもの中うちに現あらはるべし〘9㌻〙 15 我われ乃すなはち我われと汝等なんぢらおよび總󠄂すべて肉󠄁にくなる諸もろ〳〵の生物いきものの間あひだのわが契󠄅約けいやくを記念おもはん水みづ再ふたたび諸もろ〳〵の肉󠄁にくなる者ものを滅ほろぼす洪水こうずゐとならじ 16 虹にじ雲くもの中うちにあらん我われ之これを觀みて神かみと地ちにある都すべて肉󠄁にくなる諸もろ〳〵の生物いきものとの間あひだなる永遠󠄄とこしへの契󠄅約けいやくを記念おぼえん 17 神かみノアに言いひたまひけるは是これは我わが我われと地ちにある諸もろ〳〵の肉󠄁にくなる者ものとの間あひだに立たてたる契󠄅約けいやくの徴しるしなり
 12㌻ 

18 ノアの子等こらの方舟はこぶねより出いでたる者ものはセム、ハム、ヤペテなりきハムはカナンの父󠄃ちゝなり 19 是等これらはノアの三さん人にんの子こなり全󠄃地ぜんちの民たみは是等これらより出いでて蔓延󠄅ひろがれり

20 爰ここにノアの農夫のうふとなりて葡萄園ぶだうばたけを植つくることを始はじめしが 21 葡萄ぶだう酒しゆを飮のみて醉よひ天てん幕まくの中うちにありて裸はだかになれり 22 カナンの父󠄃ちゝハム其その父󠄃ちゝのかくし所󠄃どころを見みて外そとにありし二人ふたりの兄弟きやうだいに吿つげたり 23 セムとヤペテ乃すなはち衣ころもを取とりて俱ともに其その肩󠄃かたに負󠄅かけ後向うしろむきに步あゆみゆきて其その父󠄃ちゝの裸體はだかを覆󠄄おほへり彼等かれら面かほを背うしろにして其その父󠄃ちゝの裸體はだかを見みざりき 24 ノア酒さけさめて其その若わかき子この己おのれに爲なしたる事ことを知しれり 25 是こゝに於おいて彼かれ言いひけるはカナン詛のろはれよ彼かれは僕輩しもべらの僕しもべとなりて其その兄弟きやうだいに事つかへん 26 又󠄂またいひけるはセムの神かみヱホバは讚ほむべきかなカナン彼かれの僕しもべとなるべし 27 神かみヤペテを大おほいならしめたまはん彼かれはセムの天てん幕まくに居住󠄃すまはんカナン其その僕しもべとなるべし

28 ノア洪水こうずゐの後のち三百五十年ねん生存いきながらへたりノアの齡よはひは都すべて九百五十年ねんなりき而しかして死しねり

第10章

1 ノアの子こセム、ハム、ヤペテの傳でんは是これなり洪水こうずゐの後のち彼等かれらに子等こども生うまれたり

2 ヤペテの子こはゴメル、マゴグ、マデア、ヤワン、トバル、メセク、テラスなり 3 ゴメルの子こはアシケナズ、リパテ、トガルマなり 4 ヤワンの子こはエリシヤ、タルシシ、キツテムおよびドダニムなり 5 是等これらより諸國くに〴〵の洲島しまの民たみは派󠄄分󠄃わかれ出いでて各おのおの其その方言ことばと其その宗族やからと其その邦󠄆國くにとに循したがひて其その地ちに住󠄃すめり

6 ハムの子こはクシ、ミツライム、フテおよびカナンなり 7 クシの子こはセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカなりラアマの子こはシバおよびデダンなり 8 クシ、ニムロデを生うめり彼かれ始はじめて世よの權力ちからある者ものとなれり 9 彼かれはヱホバの前󠄃まへにありて權力ちからある獵夫かりうどなりき是故このゆえにヱホバの前󠄃まへにある夫かの權力ちからある獵夫かりうどニムロデの如ごとしといふ諺ことわざあり
 13㌻ 
10 彼かれの國くにの起󠄃初はじまりはシナルの地ちのバベル、エレク、アツカデ、及およびカルネなりき 11 其その地ちより彼かれアッスリヤに出いでニネベ、レホポテイリ、カラ 12 およびニネベとカラの間あひだなるレセンを建󠄄たてたり是これは大おほいなる城󠄃邑まちなり 13 ミツライム、ルデ族びとアナミ族びとレハビ族びとナフト族びと〘10㌻〙 14 バテロス族びとカスル族びとおよびカフトリ族びとを生うめりカスル族びとよりペリシテ族びと出いでたり

15 カナン其その冡子うひごシドンおよびヘテ 16 エブス族びとアモリ族びとギルガシ族びと 17 ヒビ族びとアルキ族びとセニ族びと 18 アルワデ族びとゼマリ族びとハマテ族びとを生うめり後のちに至いたりてカナン人びとの宗族やから蔓延󠄅ひろがりぬ 19 カナン人びとの境さかひはシドンよりゲラルを經へてガザに至いたりソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムに沿󠄄そひてレシヤにまで及およべり 20 是等これらはハムの子孫しそんにして其その宗族やからと其その方言ことばと其その土地とちと其その邦󠄆國くにに隨したがひて居をりぬ

21 セムはヱベルの全󠄃すべての子孫しそんの先祖せんぞにしてヤペテの兄あになり彼かれにも子女こども生うまれたり 22 セムの子こはエラム、アシユル、アルパクサデ、ルデ、アラムなり 23 アラムの子こはウヅ、ホル、ゲテル、マシなり 24 アルパクサデ、シラを生うみシラ、エベルを生うめり 25 エベルに二人ふたりの子こ生うまれたり一人ひとりの名なをペレグ(分󠄃わかれ)といふ其そは彼かれの代よに邦󠄆國くに分󠄃わかれたればなり其その弟おとうとの名なをヨクタンと曰いふ 26 ヨクタン、アルモダデ、シヤレフ、ハザルマウテ、ヱラ 27 ハドラム、ウザル、デクラ 28 オバル、アビマエル、シバ 29 オフル、ハビラおよびヨバブを生うめり是等これらは皆みなヨクタンの子こなり 30 彼等かれらの居住󠄃所󠄃すめるところはメシヤよりして東方ひがしの山やまセバルにまで至いたれり 31 是等これらはセムの子孫しそんにして其その宗族やからと其その方言ことばと其その土地とちと其その邦󠄆國くにとに隨したがひて居をりぬ

32 是等これらはノアの子この宗族やからにして其その血統ちすぢと其その邦󠄆國くにに隨したがひて居をりぬ洪水こうずゐの後のち是等これらより地ちの邦󠄆國くに〴〵の民たみは派󠄄分󠄃わかれ出いでたり
 14㌻ 

第11章

1 全󠄃地ぜんちは一ひとつの言語ことば一ひとつの音󠄃おんのみなりき 2 茲こゝに人衆ひと〴〵東ひがしに移うつりてシナルの地ちに平󠄃野ひらのを得えて其處そこに居住󠄃すめり 3 彼等かれら互たがひに言いひけるは去來いざ甎石かはらを作つくり之これを善よく爇やかんと遂󠄅つひに石いしの代かはりに甎石かはらを獲え灰󠄃沙しつくひの代かはりに石漆ちやんを獲えたり 4 又󠄂また曰いひけるは去來いざ邑まちと塔たふとを建󠄄たて其その塔たふの頂いただきを天てんにいたらしめん斯かくして我等われら名なを揚あげて全󠄃地ぜんちの表面おもてに散ちることを免まぬかれんと 5 ヱホバ降󠄄臨くだりて彼かの人衆ひと〴〵の建󠄄たつる邑まちと塔たふとを觀みたまへり 6 ヱホバ言いひたまひけるは視みよ民たみは一ひとつにして皆みな一ひとつの言語ことばを用もちふ今いま旣󠄁すでに此これを爲なし始はじめたり然されば凡すべて其その爲なさんと圖󠄃維はかる事ことは禁止とどめ得うられざるべし 7 去來いざ我等われら降󠄄くだり彼處かしこにて彼等かれらの言語ことばを淆みだし互たがひに言語ことばを通󠄃つうずることを得えざらしめんと 8 ヱホバ遂󠄅つひに彼等かれらを彼處かしこより全󠄃地ぜんちの表面おもてに散ちらしたまひければ彼等かれら邑まちを建󠄄たつることを罷やめたり 9 是故このゆえに其その名なはバベル(淆亂みだれ)と呼よばる是こはヱホバ彼處かしこに全󠄃地ぜんちの言語ことばを淆みだしたまひしに由よりてなり彼處かしこよりヱホバ彼等かれらを全󠄃地ぜんちの表おもてに散ちらしたまへり〘11㌻〙

10 セムの傳でんは是これなりセム百歳さいにして洪水こうずゐの後のちの二年ねんにアルパクサデを生うめり 11 セム、アルパクサデを生うみし後のち五百年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

12 アルパクサデ三十五歳さいに及およびてシラを生うめり 13 アルパクサデ、シラを生うみし後のち四百三年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

14 シラ三十歳さいにおよびてエベルを生うめり 15 シラ、エベルを生うみし後のち四百三年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

16 エベル三十四歳さいにおよびてペレグを生うめり 17 エベル、ペレグを生うみし後のち四百三十年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

18 ペレグ三十歳さいにおよびてリウを生うめり 19 ペレグ、リウを生うみし後のち二百九年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

20 リウ三十二歳さいにおよびてセルグを生うめり 21 リウ、セルグを生うみし後のち二百七年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり
 15㌻ 

22 セルグ三十年ねんにおよびてナホルを生うめり 23 セルグ、ナホルを生うみしのち二百年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

24 ナホル二十九歳さいに及およびてテラを生うめり 25 ナホル、テラを生うみし後のち百十九年ねん生存いきながらへて男子なんし女子によしを生うめり

26 テラ七十歳さいに及およびてアブラム、ナホルおよびハランを生うめり

27 テラの傳でんは是これなりテラ、アブラム、ナホルおよびハランを生うみハラン、ロトを生うめり 28 ハランは其その父󠄃ちゝテラに先さきだちて其その生處うまれどころなるカルデアのウルにて死しにたり 29 アブラムとナホルと妻つまを娶めとれりアブラムの妻つまの名なをサライと云いひナホルの妻つまの名なをミルカと云いひてハランの女むすめなりハランはミルカの父󠄃ちゝにして亦またイスカの父󠄃ちゝなりき 30 サライは石女うまずめにして子こなかりき 31 テラ、カナンの地ちに往󠄃ゆかんとて其その子こアブラムとハランの子こなる其その孫まごロト及および其その子こアブラムの妻つまなる其その媳よめサライをひき挈󠄄つれて俱ともにカルデアのウルを出いでたりしがハランに至いとて其處そこに住󠄃すめり 32 テラの齡よはひは二百五歳さいなりきテラはハランにて死しねり

第12章

1 爰こゝにヱホバ、アブラムに言いひたまひけるは汝なんぢの國くにを出いで汝なんぢの親しん族ぞくに別わかれ汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへを離はなれて我わが汝なんぢに示しめさん其その地ちに至いたれ〘12㌻〙 2 我われ汝なんぢを大おほいなる國民たみと成󠄃なし汝なんぢを祝めぐみ汝なんぢの名なを大おほいならしめん汝なんぢは祉福さいはいの基もととなるべし 3 我われは汝なんぢを祝しゆくする者ものを祝しゆくし汝なんぢを詛のろふ者ものを詛のろはん天てん下かの諸もろ〳〵の宗族やから汝なんぢによりて福禔さいはひを獲えんと 4 アブラム乃すなはちヱホバの自己おのれに言いひたまひし言ことに從したがひて出いでたりロト彼かれと共ともに行ゆけりアブラムはハランを出いでたる時とき七十五歳さいなりき 5 アブラム其その妻つまサライと其その弟おとうとの子こロトおよび其その集あつめたる總󠄂すべての所󠄃有󠄃もちものとハランにて獲えたる人衆ひと〴〵を携たづさへてカナンの地ちに往󠄃ゆかんとて出いで遂󠄅つひにカナンの地ちに至いたれり 6 アブラム其その地ちを經過󠄃とほりてシケムの處ところに及およびモレの橡樹かしのきに至いたれり其時そのときにカナン人びと其その地ちに住󠄃すめり
 16㌻ 
7 茲こゝにヱホバ、アブラムに顯現あらはれて我われ汝なんぢの苗裔すゑに此地このちに與あたへんといひたまへり彼處かしこにて彼かれ己おのれに顯現あらはれたまひしヱホバに壇だんを築きづけり 8 彼かれ其處そこよりベテルの東ひがしの山やまに移うつりて其その天てん幕まくを張はれり西にしにベテル東ひがしにアイありき彼處かしこにて彼かれヱホバに壇だんを築きづきヱホバの名なを龥よべり 9 アブラム尙なほ進󠄃すゝみて南みなみに遷󠄇うつれり

10 茲こゝに饑󠄃饉ききん其その地ちにありければアブラム、エジプトに寄寓とゞまらんとて彼處かしこに下くだれり其そは饑󠄃饉ききん其その地ちに甚はなはだしかりければなり 11 彼かれ近󠄃ちかく來きたりてエジプトに入いらんとする時とき其その妻つまサライに言いひけるは視みよ我われ汝なんぢを觀みて美麗󠄃うつくしき婦󠄃人をんななるを知しる 12 是故このゆえにエジプト人びと汝なんぢを見みる時とき是これは彼かれの妻つまなりと言いひて我われを殺ころさん然されど汝なんぢをば生存いかしおかん 13 請󠄃こふ汝なんぢわが妹いもうとなりと言いへ然しからば我われ汝なんぢの故ゆゑによりて安やすらかにしてわが命いのち汝なんぢのために生存いきん 14 アブラム、エジプトに至いたりし時ときエジプト人びと此この婦󠄃をんなを見みて甚はなはだ美麗󠄃うつくしとなせり 15 またパロの大臣だいじん等ら彼かれを視みて彼かれをパロの前󠄃まへに譽ほめければ婦󠄃をんな遂󠄅つひにパロの家いへに召めし入いれられたり 16 是こゝに於おいてパロ彼かれのために厚あつくアブラムを待あつかひてアブラム遂󠄅つひに羊ひつじ牛うし僕しもべ婢しもめ牝牡めをの驢馬ろばおよび駱駝らくだを多おほく獲うるに至いたれり 17 時ときにヱホバ、アブラムの妻つまサライの故ゆゑによりて大おほいなる災わざはひを以もてパロと其その家いへを惱なやましたまへり 18 パロ、アブラムを召めして言いひけるは汝なんぢが我われになしたる此事このことは何なにぞや汝なんぢ何故なにゆゑに彼かれが汝なんぢの妻つまなるを我われに吿つげざりしや 19 汝なんぢ何故なにゆゑに彼かれはわが妹いもうとなりといひしや我われ幾ほとんど彼かれをわが妻つまにめとらんとせり然されば汝なんぢの妻つまは此こゝにあり挈󠄄去つれさるべしと 20 パロ即すなはち彼かれの事ことを人々ひと〴〵に命めいじければ彼かれと其その妻つまおよび其その有󠄃もてる諸すべての物ものを送󠄃おくりさらしめたり

第13章

1 アブラム其その妻つまおよび其その有󠄃もてる諸すべての物ものと偕ともにエジプトを出いでて南みなみの地ちに上のぼれりロト彼かれと共ともにありき 2 アブラム甚はなはだ家畜かちくと金銀きんぎんに富とめり 3 彼かれ南みなみの地ちより其その旅󠄃たび路ぢに進󠄃すゝみてベテルに至いたりベテルとアイの間あひだなる其その以前󠄃さきに天てん幕まくを張はりたる處ところに至いたれり〘13㌻〙 4 即すなはち彼かれが初はじめに其處そこに築きづきたる壇だんのある處ところなり彼處かしこにアブラム、ヱホバの名なを龥よべり
 17㌻ 
5 アブラムと偕ともに行ゆきしロトも羊ひつじ牛うしおよび天てん幕まくを有󠄃もてり 6 其その地ちは彼等かれらを載のせて俱ともに居をらしむること能あたはざりき彼等かれらは其その所󠄃有󠄃もちもの多おほかりしに緣よりて俱ともに居をることを得えざりしなり 7 斯有󠄃かゝりしかばアブラムの家畜かちくの牧者ぼくしやとロトの家畜かちくの牧者ぼくしやの間あひだに競爭あらそひありきカナン人びととペリジ人びと此時このとき其その地ちに居住󠄃すめり 8 アブラム、ロトに言いひけるは我等われらは兄弟きやうだいの人ひとなれば請󠄃こふ我われと汝なんぢの間あひだおよびわが牧者ぼくしやと汝なんぢの牧者ぼくしやの間あひだに競爭あらそひあらしむる勿なかれ 9 地ちは皆みな爾なんぢの前󠄃まへにあるにあらずや請󠄃こふ我われを離はなれよ爾なんぢ若もし左ひだりにゆかば我われ右みぎにゆかん又󠄂また爾なんぢ右みぎにゆかば我われ左ひだりにゆかんと 10 是こゝに於おいてロト目めを擧あげてヨルダンの凡すべての低地くぼちを瞻望󠄇のぞみけるにヱホバ、ソドムとゴモラとを滅ほろぼし給たまはざりし前󠄃さきなりければゾアルに至いたるまであまねく善よく潤澤うるほひてヱホバの園そのの如ごとくエジプトの地ちの如ごとくなりき 11 ロト乃すなはちヨルダンの低地くぼちを盡こと〴〵く撰えらみとりて東ひがしに徙うつれり斯かく彼等かれら彼此たがひに別わかれたり 12 アブラムはカナンの地ちに住󠄃すめり又󠄂またロトは低地くぼちの諸邑まち〳〵に住󠄃すみ其その天てん幕まくを遷󠄇うつしてソドムに至いたれり 13 ソドムの人ひとは惡あしくしてヱホバの前󠄃まへに大おほいなる罪人つみびとなりき

14 ロトのアブラムに別ほかれし後のちヱホバ、アブラムに言いひたまひけるは爾なんぢの目めを擧あげて爾なんぢの居をる處ところより西東にしひがし北きた南みなみを瞻望󠄇のぞめ 15 凡おほよそ汝なんぢが觀みる所󠄃ところの地ちは我われ之これを永ながく爾なんぢと爾なんぢの裔すゑに與あたふべし 16 我われ爾なんぢの後裔すゑを地ちの塵沙すなの如ごとくなさん若もし人ひと地ちの塵沙すなを數󠄄かぞふることを得えば爾なんぢの後裔すゑも數󠄄かぞへらるべし 17 爾なんぢ起󠄃たちて縱たて橫よこに其その地ちを行ゆき巡󠄃めぐるべし我われ之これを爾なんぢに與あたへんと 18 アブラム遂󠄅つひに天てん幕まくを遷󠄇うつして來きたりヘブロンのマムレの橡かし林ばやしに住󠄃すみ彼處かしこにてヱホバに壇だんを築きづけり

第14章

1 當時そのときシナルの王わうアムラペル、エラサルの王わうアリオク、エラムの王わうケダラオメルおよびゴイムの王わうテダル等ら 2 ソドムの王わうベラ、ゴモラの王わうビルシア、アデマの王わうシナブ、ゼボイムの王わうセメベルおよびベラ(即すなはち今いまのゾアル)の王わうと戰たゝかひをなせり
 18㌻ 
3 是等これらの五人にんの王わう皆みな結合むすびあひてシデムの谷たにに至いたれり其處そのところは今いまの鹽海しほうみなり 4 彼等かれらは十二年ねんケダラオメルに事つかへ第十三年じふさんねんめに叛󠄃そむけり 5 第十四年じふよねんめにケダラオメルおよび彼かれと偕ともなる王等わうたち來きたりてアシタロテカルナイムのレパイム人びと、ハムのズジ人びと、シヤベキリアタイムのエミ人びと 6 およびセイル山ざんのホリ人びとを擊うちて曠野あらのの傍ほとりなるエルパランに至いたれり〘14㌻〙 7 彼等かれら歸かへりてエンミシパテ(即すなはち今いまのカデシ)に至いたりアマレク人びとの國くにを盡こと〴〵く擊うち又󠄂またハザゾンタマルに住󠄃すめるアモリ人びとを擊うてり 8 爰こゝにソドムの王わうゴモラの王わうアデマの王わうゼボイムの王わうおよびベラ(即すなはち今いまのゾアル)の王わう出いでてシデムの谷たににて彼等かれらと戰たゝかひを接まじへたり 9 即すなはち彼かの五ご人にんの王等わうたちエラムの王わうケダラオメル、ゴイムの王わうテダル、シナルの王わうアムラペル、エラサルの王わうアリオクの四よ人にんと戰たゝかへり 10 シデムの谷たにには地瀝靑ちやんの坑あな多おほかりしがソドムとゴモラの王等わうたち遁󠄅にげて其處そこに陷おちいりぬ其餘そのほかの者ものは山やまに遁󠄅逃󠄄のがれたり 11 是こゝに於おいて彼等かれらソドムとゴモラの諸すべての物ものと其その諸すべての食󠄃しよく料れうを取とりて去されり 12 彼等かれらアブラムの姪をひロトと其その物ものを取とりて去されり其そは彼かれソドムに住󠄃すみたればなり

13 茲こゝに遁󠄅逃󠄄者のがれたるもの來きたりてヘブル人びとアブラムに之これを吿つげたり時ときにアブラムはアモリ人びとマムレの橡かし林ばやしに住󠄃すめりマムレはエシコルの兄弟きやうだい又󠄂またアネルの兄弟きやうだいなり是等これらはアブラムと契󠄅約けいやくを結むすべる者ものなりき 14 アブラム其その兄弟きやうだいの擄とりこにせられしを聞きゝしかば其その熟じゆく練れんしたる家いへの子こ三百十八人にんを率󠄃ひきゐてダンまで追󠄃おひいたり 15 其その家臣けらいを分󠄃わかちて夜よに乘じやうじて彼等かれらを攻せめ彼等かれらを擊破うちやぶりてダマスコの左ひだりなるホバまで彼等かれらを追󠄃おひゆけり 16 アブラム斯かく諸すべての物ものを奪回とりかへし亦また其その兄弟きやうだいロトと其その物ものおよび婦󠄃人をんなと人民たみを取回とりかへせり
 19㌻ 

17 アブラム、ケダラオメルおよび彼かれと偕ともなる王等わうらを擊破うちやぶりて歸かへれる時ときソドムの王わうシヤベの谷たに(即すなはち今いまの王わうの谷たに)にて彼かれを迎󠄃むかへたり 18 時ときにサレムの王わうメルキゼデク、パンと酒さけを携出もちいだせり彼かれは至高いとたかき神かみの祭司さいしなりき 19 彼かれアブラムを祝しゆくして言いひけるは願ねがはくは天地てんちの主ぬしなる至高いとたかき神かみアブラムを祝福めぐみたまへ 20 願ねがはくは汝なんぢの敵てきを汝なんぢの手てに付わたしたまひし至高いとたかき神かみに稱󠄄譽ほまれあれとアブラム乃すなはち彼かれに其その諸すべての物ものの什分󠄃じうぶんの一いちを饋おくれり 21 茲こゝにソドムの王わうアブラムに言いひけるは人ひとを我われに與あたへ物ものを汝なんぢに取とれと 22 アブラム、ソドムの王わうに言いひけるは我われ天地てんちの主ぬしなる至高いとたかき神かみヱホバを指さして言いふ 23 一本ひとすじの絲いとにても鞋帶くつひもにても凡すべて汝なんぢの所󠄃屬ものは我われ取とらざるべし恐おそらくは汝なんぢ我われアブラムを富とましめたりと言いはん 24 但たゞ少者わかものの旣󠄁すでに食󠄃くらひたる物ものおよび我われと偕ともに行ゆきし人ひとアネル、エシコルおよびマムレの分󠄃ぶんを除のぞくべし彼等かれらには彼等かれらの分󠄃ぶんを取とらしめよ

第15章

1 是等これらの事ことの後のちヱホバの言ことば異象まぼろしの中うちにアブラムに臨のぞみて曰いはくアブラムよ懼おそるるなかれ我われは汝なんぢの干櫓たてなり汝なんぢの賚たまものは甚はなはだ大おほいなるべし〘15㌻〙 2 アブラム言いひけるは主しゆヱホバよ何なにを我われに與あたへんとしたまふや我われは子こなくして居をり此このダマスコのエリエゼル我わが家いへの相續人あとつぎなり 3 アブラム又󠄂また言いひけるは視みよ爾なんぢ子たねを我われにたまはず我われの家いへの子こわが嗣子よつぎとならんとすと 4 ヱホバの言ことば彼かれにのぞみて曰いはく此この者ものは爾なんぢの嗣子よつぎとなるべからず汝なんぢの身みより出いづる者もの爾なんぢの嗣子よつぎとなるべしと 5 斯かくてヱホバ彼かれを外そとに携たづさへ出いだして言いひたまひけるは天てんを望󠄇のぞみて星ほしを數󠄄かずへ得うるかを見みよと又󠄂また彼かれに言いひたまひけるは汝なんぢの子孫しそんは是かくのごとくなるべしと 6 アブラム、ヱホバを信しんずヱホバこれを彼かれの義ぎとなしたまへり 7 又󠄂また彼かれに言いひたまひけるは我われは此地このちを汝なんぢに與あたへて之これを有󠄃たもたしめんとて汝なんぢをカルデアのウルより導󠄃みちびき出いだせるヱホバなり
 20㌻ 
8 彼かれ言いひけるは主しゆヱホバよ我われいかにして我われ之これを有󠄃たもつことを知しるべきや 9 ヱホバ彼かれに言いひたまひけるは三さん歳さいの牝め牛うしと三さん歳さいの牝め山羊やぎと三さん歳さいの牡羊をひつじと山やま鳩ばとおよび雛わかき鴿いへばとを我わがために取とれと 10 彼かれ乃すなはち是等これらを皆みな取とりて之これを中なかより剖さき其その剖さきたる者ものを各おの〳〵相對あひむかはしめて置おけり但たゞ鳥とりは剖さかざりき 11 鷙鳥あらきとり其その死體しかばねの上うへに下くだる時ときはアブラム之これを驅おひはらへり

12 斯かくて日ひの沒いる頃ころアブラム酣ふかく睡ねむりしが其その大おほいに暗󠄃くらきを覺おぼえて懼おそれたり 13 時ときにヱホバ、アブラムに言いひたまひけるは爾なんぢ確たしかに知しるべし爾なんぢの子孫しそん他人ひとの國くにに旅󠄃人たびゞととなりて其その人々ひと〴〵に服󠄃事つかへん彼等かれら四百年ねんのあひだ之これを惱なやまさん 14 又󠄂また其その服󠄃事つかへたる國民くにたみは我われ之これを鞫さばかん其その後のち彼等かれらは大おほいなる財貨たからを携たづさへて出いでん 15 爾なんぢは安然やすらかに爾なんぢの父󠄃祖せんぞの所󠄃ところにゆかん爾なんぢは遐齡よきよはひに達󠄃いたりて葬はうむらるべし 16 四よ代だいに及およびて彼等かれら此こゝに返󠄄かへりきたらん其そはアモリ人びとの惡あく未いまだ貫󠄄盈みたざれば也なりと 17 斯かくて日ひの沒いりて黑暗󠄃くらやみとなりし時とき煙󠄃けむりと火焰ほのほの出いづる爐かまど其その切剖きりさきたる物ものの中なかを通󠄃過󠄃とほれり 18 是この日ひにヱホバ、アブラムと契󠄅約けいやくをなして言いひたまひけるは我われ此地このちをエジプトの河かはより彼かの大河おほかは即すなはちユフラテ河かはまで爾なんぢの子孫しそんに與あたふ 19 即すなはちケニ人びとケナズ人びとカデモニ人びと 20 ヘテ人びとペリジ人びとレパイム人びと 21 アモリ人びとカナン人びとギルガシ人びとヱブス人びとの地ち是これなり

第16章

1 アブラムの妻つまサライ子女こどもを生うまざりき彼かれに一人ひとりの侍女つかへめありしがエジプト人びとにして其その名なをハガルと曰いへり 2 サライ、アブラムに言いひけるは視みよヱホバわが子こを生うむことを禁とゞめたまひければ請󠄃こふ我わが侍女つかへめの所󠄃ところに入いれ我われ彼かれよりして子女こどもを得うることあらんとアブラム、サライの言ことばを聽きゝいれたり 3 アブラムの妻つまサライ其その侍女つかへめなるエジプト人びとハガルを取とりて之これを其その夫をつとアブラムに與あたへて妻つまとなさしめたり是これはアブラムがカナンの地ちに十じふ年ねん住󠄃すみたる後のちなりき〘16㌻〙 4 是こゝにおいてアブラム、ハガルの所󠄃ところに入いるハガル遂󠄅つひに孕はらみければ己おのれの孕はらめるを見みて其その女主によしゆを藐視みさげたり
 21㌻ 
5 サライ、アブラムに言いひけるはわが蒙かうむれる害󠄅がいは汝なんぢに歸きすべし我われわが侍女つかへめを汝なんぢの懷ふところに與あたへたるに彼かれ己おのれの孕はらめるを見みて我われを藐視みさぐ願ねがはくはヱホバ我われと汝なんぢの間あひだの事ことを鞫さばきたまへ 6 アブラム、サライに言いひけるは視みよ汝なんぢの侍女つかへめは汝なんぢの手ての中うちにあり汝なんぢの目めに善よしと見みゆる所󠄃ところを彼かれに爲なすべしサライ乃すなはち彼かれを苦くるしめければ彼かれサライの面かほを避󠄃さけて逃󠄄にげたり

7 ヱホバの使󠄃者つかひ曠野あらのの泉いづみの旁かたはら即すなはちシユルの路みちにある泉いづみの旁かたはらにて彼かれに遭󠄃あひて 8 言いひけるはサライの侍女つかへめハガルよ汝なんぢ何處いずこより來きたれるや又󠄂また何處いずこに往󠄃ゆくや彼かれ言いひけるは我われは女主によしゆサライの面かほをさけて逃󠄄にぐるなり 9 ヱホバの使󠄃者つかひ彼かれに言いひけるは汝なんぢの女主によしゆの許もとに返󠄄かへり身みを其その手てに任まかすべし 10 ヱホバの使󠄃者つかひ又󠄂また彼かれに言いひけるは我われ大おほいに汝なんぢの子孫しそんを增まし其その數󠄄かずを衆多おほくして數󠄄かぞふることあたはざらしめん 11 ヱホバの使󠄃者つかひ又󠄂また彼かれに言いひけるは汝なんぢ孕はらめり男子をとこのこを生うまん其その名なをイシマエル(神聽知かみきこしめす)と名なづくべしヱホバ汝なんぢの艱難くるしみを聽知きこしめしたまへばなり 12 彼かれは野驢馬のろばの如ごとき人ひととならん其その手ては諸すべての人ひとに敵てきし諸すべての人ひとの手てはこれに敵てきすべし彼かれは其その諸すべての兄弟きやうだいの東ひがしに住󠄃すまんと 13 ハガル己おのれに諭󠄄さとしたまへるヱホバの名なをアタエルロイ(汝なんぢは見みたまふ神かみなり)とよべり彼かれいふ我われ視みたる後のち尙なほ生いくるやと 14 是こゝをもて其その井ゐどはベエルラハイロイ(我われを見みる活いくる者ものの井ゐ)と呼よばる是これはカデシとベレデの間あひだにあり

15 ハガル、アブラムの男子をのこを生うめりアブラム、ハガルの生うめる其その子この名なをイシマエルと名なづけたり 16 ハガル、イシマエルをアブラムに生うめる時ときアブラムは八十六歳さいなりき

第17章

1 アブラム九十九歳さいの時ときヱホバ、アブラムに顯あらはれて之これに言いひたまひけるは我われは全󠄃ぜん能のうの神かみなり汝なんぢ我わが前󠄃まへに行あゆみて完全󠄃まつたかれよ 2 我われわが契󠄅約けいやくを我われと汝なんぢの間あひだに立たて大おほいに汝なんぢの子孫しそんを增まさん 3 アブラム乃すなはち俯伏ふしたり神かみ又󠄂また彼かれに吿つげて言いひたまひけるは
 22㌻ 
4 我われ汝なんぢとわが契󠄅約けいやくを立たつ汝なんぢは衆多おほくの國民くにたみの父󠄃ちゝとなるべし 5 汝なんぢの名なを此この後のちアブラムと呼よぶべからず汝なんぢの名なをアブラハム(衆多おほくの人ひとの父󠄃ちゝ)とよぶべし其そは我われ汝なんぢを衆多おほくの國民くにたみの父󠄃ちゝと爲なせばなり 6 我われ汝なんぢをして衆多おほくの子孫しそんを得えせしめ國々くに〴〵の民たみを汝なんぢより起󠄃おこさん王等わうたち汝なんぢより出いづべし 7 我われわが契󠄅約けいやくを我われと汝なんぢおよび汝なんぢの後のちの世々よゝの子孫しそんとの間あひだに立たてて永久とこしなへの契󠄅約けいやくとなし汝なんぢおよび汝なんぢの後のちの子孫しそんの神かみとなるべし〘17㌻〙 8 我われ汝なんぢと汝なんぢの後のちの子孫しそんに此この汝なんぢが寄寓やどれる地ち即すなはちカナンの全󠄃地ぜんちを與あたへて永久とこしなへの產業もちものとなさん而しかして我われ彼等かれらの神かみとなるべし

9 神かみまたアブラハムに言いひたまひけるは然されば汝なんぢと汝なんぢの後のちの世々よゝの子孫しそんわが契󠄅約けいやくを守まもるべし 10 汝等なんぢらの中うちの男子をとこのこは咸みな割󠄅禮かつれいを受うくべし是これは我われと汝等なんぢらおよび汝なんぢの後のちの子孫しそんの間あひだの我わが契󠄅約けいやくにして汝等なんぢらの守まもるべき者ものなり 11 汝等なんぢら其その陽やうの皮かはを割󠄅きるべし是これ我われと汝等なんぢらの間あひだの契󠄅約けいやくの徴しるしなり 12 汝等なんぢらの代々よゝの男子をとこのこは家いへに生うまれたる者ものも異邦󠄆人ことくにびとより金かねにて買かひたる汝なんぢの子孫しそんならざる者ものも皆みな生うまれて八日やうかに至いたらば割󠄅禮かつれいを受うくべし 13 汝なんぢの家いへに生うまれたる者ものも汝なんぢの金かねにて買かひたる者ものも割󠄅禮かつれいを受うけざるべからず斯かく我わが契󠄅約けいやく汝等なんぢらの身みにありて永久とこしなへの契󠄅約けいやくとなるべし 14 割󠄅禮かつれいを受うけざる男兒をのこ即すなはち其その陽やうの皮かはを割󠄅きらざる者ものは我わが契󠄅約けいやくを破やぶるによりて其人そのひと其その民たみの中うちより絕たゝるべし

15 神かみ又󠄂またアブラハムに言いひたまひけるは汝なんぢの妻つまサライは其その名なをサライと稱󠄄よぶべからず其その名なをサラと爲なすべし 16 我われ彼かれを祝めぐみ彼かれよりして亦また汝なんぢに一人ひとりの男子をとこのこを授さづけん我われ彼かれを祝めぐみ彼かれをして諸邦󠄆くに〴〵の民たみの母はゝとならしむべし諸もろ〳〵の民たみの王等わうたち彼かれより出いづべし 17 アブラハム俯伏ふして哂わらひ其心そのこゝろに謂いひけるは百歳ひゃくさいの人ひとに豈いかで子この生うまるゝことあらんや又󠄂またサラは九十歳さいなれば豈いかで產うむことをなさんやと 18 アブラハム遂󠄅つひに神かみにむかひて願ねがはくはイシマエルの汝なんぢのまへに生存いきながらへんことをと曰いふ 19 神かみ言いひたまひけるは汝なんぢの妻つまサラ必かならず子こを生うまん汝なんぢ其その名なをイサクと名なづくべし我われ彼かれおよび其その後のちの子孫しそんと契󠄅約けいやくを立たてて永久とこしなへの契󠄅約けいやくとなさん
 23㌻ 
20 又󠄂またイシマエルの事ことに關つきては我われ汝なんぢの願ねがひを聽きゝたり視みよ我われ彼かれを祝めぐみて多衆おほくの子孫しそんを得えさしめ大おほいに彼かれの子孫しそんを增ますべし彼かれ十二の君王きみを生うまん我われ彼かれを大おほいなる國民くにたみとなすべし 21 然されどわが契󠄅約けいやくは我われ翌󠄃年あくるとしの今いま頃ごろサラが汝なんぢに生うまん所󠄃ところのイサクと之これを立たつべし

22 神かみアブラハムと言ものいふことを竟をへ彼かれを離はなれて昇のぼり給たまへり 23 是こゝに於おいてアブラハム神かみの己おのれに言いひたまへる如ごとく此この日ひ其その子こイシマエルと凡すべて其その家いへに生うまれたる者ものおよび凡すべて其その金かねにて買かひたる者もの即すなはちアブラハムの家いへの人ひとの中うちなる諸すべての男をとこを將ひききたりて其その陽やうの皮かはを割󠄅きりたり 24 アブラハムは其その陽やうの皮かはを割󠄅きられたる時とき九十九歳さい 25 其その子こイシマエルは其その陽やうの皮かはを割󠄅きられたる時とき十三歳さいなりき 26 是この日ひアブラハムと其その子こイシマエル割󠄅禮かつれいを受うけたり 27 又󠄂また其その家いへの人ひと家いへに生うまれたる者ものも金かねにて異邦󠄆人ことくにびとより買かひたる者ものも皆みな彼かれとともに割󠄅禮かつれいを受うけたり〘18㌻〙

第18章

1 ヱホバ、マムレの橡かし林ばやしにてアブラハムに顯現あらはれたまへり彼かれは日ひの熱あつき時刻󠄂ころ天てん幕まくの入いり口くちに坐ざしゐたりしが 2 目めを擧あげて見みたるに視みよ三さん人にんの人ひと其その前󠄃まへに立たてり彼かれ見みて天てん幕まくの入いり口くちより趨はしり行ゆきて之これを迎󠄃むかへ 3 身みを地ちに鞠かゞめて言いひけるは我わが主しゆよ我われ若もし汝なんぢの目めのまへに恩めぐみを得えたるならば請󠄃こふ僕しもべを通󠄃とほり過󠄃すごすなかれ 4 請󠄃こふ少許すこしの水みづを取とりきたらしめ汝等なんぢらの足あしを濯󠄄あらひて樹きの下したに休憩やすみたまへ 5 我われ一ひと口くちのパンを取とり來きたらん汝等なんぢら心こゝろを慰なぐさめて然しかる後のち過󠄃すぎゆくべし汝等なんぢら僕しもべの所󠄃ところに來きたればなり彼等かれら言いふ汝なんぢが言いへるごとく爲なせ 6 是こゝにおいてアブラハム天てん幕まくに急󠄃いそぎいりてサラの許もとに至いたりて言いひけるは速󠄃すみやかに細こまかき麺こな三さんセヤを取とり捏こねてパンを作つくるべしと 7 而しかしてアブラハム牛うしの群むれに趨はせゆき犢こうしの柔やはらかにして善よき者ものを取とりきたりて少者わかものに付わたしければ急󠄃いそぎて之これを調󠄃理とゝのふ 8 かくてアブラハム牛酪󠄂ぎうらくと牛乳󠄃ちちおよび其その調󠄃理とゝのへたる犢こうしを取とりて彼等かれらのまへに供そなへ樹きの下したにて其その側かたはらに立たてり彼等かれら乃すなはち食󠄃くらへり
 24㌻ 

9 彼等かれらアブラハムに言いひけるは爾なんぢの妻つまサラは何處いずくにあるや彼かれ言いふ天てん幕まくにあり 10 其その一人ひとり言いふ明年あくるとしの今いま頃ごろ我われ必かならず爾なんぢに返󠄄かへるべし爾なんぢの妻つまサラに男子をとこのこあらんサラ其その後うしろなる天てん幕まくの入いり口くちにありて聞きゝゐたり 11 抑そも〳〵アブラハムとサラは年邁としすゝみ老おいいたる者ものにしてサラには婦󠄃人をんなの常つねの經こと已すでに息やみたり 12 是故このゆえにサラ心こゝろに哂わらひて言いひけるは我われは老衰󠄄おとろへ吾わが主しゆも亦また老おいたる後のちなれば我われに樂たのしみあるべけんや 13 ヱホバ、アブラハムに言いひたまひけるは何故なにゆゑにサラは哂わらひて我われ老おいたれば果はたして子こを生うむことあらんと言いふや 14 ヱホバに豈あに爲なし難がたき事ことあらんや時とき至いたらば我われ定さだめたる期ときに爾なんぢに歸かへるべしサラに男子をとこのこあらんと 15 サラ懼おそれたれば承うけがはずして我われ哂わらはずと言いへりヱホバ言いひたまひけるは否いなや汝なんぢ哂わらへるなり

16 斯かくて其その人々ひと〴〵彼處かしこより起󠄃たちてソドムの方かたを望󠄇のぞみければアブラハム彼等かれらを送󠄃おくらんとて俱ともに行ゆけり 17 ヱホバ言いひ給たまひけるは我われ爲なさんとする事ことをアブラハムに隱かくすべけんや 18 アブラハムは必かならず大おほいなる强つよき國民くにたみとなりて天てん下かの民たみ皆みな彼かれに由よりて福さいはひを獲うるに至いたるべきに在あらずや 19 其そは我われ彼かれをして其その後のちの兒孫こどもらと家族かぞくとに命めいじヱホバの道󠄃みちを守まもりて公󠄃儀たゞしきと公󠄃道󠄃おほやけを行おこなはしめん爲ために彼かれをしれり是これヱホバ、アブラハムに其その曾かつて彼かれに就つきて言いひし事ことを行おこなはん爲ためなり 20 ヱホバ又󠄂また言いひ給たまふソドムとゴモラの號呼さけび大おほいなるに因より又󠄂また其その罪つみ甚はなはだ重おもきに因よりて 21 我われ今いま下くだりて其その號呼さけびの我われに達󠄃いたれる如ごとくかれら全󠄃まつたく行おこなひたりしやを見みんとす若もししからずば我われ知しるに至いたらんと〘19㌻〙

22 其その人々ひと〴〵其處そこより身みを旋かへしてソドムに赴おもむけりアブラハムは尙なほヱホバのまへに立たてり 23 アブラハム近󠄃ちかよりて言いひけるは爾なんぢは義者たゞしきものをも惡者あしきものと俱ともに滅ほろぼし給たまふや 24 若もし邑まちの中うちに五十人にんの義者たゞしきものあるも汝なんぢ尙なほ其處そのところを滅ほろぼし其その中うちの五十人にんの義者たゞしきもののためにこれを恕ゆるしたまはざるや 25 なんぢ斯かくの如ごとく爲なして義者たゞしきものと惡者あしきものと俱ともに殺ころすが如ごときは是これあるまじき事ことなり又󠄂また義者たゞしきものと惡者あしきものを均等ひとしくするが如ごときもあるまじき事ことなり天てん下かを鞫さばく者ものは公󠄃儀たゞしきを行おこなふ可べきにあらずや
 25㌻ 
26 ヱホバ言いひたまひけるは我われ若もしソドムに於おいて邑まちの中うちに五十人にんの義者たゞしきものを看みば其その人々ひと〴〵のために其處そのところを盡こと〴〵く恕ゆるさん 27 アブラハム應こたへていひけるは我われは塵ちりと灰󠄃はひなれども敢あへて我わが主しゆに言上まうす 28 若もし五十人にんの義者たゞしきものの中うち五人にん缺かけたらんに爾なんぢ五人にんの缺かけたるために邑まちを盡こと〴〵く滅ほろぼしたまふやヱホバ言いひたまひけるは我われ若もし彼處かしこに四十五人にんを看みば滅ほろぼさゞるべし 29 アブラハム又󠄂また重かさねてヱホバに言上まうして曰いひけるは若もし彼處かしこに四十人にん看みえなば如何いかんヱホバ言いひたまふ我われ四十人にんのために之これをなさじ 30 アブラハム曰いひけるは請󠄃こふわが主しゆよ怒いからずして言いはしめたまへ若もし彼處かしこに三十人にん看みえなば如何いかんヱホバいひたまふ我われ三十人にんを彼處かしこに看みば之これを爲なさじ 31 アブラハム言いふ我われあへてわが主しゆに言上まうす若もし彼處かしこに二十人にん看みえなば如何いかんヱホバ言いひたまふ我われ二十人にんのためにほろぼさじ 32 アブラハム言いふ請󠄃こふわが主しゆ怒いからずして今いま一度ひとたび言いはしめたまへ若もしかしこに十人にん看みえなば如何いかんヱホバ言いひたまふ我われ十人にんのためにほろぼさじ 33 ヱホバ、アブラハムと言ものいふことを終󠄃をへてゆきたまへりアブラハムおのれの所󠄃ところにかへりぬ

第19章

1 其その二個ふたりの天使󠄃てんのつかひ黃昏ゆふぐれにソドムに至いたるロト時ときにソドムの門もんに坐ざし居ゐたりしがこれを視み起󠄃たちて迎󠄃むかへ首かうべを地ちにさげて 2 言いひけるは我わが主しゆよ請󠄃こふ僕しもべの家いへに臨のぞみ足あしを濯󠄄あらひて宿やどりつとに起󠄃おきて途󠄃みちに遄征すゝみたまへ彼等かれら言いふ否いな我等われらは街衢ちまたに宿やどらんと 3 然されど固かたく强しひければ遂󠄅つひに彼かれの所󠄃ところに臨のぞみて其その家いへに入いるロト乃すなはち彼等かれらのために筵ふるまひを設まうけ酵たねいれぬパンを炊やきて食󠄃くらはしめたり 4 斯かくて未いまだ寢いねざる前󠄃まへに邑まちの人々ひと〴〵即すなはちソドムの人ひと老おいたるも若わかきも諸共もろともに四方八方よもやもより來きたたれる民たみ皆みな其その家いへを環󠄃かこみ 5 ロトを呼よびて之これに言いひけるは今夕このゆふべ爾なんぢに就つきたる人ひとは何處いずくにをるや彼等かれらを我等われらの所󠄃ところに携たづさへ出いだせ我等われら之これを知しらん 6 ロト入いり口くちに出いでて其その後うしろの戶とを閉とぢ彼等かれらの所󠄃もとに至いたりて 7 言いひけるは請󠄃こふ兄弟きやうだいよ惡あしき事ことを爲なすなかれ
 26㌻ 
8 我われに未いまだ男をとこ知しらぬ二人ふたりの女むすめあり請󠄃こふ我われ之これを携たづさへ出いでん爾等なんぢらの目めに善よしと見みゆる如ごとく之これになせよ唯たゞ此この人等ひとたちは旣󠄁すでに我わが家いへの蔭かげに入いりたれば何なにをも之これになすなかれ〘20㌻〙 9 彼等かれら曰いふ爾なんぢ退󠄃しりぞけ又󠄂また言いひけるは此人このひとは來きたり寓やどれる身みなるに恒つねに士師さばきびととならんとす然されば我等われら彼等かれらに加くはふるよりも多おほくの害󠄅がいを爾なんぢに加くはへんと遂󠄅つひに彼等かれら酷󠄃はげしく其人そのひとロトに逼󠄃せまり前󠄃すゝみよりて其その戶とを破やぶらんとせしに 10 彼かの二人ふたり其その手てを舒のばしロトを家いへの內うちに援󠄃ひきいれて其その戶とを閉とぢ 11 家いへの入いり口くちにをる人衆ひと〴〵をして大おほいなるも小ちひさきも俱ともに目めを眩くらましめければ彼等かれら遂󠄅つひに入いり口くちを索たづぬるに困憊󠄂つかれたり

12 斯かくて二人ふたりロトに言いひけるは外ほかに爾なんぢに屬ぞくする者ものありや汝なんぢの婿むこ子むすこ女むすめおよび凡すべて邑まちにをりて爾なんぢに屬ぞくする者ものを此この所󠄃ところより携たづさへ出いづべし 13 此處このところの號呼さけびヱホバの前󠄃まへに大おほいになりたるに因よりて我等われら之これを滅ほろぼさんとすヱホバ我等われらを遣󠄃つかはして之これを滅ほろぼさしめたまふ 14 ロト出いでて其その女むすめを娶めとる婿むこ等らに吿つげて言いひけるはヱホバが邑まちを滅ほろぼしたまふべければ爾等なんぢら起󠄃たちて此處このところを出いでよと然されど婿むこ等らは之これを戲言たはふれごとと視爲みなせり 15 曉あかつきに及およびて天使󠄃てんのつかひロトを促うながして言いひけるは起󠄃たちて此こゝなる爾なんぢの妻つまと二人ふたりの女むすめを携たづさへよ恐おそらくは爾なんぢ邑まちの惡あくとともに滅ほろぼされん 16 然しかるに彼かれ遲󠄃延󠄅ためらひしかば二人ふたり其その手てと其その妻つまの手てと其その二人ふたりの女むすめの手てを執とりて之これを導󠄃みちびき出いだし邑まちの外そとに置おけりヱホバ斯かく彼かれに仁慈あはれみを加くはへたまふ 17 旣󠄁すでに之これを導󠄃みちびき出いだして其その一人ひとり曰いひけるは逃󠄄遁󠄅のがれて汝なんぢの生命いのちを救すくへ後うしろを回顧󠄃かへりみるなかれ低地くぼちの中うちに止とゞまるなかれ山やまに遁󠄅のがれよ否しからずば爾なんぢ滅ほろぼされん 18 ロト彼等かれらに言いひけるはわが主しゆよ請󠄃こふ斯かくしたまふなかれ 19 視みよ僕しもべ爾なんぢの目めのまへに恩めぐみを得えたり爾なんぢ大おほいなる仁慈あはれみを吾われに施ほどこしてわが生命いのちを救すくひたまふ吾われ山やまに遁󠄅のがるる能あたはず恐おそらくは災害󠄅わざはひ身みに及およびて死しぬるにいたらん 20 視みよ此この邑まちは遁󠄅にげゆくに近󠄃ちかくして且かつ小ちひさし我われをして彼處かしこに遁󠄅のがれしめよしからば吾わが生命いのち全󠄃まつたからん是これは小ちひさき邑まちなるにあらずや 21 天使󠄃てんのつかひ之これにいひけるは視みよ我われ此事このことに關つきても亦また爾なんぢの願ねがひを容いれたれば爾なんぢが言いふところの邑まちを滅ほろぼさじ
 27㌻ 
22 急󠄃いそぎて彼處かしこに遁󠄅のがれよ爾なんぢが彼處かしこに至いたるまでは我われ何事なにごとをも爲なすを得えずと是これに因よりて其その邑まちの名なはゾアル(小ちひさし)と稱󠄄よばる

23 ロト、ゾアルに至いたれる時とき日ひ地ちの上うへに昇のぼれり 24 ヱホバ硫黃いわうと火ひをヱホバの所󠄃ところより即すなはち天てんよりソドムとゴモラに雨ふらしめ 25 其その邑まちと低地くぼちと其その邑まちの居民ひとおよび地ちに生おふるところの物ものを盡こと〴〵く滅ほろぼしたまへり 26 ロトの妻つまは後うしろを回顧󠄃かへりみたれば鹽しほの柱󠄃はしらとなりぬ 27 アブラハム其その朝󠄃あさ夙つとに起󠄃おきて其その嘗かつてヱホバの前󠄃まへに立たちたる處ところに至いたり 28 ソドム、ゴモラおよび低地くぼちの全󠄃面おもてを望󠄇のぞみ見みるに其その地ちの煙󠄃燄けむり窖かまの煙󠄃けむりのごとくに騰󠄃上たちのぼれり〘21㌻〙

29 神かみ低地くぼちの邑まちを滅ほろぼしたまふ時とき即すなはちロトの住󠄃すめる邑まちを滅ほろぼしたまふ時ときに當あたり神かみアブラハムを眷念おもひて斯かく其その滅亡ほろびの中うちよりロトを出いだしたまへり

30 斯かくてロト、ゾアルに居をることを懼おそれたれば其その二人ふたりの女むすめと偕ともにゾアルを出いでて上のぼりて山やまに居をり其その二人ふたりの女子むすめとともに巖穴󠄄いはやに住󠄃すめり 31 茲こゝに長女あね季女いもとにいひけるは我等われらの父󠄃ちゝは老おいたり又󠄂また此地このちには我等われらに偶あひて世よの道󠄃みちを成󠄃なす人ひとあらず 32 然されば我等われら父󠄃ちゝに酒さけを飮のませて與ともに寢いね父󠄃ちゝに由よりて子こを得えんと 33 遂󠄅つひに其その夜よる父󠄃ちゝに酒さけを飮のませ長女あねむすめ入いりて其その父󠄃ちゝと與ともに寢いねたり然しかるにロトは女むすめの起󠄃臥おきふしを知しらざりき 34 翌󠄃日あくるひ長女あねむすめ季女おとむすめに言いひけるは我われ昨夜きのふのよわが父󠄃ちゝと寢いねたり我等われら此この夜よ又󠄂また父󠄃ちゝに酒さけをのません爾なんぢ入いりて與ともに寢いねよわれらの父󠄃ちゝに由よりて子こを得うることをえんと 35 乃すなはち其その夜よも亦また父󠄃ちゝに酒さけをのませ季女おとむすめ起󠄃たちて父󠄃ちゝと與ともに寢いねたりロトまた女むすめの起󠄃臥おきふしを知しらざりき 36 斯かくロトの二人ふたりの女むすめ其その父󠄃ちゝによりて孕はらみたり 37 長女あねむすめ子こを生うみ其その名なをモアブと名なづく即すなはち今いまのモアブ人びとの先祖せんぞなり 38 季女おとむすめも亦また子こを生うみ其その名なをベニアンミと名なづく即すなはち今いまのアンモニ人びとの先祖せんぞなり
 28㌻ 

第20章

1 アブラハム彼處かしこより徒うつりて南みなみの地ちに至いたりカデシとシユルの間あひだに居をりゲラルに寄留とゞまれり 2 アブラハム其その妻つまサラを我わが妹いもうとなりと言いひしかばゲラルの王わうアビメレク人びとを遣󠄃つかはしてサラを召めし入いれたり 3 然しかるに神かみ夜よるの夢ゆめにアビメレクに臨のぞみて之これに言いひたまひけるは汝なんぢは其その召めし入いれたる婦󠄃人をんなのために死しぬるなるべし彼かれは夫をつとある者ものなればなり 4 アビメレク未いまだ彼かれに近󠄃ちかづかざりしかば言いふ主しゆよ汝なんぢは義たゞしき民たみをも殺ころしたまふや 5 彼かれは我われに是これはわが妹いもうとなりと言いひしにあらずや又󠄂また婦󠄃をんなも自みずから彼かれはわが兄あになりと言いひたり我われ全󠄃まつたき心こゝろと潔󠄄いさぎよき手てをもて此これをなせり 6 神かみ又󠄂また夢ゆめに之これに言いひたまひけるは然しかり我われ汝なんぢが全󠄃まつたき心こゝろをもて之これをなせるを知しりたれば我われも汝なんぢを阻とゞめて罪つみを我われに犯をかさしめざりき彼かれに觸ふるるを容ゆるさざりしは是これがためなり 7 然されば彼かれの妻つまを歸かへせ彼かれは預言者よげんしやなれば汝なんぢのために祈いのり汝なんぢをして生命いのちを保たもたしめん汝なんぢ若もし歸かへさずば汝なんぢと汝なんぢに屬ぞくする者もの皆みな必かならず死しぬるべきを知しるべし

8 是こゝに於おいてアビメレク其その朝󠄃あさ夙つとに起󠄃おきて臣僕しもべを悉こと〴〵く召めし此事このことを皆みな語かたり聞きかせければ人々ひと〴〵甚いたく懼おそれたり 9 斯かくてアビメレク、アブラハムを召めして之これに言いひけるは爾なんぢ我等われらに何なにを爲なすや我われ何なにの惡あしき事ことを爾なんぢになしたれば爾なんぢ大おほいなる罪つみを我われとわが國くにに蒙かうむらしめんとせしか爾なんぢ爲なすべからざる所󠄃爲わざを我われに爲なしたり〘22㌻〙 10 アビメレク又󠄂またアブラハムに言いひけるは爾なんぢ何なにを見みて此事このことを爲なしたるや 11 アブラハム言いひけるは我われ此處このところはかならず神かみを畏おそれざるべければ吾わが妻つまのために人ひと我われを殺ころさんと思おもひたるなり 12 又󠄂また我われは誠󠄃まことにわが妹いもうとなり彼かれはわが父󠄃ちゝの子こにしてわが母はゝの子こにあらざるが遂󠄅つひに我わが妻つまとなりたるなり 13 神かみ我われをして吾わが父󠄃ちゝの家いへを離はなれて遊󠄃周󠄃ゆきめぐらしめたまへる時ときに當あたりて我われ彼かれに爾なんぢ我等われらが至いたる處ところにて我われを爾なんぢの兄あになりと言いへ是これは爾なんぢが我われに施ほどこす恩めぐみなりと言いひたり 14 アビメレク乃すなはち羊ひつじ牛うし僕しもべ婢しもめを將とりてアブラハムに與あたへ其その妻つまサラ之これに歸かへせり
 29㌻ 
15 而しかしてアビメレク言いひけるは視みよ我わが地ちは爾なんぢのまへにあり爾なんぢの好このむところに住󠄃すめ 16 又󠄂またサラに言いひけるは視みよ我われ爾なんぢの兄あにに銀ぎん千せん枚まいを與あたへたり是これは爾なんぢおよび諸すべての人ひとにありし事等ことどもにつきて爾なんぢの目めを蔽おほふ者ものなり斯かく爾なんぢ償贖つくのひを得えたり 17 是こゝに於おいてアブラハム神かみに祈いのりければ神かみアビメレクと其その妻つまおよび婢しもめを醫いやしたまひて彼等かれら子こを產うむにいたる 18 ヱホバさきにはアブラハムの妻つまサラの故ゆゑをもてアビメレクの家いへの者ものの胎たいをことごとく閉とぢたまへり

第21章

1 ヱホバ其その言いひし如ごとくサラを眷顧󠄃かへりみたまふ即すなはちヱホバ其その語つげしごとくサラに行おこなひたまひしかば 2 サラ遂󠄅つひに孕はらみ神かみのアブラハムに語つげたまひし期日きにちに及およびて年とし老おいたるアブラハムに男子をとこのこを生うめり 3 アブラハム其その生うまれたる子こ即すなはちサラが己おのれに生うめる子この名なをイサクと名なづけたり 4 アブラハム神かみの命めいじたまひし如ごとく八日やうかに其その子こイサクに割󠄅禮かつれいを行おこなへり 5 アブラハムは其その子こイサクの生うまれたる時とき百ひやく歳さいなりき 6 サラ言いひけるは神かみ我われを笑わらはしめたまふ聞きく者もの皆みな我われとともに笑わらはん 7 又󠄂また曰いひけるは誰たれかアブラハムにサラ子女こどもに乳󠄃ちゝを飮のましむるにいたらんと言いひしものあらん然しかるに彼かれが年とし老おゆるに及およびて男子をとこのこを生うみたりと

8 偖さて其その子こ長育そだちて遂󠄅つひに乳󠄃ちを離はなるイサクの乳󠄃ちを離はなるゝ日ひにアブラハム大おほいなる饗宴ふるまひを設まうけたり 9 時ときにサラ、エジプト人びとハガルがアブラハムに生うみたる子この笑わらふを見みて 10 アブラハムに言いひけるは此この婢しもめと其その子こを遂󠄅出おひいだせ此この婢しもめの子こは吾わが子こイサクと共ともに嗣子よつぎとなるべからざるなりと 11 アブラハム其その子このために甚いたく此事このことを憂うれへたり 12 神かみアブラハムに言いひたまひけるは童兒わらべのため又󠄂また汝なんぢの婢しもめのために之これを憂うれふるなかれサラが汝なんぢに言いふところの言ことばは悉こと〴〵く之これを聽きけ其そはイサクより出いづる者もの汝なんぢの裔すゑと稱󠄄となへらるべければなり〘23㌻〙 13 又󠄂また婢しもめの子こも汝なんぢの胤たねなれば我われ之これを一ひとつの國くにとなさん 14 アブラハム朝󠄃あさ夙つとに起󠄃おきてパンと水みづの革嚢かはぶくろとを取とりハガルに與あたへて之これを其その肩󠄃かたに負󠄅おはせ其その子こを携たづさへて去さらしめければ彼かれ往󠄃ゆきてベエルシバの曠野あらのに躑躅さまよひしが
 30㌻ 
15 革嚢かはぶくろの水みづ遂󠄅つひに罄つきたれば子こを灌木きの下したに置おき 16 我わが子この死しぬるを見みるに忍󠄄しのびずといひて遙はるかに行ゆき箭󠄃達󠄃やごろを隔󠄃へだてゝ之これに對むかひ坐ざしぬ斯かく相嚮󠄇あひむかひて坐ざし聲こゑをあげて哭なく 17 神かみ其その童兒わらべの聲こゑを聞きゝたまふ神かみの使󠄃つかひ即すなはち天てんよりハガルを呼よびて之これに言いひけるはハガルよ何事なにごとぞや懼おそるるなかれ神かみ彼處かしこにをる童兒わらべの聲こゑを聞きゝたまへり 18 起󠄃たちて童兒わらべを起󠄃おこし之これを汝なんぢの手てに抱󠄃いだくべし我われ之これを大おほいなる國くにとなさんと 19 神かみハガルの目めを開ひらきたまひければ水みづの井ゐどあるを見みゆきて革嚢かはぶくろに水みづを充みたし童兒わらべに飮のましめたり 20 神かみ童兒わらべと偕ともに在います彼かれ遂󠄅つひに成󠄃長ひとゝなり曠野あらのに居をりて射󠄂者ゆみいるものとなり 21 パランの曠野あらのに住󠄃すめり其その母はゝ彼かれのためにエジプトの國くにより妻つまを迎󠄃むかへたり

22 當時このときアビメレクと其その軍勢ぐんぜいの長かしらピコル、アブラハムに語かたりて言いひけるは汝なんぢ何事なにごとを爲なすにも神かみ汝なんぢとともに在います 23 然されば汝なんぢが我われとわが子ことわが孫まごに僞いつはりをなさゞらんことを今いま此こゝに神かみをさして我われに誓ちかへ我わが厚情󠄃あつきこゝろをもて汝なんぢをあつかふごとく汝なんぢ我われと此この汝なんぢが寄留とゞまる地ちとに爲なすべし 24 アブラハム言いふ我われ誓ちかはん 25 アブラハム、アビメレクの臣僕しもべ等らが水みづの井ゐどを奪うばひたる事ことにつきてアビメレクを責せめければ 26 アビメレク言いふ我われ誰たれが此事このことを爲なせしを知しらず汝なんぢ我われに吿つげしこと无なく又󠄂また我われ今日けふまで聞きゝしことなし 27 アブラハム乃すなはち羊ひつじと牛うしを取とりて之これをアビメレクに與あたふ斯かくて二人ふたり契󠄅約けいやくを結むすべり 28 アブラハム牝めの羔こひつじ七なゝつを分󠄃わかち置おきければ 29 アビメレク、アブラハムに言いふ汝なんぢ此この七なゝつの牝めの羔こひつじを分󠄃わかちおくは何なんのためなるや 30 アブラハム言いひけるは汝なんぢわが手てより此この七なゝつの牝めの羔こひつじを取とりて我わが此これ井ゐどを掘ほりたる證據あかしとならしめよと彼等かれら二人ふたり彼處かしこに誓ちかひしによりて 31 其處そのところをベエルシバ(盟約ちかひの井ゐど)と名なづけたり 32 斯かく彼等かれらベエルシバにて契󠄅約けいやくを結むすびアビメレクと其その軍勢ぐんぜいの長かしらピコルは起󠄃たちてペリシテ人びとの國くにに歸かへりぬ 33 アブラハム、ベエルシバに柳やなぎを植うゑ永遠󠄄とこしなへに在います神かみヱホバの名なを彼處かしこに龥よべり
 31㌻ 
34 斯かくしてアブラハム久ひさしくペリシテ人びとの地ちに留寄とゞまりぬ

第22章

1 是等これらの事ことの後のち神かみアブラハムを試こゝろみんとて之これをアブラハムよと呼よびたまふ彼かれ言いふ我われ此こゝにあり 2 ヱホバ言いひ給たまひけるは爾なんぢの子こ爾なんぢの愛あいする獨子ひとりご即すなはちイサクを携たづさへてモリアの地ちに到いたりわが爾なんぢに示しめさんとする彼所󠄃かしこの山やまに於おいて彼かれを燔祭はんさいとして獻さゝぐべし〘24㌻〙 3 アブラハム朝󠄃あさ夙つとに起󠄃おきて其その驢馬ろばに鞍くらおき二人ふたりの少者わかものと其その子こイサクを携たづさへ且かつ燔祭はんさいの柴薪たきぎを劈わりて起󠄃たちて神かみの己おのれに示しめしたまへる處ところにおもむきけるが 4 三日みつかにおよびてアブラハム目めを擧あげて遙はるかに其その處ところを見みたり 5 是こゝに於おいてアブラハム其その少者わかものに言いひけるは爾なんぢ等らは驢馬ろばとともに此こゝに止とゞまれ我われと童子わらべは彼處かしこにゆきて崇拜をがみを爲なし復また爾なんぢ等らに歸かへらん 6 アブラハム乃すなはち燔祭はんさいの柴薪たきぎを取とりて其その子こイサクに負󠄅おはせ手てに火ひと刀かたなを執とりて二人ふたりともに往󠄃ゆけり 7 イサク父󠄃ちゝアブラハムに語かたりて父󠄃ちゝよと曰いふ彼かれ答こたへて子こよ我われ此ここにありといひければイサク即すなはち言いふ火ひと柴薪たきぎは有󠄃あり然されど燔祭はんさいの羔こひつじは何處いづくにあるや 8 アブラハム言いひけるは子こよ神かみ自みづから燔祭はんさいの羔こひつじを備そなへたまはんと二人ふたり偕ともに進󠄃すゝみゆきて

9 遂󠄅つひに神かみの彼かれに示しめしたまへる處ところに到いたれり是こゝにおいてアブラハム彼處かしこに壇だんを築きづき柴薪たきぎを臚列ならべ其その子こイサクを縛󠄃しばりて之これを壇だんの柴薪たきぎの上うへに置のせたり 10 斯かくしてアブラハム手てを舒のべ刀かたなを執とりて其その子こを宰ころさんとす 11 時ときにヱホバの使󠄃者つかひ天てんより彼かれを呼よびてアブラハムよアブラハムよと言いへり彼かれ言いふ我われ此こゝにあり 12 使󠄃者つかひ言いひけるは汝なんぢの手てを童子わらべに按つくるなかれ亦また何なにをも彼かれに爲なすべからず汝なんぢの子こ即すなはち汝なんぢの獨子ひとりごをも我わがために惜をしまざれば我われ今いま汝なんぢが神かみを畏おそるるを知しると 13 茲こゝにアブラハム目めを擧あげて視みれば後うしろに牡綿羊をひつじありて其その角つの林叢やぶに繋かゝりたりアブラハム即すなはち往󠄃ゆきて其その牡綿羊をひつじを執とらへ之これを其その子この代かはりに燔祭はんさいとして獻さゝげたり 14 アブラハム其その處ところをヱホバエレ(ヱホバ預備そなへたまはん)と名なづく是これに緣よりて今日こんにちもなほ人々ひと〴〵山やまにヱホバ預備そなへたまはんといふ
 32㌻ 
15 ヱホバの使󠄃者つかひ再ふたゝび天てんよりアブラハムを呼よびて 16 言いひけるはヱホバ諭󠄄さとしたまふ我われ己おのれを指さして誓ちかふ汝なんぢ是この事ことを爲なし汝なんぢの子こ即すなはち汝なんぢの獨子ひとりごを惜をしまざりしに因よりて 17 我われ大おほいに汝なんぢを祝めぐみ又󠄂また大おほいに汝なんぢの子孫しそんを增まして天そらの星ほしの如ごとく濱はまの沙いさごの如ごとくならしむべし汝なんぢの子孫しそんは其その敵てきの門もんを獲とらん 18 又󠄂また汝なんぢの子孫しそんによりて天てん下かの民たみ皆みな福祉さいはひを得うべし汝なんぢわが言ことばに遵󠄅したがひたるによりてなりと 19 斯かくてアブラハム其その少者わかものの所󠄃ところに歸かへり皆みなたちて偕ともにベエルシバにいたれりアブラハムはベエルシバに住󠄃すめり

20 是等これらの事ことの後のちアブラハムに吿つぐる者ものありて言いふミルカ亦また汝なんぢの兄弟きやうだいナホルにしたがひて子こを生うめり 21 長子あにはウヅ其その弟おとうとはブヅ其その次󠄄つぎはケムエル是これはアラムの父󠄃ちゝなり 22 其その次󠄄つぎはケセデ、ハゾ、ピルダシ、ヱデラフ、ベトエル 23 ベトエルはリベカを生うめり是この八はち人にんはミルカがアブラハムの兄弟きやうだいナホルに生うみたる者ものなり〘25㌻〙 24 ナホルの妾名そばめなはルマといふ者ものも亦またテバ、ガハム、タハシおよびマアカを生うめり

第23章

1 サラ百二十七歳さいなりき是これ即すなはちサラの齡よはひの年としなり 2 サラ、キリアテアルバにて死しねり是これはカナンの地ちのヘブロンなりアブラハム至いたりてサラのために哀かなしみ且かつ哭なけり 3 斯かくてアブラハム死し人にんの前󠄃まへより起󠄃たち出いでてヘテの子孫ひと〴〵に語かたりて言いひけるは 4 我われは汝等なんぢらの中うちの賓旅󠄃たびびとなり寄居者やどれるものなり請󠄃こふ汝等なんぢらの中うちにて我われは墓地はかどころを與あたへて吾わが所󠄃有󠄃もちものとなし我われをして吾わが死し人にんを出いだし葬はうむることを得えせしめよ 5 ヘテの子孫ひと〴〵アブラハムに應こたへて之これに言いふ 6 我わが主しゆよ我等われらに聽きゝたまへ我等われらの中うちにありて汝なんぢは神かみの如ごとき君きみなり我等われらの墓地はかどころの佳者よきものを擇えらみて汝なんぢの死し人にんを葬はうむれ我等われらの中うち一人ひとりも其その墓地はかどころを汝なんぢにをしみて汝なんぢをしてその死し人にんを葬はうむらしめざる者ものなかるべし 7 是こゝに於おいてアブラハム起󠄃たち其その地ちの民たみヘテの子孫ひと〴〵に對むかひて躬󠄂みを鞠かゞむ 8 而しかして彼等かれらと語かたらひて言いひけるは若もし我われをしてわが死し人にんを出いだし葬はうむるを得えせしむる事こと汝等なんぢらの意こゝろならば請󠄃こふ我われに聽きゝて吾わがためにゾハルの子こエフロンに求もとめ
 33㌻ 
9 彼かれをして其その野のの極端はしに有󠄃もてるマクペラの洞穴󠄄ほらあなを我われに與あたへしめよ彼かれ其その十分󠄃じふぶんの値あたひを取とりて之これを我われに與あたへ汝等なんぢらの中うちにてわが所󠄃有󠄃もちものなる墓地はかどころとなさば善よし 10 時ときにエフロン、ヘテの子孫ひと〴〵の中うちに坐ざしゐたりヘテ人びとエフロン、ヘテの子孫ひと〴〵即すなはち凡すべて其その邑まちの門もんに入いる者ものの聽きける前󠄃まへにてアブラハムに應こたへて言いひけるは 11 吾わが主しゆよ我われに聽きゝたまへ其その野のは我われ汝なんぢに與あたふ又󠄂また其その中うちの洞穴󠄄ほらあなも我われ之これを汝なんぢに與あたふ我われ吾わが民たみなる衆人ひと〴〵の前󠄃まへにて之これを汝なんぢにあたふ汝なんぢの死し人にんを葬はうむれ 12 是こゝに於おいてアブラハム其その地ちの民たみの前󠄃まへに躬󠄂みを鞠かゞめたり 13 而しかして彼かれ其その地ちの民たみに聽きける前󠄃まへにてエフロンに語かたりて言いひけるは汝なんぢ若もし之これを肯うけがはゞ請󠄃こふ吾われに聽きけ我われ其その野のの値あたひを汝なんぢに償つぐのはん汝なんぢ之これを吾われより取とれ我われわが死し人にんを彼處かしこに葬はうむらん 14 エフロン、アブラハムに答こたへて曰いひけるは 15 わが主しゆよ我われに聽きゝたまへ彼かの地ちは銀ぎん四百シケルに當あたる是これは我われと汝なんぢの間あひだに豈あに道󠄃いふに足たらんや然されば汝なんぢの死し人にんを葬はうむれ 16 アブラハム、エフロンの言ことばに從したがひエフロンがヘテの子孫ひと〴〵の聽きける前󠄃まへにて言いひたる所󠄃ところの銀ぎんを秤はかり商買あきうどの中うちの通󠄃用つうよう銀ぎん四百シケルを之これに與あたへたり

17 マムレの前󠄃まへなるマクペラに在あるエフロンの野のは野のも其その中なかの洞穴󠄄ほらあなも野のの中なかと其その四周󠄃まはりの堺さかひにある樹きも皆みな 18 ヘテの子孫ひと〴〵の前󠄃まへ即すなはち凡すべて其その邑まちに入いる者ものの前󠄃まへにてアブラハムの所󠄃有󠄃もちものと定さだまりぬ 19 厥後そののちアブラハム其その妻つまサラをマムレの前󠄃まへなるマクペラの野のの洞穴󠄄ほらあなに葬はうむれり是これ即すなはちカナンの地ちのヘブロンなり〘26㌻〙 20 斯かく其その野のと其その中うちの洞穴󠄄ほらあなはヘテの子孫ひと〴〵之これをアブラハムの所󠄃有󠄃もちものなる墓地はかどころと定さだめたり

第24章

1 アブラハム年とし邁すゝみて老おいたりヱホバ萬すべての事ことに於おいてアブラハムを祝めぐみたまへり 2 茲こゝにアブラハム其その凡すべての所󠄃有󠄃もちものを宰つかさどる其その家いへの年邁としよりなる僕しもべに言いひけるは請󠄃こふ爾なんぢの手てを吾わが髀もゝの下したに置いれよ 3 我われ爾なんぢをして天てんの神かみ地ちの神かみヱホバを指さして誓ちかはしめん即すなはち汝なんぢわが偕ともに居すむカナン人びとの女むすめの中うちより吾わが子こに妻つまを娶めとるなかれ 4 汝なんぢわが故國くにに往󠄃ゆき吾わが親しん族ぞくに到いたりて吾わが子こイサクのために妻つまを娶めとれ
 34㌻ 
5 僕しもべ彼かれに言いひけるは倘もし女をんな我われに從したがひて此地このちに來きたることを好このまざる事ことあらん時ときは我われ爾なんぢの子こを彼かの汝なんぢが出來いできたりし地ちに導󠄃みちびき歸かへるべきか 6 アブラハム彼かれに曰いひけるは汝なんぢ愼つゝしみて吾わが子こを彼處かしこに携たづさへかへるなかれ 7 天てんの神かみヱホバ我われを導󠄃みちびきて吾わが父󠄃ちゝの家いへとわが親しん族ぞくの地ちを離はなれしめ我われに語かたり我われに誓ちかひて汝なんぢの子孫しそんに此地このちを與あたへんと言いひたまひし者もの其その使󠄃つかひを遣󠄃つかはして汝なんぢに先さきだたしめたまはん汝なんぢ彼處かしこより我わが子こに妻つまを娶めとるべし 8 若もし女をんな汝なんぢに從したがひ來きたる事ことを好このまざる時ときは汝なんぢ吾わが此この誓ちかひを解とかるべし唯たゝ我わが子こを彼處かしこに携たづさへかへるなかれ 9 是こゝに於おいて僕しもべ手てを其その主人あるじアブラハムの髀もゝの下したに置いれて此事このことについて彼かれに誓ちかへり

10 斯かくて僕しもべ其その主人しゆじんの駱駝らくだの中うちより十頭とをの駱駝らくだを取とりて出いでたてり即すなはち其その主人しゆじんの諸もろ〳〵の佳物よきものを手てにとりて起󠄃たちてメソポタミアに往󠄃ゆきナホルの邑まちに至いたり 11 其その駱駝らくだを邑まちの外そとにて井ゐどの傍かたはらに跪伏ふさしめたり其時そのときは黃昏ゆふぐれにて婦󠄃女等をんなどもの水汲󠄂みづくみにいづる時ときなりき 12 斯かくして彼かれ言いひけるは吾わが主人しゆじんアブラハムの神かみヱホバよ願ねがはくは今日けふ我われにその者ものを逢あはしめわが主人しゆじんアブラハムに恩惠めぐみを施ほどこし給たまへ 13 我われこの水井みづゐどの傍かたはらに立たち邑まちの人ひとの女むすめ等ら水みづを汲󠄂くみに出いづ 14 我われ童女むすめに向むかひて請󠄃こふ汝なんぢの瓶かめをかたむけて我われに飮のましめよと言いはんに彼かれ答こたへて飮のめ我われまた汝なんぢの駱駝らくだにも飮のましめんと言いはば彼かれは汝なんぢが僕しもべイサクの爲ために定さだめ給たまひし者ものなるべし然さすれば我われ汝なんぢの吾わが主人しゆじんに恩惠めぐみを施ほどこし給たまふを知しらん 15 彼かれ語ものいふことを終󠄃をふるまへに視みよリベカ瓶かめを肩󠄃かたにのせて出いできたる彼かれはアブラハムの兄弟きやうだいナホルの妻つまミルカの子こベトエルに生うまれたる者ものなり 16 其その童女むすめは觀みるに甚はなはだ美うつくしく且かつ處女をとめにして未いまだ人ひとに適󠄄ゆきしことあらず彼かれ井ゐどに下くだり其その瓶かめに水みづを盈みてて上のぼりしかば 17 僕しもべはせゆきて之これにあひ請󠄃こふ我われをして汝なんぢの瓶かめより少許すこしの水みづを飮のましめよといひけるに 18 彼かれ主しゆよ飮のみたまへといひて乃すなはち急󠄃いそぎ其その瓶かめを手てにおろして之これにのましめたりしが〘27㌻〙
 35㌻ 
19 飮のませをはりて言いふ汝なんぢの駱駝らくだのためにも其その飮のみをはるまで水みづを汲󠄂くみて飽󠄄あかしめん 20 急󠄃いそぎて其その瓶かめを水みづ鉢ばちにあけ又󠄂また汲󠄂くまんとて井ゐどにはせゆき其その諸すべての駱駝らくだのために汲󠄂くみたり 21 其人そのひと之これを見みつめヱホバが其その途󠄃みちに幸福さいはひをくだしたまふや否いなややをしらんとして默もくし居ゐたり 22 茲こゝに駱駝らくだ飮のみをはりしかば其人そのひと重おもさ半󠄃はんシケルの金きんの鼻はな環󠄃わ一箇ひとつと重おもさ十じふシケルの金きんの手釧うでわ二箇ふたつをとりて 23 言いひけるは汝なんぢは誰たれの女むすめなるや請󠄃こふ我われに吿つげよ汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへに我等われらが宿やどる𨻶地ところありや 24 女をんな彼かれに曰いひけるは我われはミルカがナホルに生うみたる子こベトエルの女むすめなり 25 又󠄂また彼かれにいひけるは家いへには藁わらも飼草かひばも多おほくあり且かつ宿やどる𨻶地ところもあり 26 是こゝに於おいて其人そのひと伏ふしてヱホバを拜をがみ 27 言いひけるは吾わが主人しゆじんアブラハムの神かみヱホバは讃美ほむべきかなわが主人しゆじんに慈惠みめぐみと眞󠄃實まこととを缺かきたまはず我われ途󠄃みちにありしにヱホバ我われを吾わが主人しゆじんの兄弟きやうだいの家いへにみちびきたまへり

28 茲こゝに童女むすめ走はせ行ゆきて其その母はゝの家いへに此これ等らの事ことを吿つげたり 29 リベカに一人ひとりの兄あにあり其その名なをラバンといふラバンはせいで井ゐどにゆきて其人そのひとの許もとにつく 30 すなはち彼かれ鼻はな環󠄃わおよび其その妹いもうとの手ての手釧うでわを見み又󠄂また其その妹いもうとリベカが其人そのひと斯かく我われに語いへりといふを聞きゝて其人そのひとの所󠄃もとに到いたり見みるに井ゐどの側かたはらにて駱駝らくだの傍わきにたちゐたれば 31 之これに言いひけるは汝なんぢヱホバに祝めぐまるゝ者ものよ請󠄃こふ入いれ奚なんぞ外そとにたつや我われ家いへを備そなへ且かつ駱駝らくだのために所󠄃ところをそなへたり 32 是こゝに於おいて其人そのひと家いへにいりぬラバン乃すなはち其その駱駝らくだの負󠄅にを釋とき藁わらと飼草かひばを駱駝らくだにあたへ又󠄂また水みづをあたへて其人そのひとの足あしと其その從者ともびとの足あしをあらはしめ 33 斯かくして彼かれの前󠄃まへに食󠄃しよくをそなへたるに彼かれ言いふ我われはわが事ことをのぶるまでは食󠄃くらはじとラバン語かたれといひければ 34 彼かれ言いふわれはアブラハムの僕しもべなり 35 ヱホバ大おほいにわが主人しゆじんをめぐみたまひて大おほいなる者ものとならしめ又󠄂また羊ひつじ牛うし金銀きんぎん僕しもべ婢しもめ駱駝らくだ驢馬ろばをこれにたまへり 36 わが主人しゆじんの妻つまサラ年とし老おいてのちわが主人しゆじんに男子なんしをうみければ主人しゆじん其その所󠄃有󠄃もちものを悉こと〴〵く之これに與あたふ 37 わが主人しゆじん我われを誓ちかはせて言いふ吾わがすめるカナンの地ちの人ひとの女子むすめの中うちよりわが子こに妻つまを娶めとるなかれ
 36㌻ 
38 汝なんぢわが父󠄃ちゝの家いへにゆきわが親しん族`ぞくにいたりわが子このために妻つまをめとれと 39 我われわが主人しゆじんにいひけるは倘もし女をんな我われにしたがひて來きたらずば如何いかん 40 彼かれ我われにいひけるは吾わが事つかふるところのヱホバ其その使󠄃者つかひを汝なんぢとともに遣󠄃つかはして汝なんぢの途󠄃みちに幸福さいはひを降󠄄くだしたまはん爾なんぢわが親しん族ぞくわが父󠄃ちゝの家いへより吾わが子こに妻つまをめとるべし 41 汝なんぢわが親しん族ぞくに至いたれる時ときはわが誓ちかひを解とかさるべし若もし彼等かれら汝なんぢにあたへずば汝なんぢはわが誓ちかひをゆるさるべしと〘28㌻〙 42 我われ今日けふ井ゐどに至いたりて謂いひけらくわが主人しゆじんアブラハムの神かみヱホバねがはくはわがゆく途󠄃みちに幸福さいはひを降󠄄くだしたまへ 43 我われはこの井水ゐみずの傍かたはらに立たつ水みづを汲󠄂くみにいづる處女をとめあらん時とき我われ彼かれにむかひて請󠄃こふ汝なんぢの瓶かめより少許すこしの水みづを我われにのましめよと言いはんに 44 若もし我われに答こたへて汝なんぢ飮のめ我われ亦また汝なんぢの駱駝らくだのためにも汲󠄂くまんと言いはば是これヱホバがわが主人しゆじんの子このために定さだまたまひし女をんななるべし 45 我われ心こゝろの中うちに語ものいふことを終󠄃をふるまへにリベカ其その瓶かめを肩󠄃かたにのせて出來いできたり井ゐどにくだりて水みづを汲󠄂くみたるにより我われ彼かれに請󠄃こふ我われにのましめよと言いひければ 46 彼かれ急󠄃いそぎ其その瓶かめを肩󠄃かたよりおろしていひけるは飮のめまた汝なんぢの駱駝らくだにものましめんと是こゝに於おいて我われ飮のみしが彼かれまた駱駝らくだにものましめたり 47 我われ彼かれに問とふて汝なんぢは誰たれの女むすめなるやといひければミルカがナホルに生うみたる子こベトエルの女むすめなりといふ是こゝに於おいて我われ其その鼻はなに環󠄃わをつけ其その手てに手釧うでわをつけたり 48 而しかして我われ伏ふしてヱホバを拜をがみ吾わが主人しゆじんアブラハムの神かみヱホバを頌󠄃美ほめたりヱホバ我われを正たゞしき途󠄃みちに導󠄃みちびきてわが主人しゆじんの兄弟きやうだいの女むすめを其その子このために娶めとしめんとしたまへばなり 49 されば汝等なんぢら若もしわが主人しゆじんにむかひて慈惠めぐみと眞󠄃誠󠄃まことをもて事ことをなさんと思おもはば我われに吿つげよ然しからざるも亦また我われに吿つげよ然されば我われ右みぎか左ひだりにおもむくをえん

50 ラバンとベトエル答こたへて言いひけるは此事このことはヱホバより出いづ我等われら汝なんぢに善惡よしあしを言いふあたはず 51 視みよリベカ汝なんぢの前󠄃まへにをる携たづさへてゆき彼かれをしてヱホバの言いひたまひし如ごとく汝なんぢの主人しゆじんの子この妻つまとならしめよ 52 アブラハムの僕しもべ彼等かれらの言ことばを聞きゝて地ちに伏ふしてヱホバを拜をがめり
 37㌻ 
53 是こゝに於おいて僕しもべ銀ぎんの飾󠄃品かざり金きんの飾󠄃品かざりおよび衣服󠄃ころもをとりいだしてリベカに與あたへ亦また其その兄あにと母はゝに寳物たからものをあたへたり 54 是こゝに於おいて彼かれおよび其その從者ともびと等ら食󠄃飮くひのみして宿やどりしが朝󠄃あさ起󠄃おきたる時とき彼かれ言いふ我われをして吾わが主人しゆじんに還󠄃かへらしめよ 55 リベカの兄あにと母はゝ言いひけるは童女むすめを數󠄄すう日じつの間あひだ少すくなくも十とを日か我等われらと偕ともにをらしめよしかるのち彼かれゆくべし 56 彼人かのひと之これに言いふヱホバ吾わが途󠄃みちに福祉さいはひをくだしたまひたるなれば我われを阻とゞむるなかれ我われを歸かへしてわが主人しゆじんに往󠄃ゆかしめよ 57 彼等かれらいひけるは童女むすめをよびて其その言ことばを問とはんと 58 即すなはちリベカを呼よびて之これに言いひけるは汝なんぢ此人このひとと共ともに往󠄃ゆくや彼かれ言いふ往󠄃ゆかん 59 是こゝに於おいて彼等かれら妹いもうとリベカと其その乳󠄃媼うばおよびアブラハムの僕しもべと其その從者ともびとを遣󠄃おくり去さらしめたり 60 即すなはち彼等かれらリベカを祝しゆくして之これにいひけるはわれらの妹いもうとよ汝なんぢ千萬ちよろずの人ひとの母はゝとなれ汝なんぢの子孫しそんをして其その仇あたの門もんを獲とらしめよ

61 是こゝに於おいてリベカ起󠄃たちて其その童女等めのわらはどもとともに駱駝らくだにのりて其人そのひとにしたがひ往󠄃ゆく僕しもべ乃すなはちリベカを導󠄃みちびきてさりぬ〘29㌻〙 62 茲こゝにイサク、ラハイロイの井ゐどの路みちより來きたれり南みなみの國くにに住󠄃居すみゐたればなり 63 しかしてイサク黃昏ゆふぐれに野のに出いでて默想おもひはかりをなしたりしが目めを擧あげて見みしに駱駝らくだの來きたるあり 64 リベカ目めをあげてイサクを見み駱駝らくだをおりて 65 僕しもべにいひけるは野のをあゆみて我等われらにむかひ來くる者ものは何人なにびとなるぞ僕しもべわが主人しゆじんなりといひければリベカ覆󠄄衣かつぎをとりて身みをおほへり 66 茲こゝに僕しもべ其その凡すべてなしたる事ことをイサクに吿つぐ 67 イサク、リベカを其その母はゝサラの天てん幕まくに携至つれいたりリベカを娶めとりて其その妻つまとなしてこれを愛あいしたりイサクは母はゝにわかれて後のち茲こゝに慰籍なぐさめを得えたり

第25章

1 アブラハム再ふたゝび妻つまを娶めとる其その名なをケトラといふ 2 彼かれジムラン、ヨクシヤン、メダン、ミデアン、イシバク、シユワを生うめり 3 ヨクシヤン、シバとデダンを生うむデダンの子こはアッシユリ族びとレトシ族びとリウミ族びとなり 4 ミデアンの子こはエパ、エペル、ヘノク、アビダ、エルダアなり是等これらは皆みなケトラの子孫しそんなり
 38㌻ 
5 アブラハム其その所󠄃有󠄃もちものを盡こと〴〵くイサクに與あたへたり 6 アブラハムの妾等そばめたちの子こにはアブラハム其その生いける間うちの物ものをあたへて之これをして其その子こイサクを離はなれて東ひがしにさりて東ひがしの國くにに至いたらしむ 7 アブラハムの生存いきながらへたる齡よはひの日ひは即すなはち百七十五年ねんなりき 8 アブラハム遐よき齡よはひに及および老人としよりとなり年とし滿みちて氣いきたえ死しにて其その民たみに加くはゝる 9 其その子こイサクとイシマエル之これをヘテ人びとゾハルの子こエフロンの野のなるマクペラの洞穴󠄄ほらあなに葬はうむれり是これはマムレの前󠄃まへにあり 10 即すなはちアブラハムがヘテの子孫ひと〴〵より買かひたる野のなり彼處かしこにアブラハムと其その妻つまサラ葬はうむらる 11 アブラハムの死しにたる後のち神かみ其その子こイサクを祝めぐみたまふイサクはベエルラハイロイの邊󠄎ほとりに住󠄃すめり

12 サラの侍婢こしもとなるエジプト人びとハガルがアブラハムに生うみたる子こイシマエルの傳でんは左さのごとし 13 イシマエルの子この名なは其その名氏なと其その世代よに循したがひて言いへば是かくのごとしイシマエルの長子うひごはネバヨテなり其その次󠄄つぎはケダル、アデビエル、ミブサム 14 ミシマ、ドマ、マツサ 15 ハダデ、テマ、ヱトル、ネフシ、ケデマ 16 是等これらはイシマエルの子こなり是等これらは其その郷黨さとを其その營えいにしたがひて言いへる者ものにして其その國くにに循したがひていへば十二の牧伯きみなり 17 イシマエルの齡よはひは百三十七歳さいなりき彼かれいきたえ死しにて其その民たみにくははる 18 イシマエルの子等こらはハビラよりエジプトの前󠄃まへなるシユルまでの間あひだに居住󠄃すみてアッスリヤまでにおよべりイシマエルは其そのすべての兄弟きやうだい等たちのまへにすめり〘30㌻〙

19 アブラハムの子こイサクの傳でんは左さのごとしアブラハム、イサクを生うめり 20 イサク四十歳さいにしてリベカを妻つまに娶めとれりリベカはパダンアラムのスリア人びとベトエルの女むすめにしてスリア人びとラバンの妹いもうとなり 21 イサク其その妻つまの子こなきに因よりて之これがためにヱホバに祈願ねがひをたてければヱホバ其そのねがひを聽きゝたまへり遂󠄅つひに其その妻つまリベカ孕はらみしが 22 其その子こ胎はらの內うちに爭あらそひければ然しからば我われいかで斯かくてあるべきと言いひて往󠄃ゆきてヱホバに問とふに 23 ヱホバ彼かれに言いひたまひけるは二ふたつの國民くにたみ汝なんぢの胎たいにあり二ふたつの民たみ汝なんぢの腹はらより出いでて別わかれん一ひとつの民たみは一ひとつの民たみよりも强つよかるべし大あには小おとうとに事つかへんと
 39㌻ 
24 かくて臨月󠄃うみづきみちて見みしに胎はらには孿ふたごありき 25 先さきに出いでたる者ものは赤あかくして躰󠄂中からだぢう裘けごろもの如ごとし其その名なをエサウと名なづけたり 26 其その後のちに弟おとうと出いでたるが其その手てにエサウの踵くびすを持とれり其その名なをヤコブとなづけたりリベカが彼等かれらを生うみし時ときイサクは六十歳さいなりき

27 茲こゝに童子わらべ人ひととなりしがエサウは巧たくみなる獵人かりうどにして野のの人ひととなりヤコブは質樸すなほなる人ひとにして天てん幕まくに居をるものとなれり 28 イサクは麆しかを嗜たしむによりてエサウを愛あいしたりしがリベカはヤコブを愛あいしたり 29 茲こゝにヤコブ羮󠄃あつものを煮にたり時ときにエサウ野のより來きたりて憊󠄂つかれ居をり 30 エサウ、ヤコブにむかひ我われ憊󠄂つかれたれば請󠄃こふ其その紅羮󠄃あかきもの其處そこにある紅羮󠄃あかきものを我われにのませよといふ是こゝをもて彼かれの名なはエドム(紅あか)と稱󠄄となへらる 31 ヤコブ言いひけるは今日けふ汝なんぢの家か督とくの權けんを我われに鬻うれ 32 エサウいふ我われは死しなんとして居をる此この家か督とくの權けん我われに何なにの益えきをなさんや 33 ヤコブまた言いひけるは今日けふ我われに誓ちかへと彼かれすなはち誓ちかひて其その家か督とくの權けんをヤコブに鬻うりぬ 34 是こゝに於おいてヤコブ、パンと扁󠄃豆あぢまめの羮󠄃あつものとをエサウに與あたへければ食󠄃くひ且かつ飮のみて起󠄃たちて去されり斯かくエサウ家か督とくの權けんを藐視かろんじたり

第26章

1 アブラハムの時ときにありし最初はじめの饑󠄃饉ききんの外ほかに又󠄂また其その國くにに饑󠄃饉ききんありければイサク、ゲラルに往󠄃ゆきてペリシテ人びとの王わうアビメレクの許もとにいたれり 2 時ときにヱホバ彼かれにあらはれて言いひたまひけるはエジプトに下くだるなかれ吾わが汝なんぢに示しめすところの地ちにをれ 3 汝なんぢ此地このちにとどまれ我われ汝なんぢと共ともにありて汝なんぢを祝めぐまん我われ是等これらの國くにを盡こと〴〵く汝なんぢおよび汝なんぢの子孫しそんに與あたへ汝なんぢの父󠄃ちゝアブラハムに誓ちかひたる誓言ちかひを行おこなふべし 4 われ汝なんぢの子孫しそんを增まして天そらの星ほしのごとくなし汝なんぢの子孫しそんに凡すべて是等これらの國くにを與あたへん汝なんぢの子孫しそんによりて天てん下かの國民たみ皆みな福祉さいはひを獲うべし 5 是こはアブラハムわが言ことばに順したがひわが職守つとめとわが誡命いましめとわが憲法のりとわが律法おきてを守まもりしに因よりてなり
 40㌻ 
6 イサク乃すなはちゲラルに居をりしが 7 處ところの人ひと其その妻つまの事ことをとへば我わが妹いもうとなりと言いふリベカは觀みるに美麗󠄃うつくしかりければ其その處ところの人ひとリベカの故ゆゑをもて我われを殺ころさんと謂おもひて彼かれをわが妻つまと言いふをおそれたるなり〘31㌻〙 8 イサク久ひさしく彼處かしこにをりし後のち一日あるひペリシテ人びとの王わうアビメレク牖まどより望󠄇のぞみてイサクが其その妻つまリベカと嬉戲たはむるるを見みたり 9 是こゝに於おいてアビメレク、イサクを召めして言いひけるは彼かれは必かならず汝なんぢの妻つまなり汝なんぢなんぞ吾わが妹いもうとといひしやイサク彼かれに言いひけるは恐おそらくは我われ彼かれのために死しぬるならんと思おもひたればなり 10 アビメレクいひけるは汝なんぢなんぞ此事このことを我等われらになすや民たみの一人ひとりもし輕々かろ〴〵しく汝なんぢの妻つまと寢いぬることあらんその時ときは汝なんぢ罪つみを我等われらに蒙かうむらしめんと 11 アビメレク乃すなはちすべて民たみに皆みな命めいじて此人このひとと其その妻つまにさはるものは必かならず死ころすべしと言いへり

12 イサク彼かの地ちに種播たねまきて其その年としに百ひやく倍ばいを獲えたりヱホバ彼かれを祝めぐみたまふ 13 其人そのひと大おほいになりゆきて進󠄃すゝみて盛󠄃さかんになり遂󠄅つひに甚はなはだ大おほいなる者ものとなれり 14 即すなはち羊ひつじと牛うしと僕從しもべを多おほく有󠄃もちしかばペリシテ人びと彼かれを嫉そねみたり 15 其その父󠄃ちゝアブラハムの世よに其その父󠄃ちゝの僕從しもべが掘ほりたる諸すべての井ゐどはペリシテ人びと之これをふさぎて土つちを之これにみてたり 16 茲こゝにアビメレク、イサクに言いひけるは汝なんぢは大おほいに我等われらよりも强大つよければ我等われらをはなれて去されと 17 イサク乃すなはち彼處かしこをさりてゲラルの谷たにに天てん幕まくを張はりて其處そこに住󠄃すめり

18 其その父󠄃ちゝアブラハムの世よに掘ほりたる水井みづゐどをイサク茲こゝに復ふたゝび鑿ほれり其そはアブラハムの死しにたる後のちペリシテ人びと之これを塞ふさぎたればなり斯かくしてイサク其その父󠄃ちゝが之これに名なづけたる名なをもて其その名なとなせり 19 イサクの僕しもべ谷たにに掘ほりて其處そこに泉みづの湧󠄂わき出いづる井ゐどを得えたり 20 ゲラルの牧者ぼくしや此この水みづは我儕われらの所󠄃屬ものなりといひてイサクの僕しもべと爭あらそひければイサク其その井ゐどの名なをエセク(競爭あらそひ)と名なづけたり彼等かれらが己おのれと之これを競爭あらそひたるによりてなり 21 是こゝに於おいて又󠄂また他ほかの井ゐどを鑿ほりしが彼等かれら是これをも爭あらそひければ其その名なをシテナ(敵あた)となづけたり
 41㌻ 
22 イサク乃すなはち彼處かしこより遷󠄇うつりて他ほかの井ゐどを鑿ほりけるが彼等かれら之これをあらそはざりければ其その名なをレホボテ(廣塲ひろば)と名なづけて言いひけるは今いまヱホバ我等われらの處所󠄃ところを廣ひろくしたまへり我等われら此地このちを繁衍ふえまさん

23 斯かくて彼かれ其處そこよりベエルシバにのぼりしが 24 其その夜よヱホバ彼かれにあらはれて言いひたまひけるは我われは汝なんぢの父󠄃ちゝアブラハムの神かみなり懼おそるるなかれ我われ汝なんぢと偕ともにありて汝なんぢを祝めぐみ我わが僕しもべアブラハムのために汝なんぢの子孫しそんを增まさんと 25 是こゝに於おいて彼處かしこに壇だんを築きづきてヱホバの名なを龥よび天てん幕まくを彼處かしこに張はれり彼處かしこにてイサクの僕しもべ井ゐどを鑿ほれり

26 茲こゝにアビメレク其その友ともアホザテ及および其その軍勢ぐんぜいの長かしらピコルと共ともにゲラルよりイサクの許もとに來きたりければ〘32㌻〙 27 イサク彼等かれらに言いふ汝等なんぢらは我われを惡にくみ我われをして汝等なんぢらをはなれて去さらしめたるなるに何なんぞ我わが許もとに來きたるや 28 彼等かれらいひけるは我等われら確然たしかにヱホバが汝なんぢと偕ともにあるを見みたれば我等われらの間あひだ即すなはち我等われらと汝なんぢの間あひだに誓詞ちかひを立たて汝なんぢと契󠄅約けいやくを結むすばんと謂おもへり 29 汝なんぢ我等われらに惡事あしきことをなすなかれ其そは我等われらは汝なんぢを害󠄅がいせず只たゞ善事よきことのみを汝なんぢになし且かつ汝なんぢを安然やすらかに去さらしめたればなり汝なんぢはヱホバの祝めぐみたまふ者ものなり 30 イサク乃すなはち彼等かれらのために酒宴しゆえんを設まうけたれば彼等かれら食󠄃くらひ且かつ飮のめり 31 斯かくて朝󠄃あさ夙つとに起󠄃おきて互たがひに相あひ誓ちかへり而しかしてイサク彼等かれらを去さらしめたれば彼等かれらイサクをはなれて安然やすらかにかへりぬ 32 其その日ひイサクの僕しもべ來きたりて其そのほりたる井ゐどにつきて之これに吿つげて我等われら水みづを得えたりといへり 33 即すなはち之これをシバとなづく此故このゆゑに其その邑まちの名なは今日こんにちまでベエルシバ(誓詞ちかひの井ゐど)といふ

34 エサウ四十歳さいの時ときヘテ人びとの女むすめユデテとヘテ人びとエロンの女むすめバスマテを妻つまに娶めとれり 35 彼等かれらはイサクとリベカの心こゝろの愁煩うれひとなれり

第27章

1 イサク老おいて目めくもりて見みるあたはざるに及およびて其その長子ちやうしエサウを召よびて之これに吾わが子こよといひければ答こたへて我われ此こゝにありといふ
 42㌻ 
2 イサクいひけるは視みよ我われは今いま老おいて何時いつ死しぬるやを知しらず 3 然されば請󠄃こふ汝なんぢの器うつは汝なんぢの弓ゆみ矢やを執とりて野のに出いでわがために麆しかを獵かりて 4 わが好このむ美味びみを作つくり我われにもちきたりて食󠄃くらはしめよ我われ死しぬるまへに心こゝろに汝なんぢを祝しゆくせん

5 イサクが其その子こエサウに語かたる時ときにリベカ聞きゝゐたりエサウは麆しかを獵かりて携もちきたらんとて野のに往󠄃ゆけり 6 是こゝに於おいてリベカ其その子こヤコブに語かたりていひけるは我われ聞きゝゐたるに汝なんぢの父󠄃ちゝ汝なんぢの兄あにエサウに語かたりて言いひけらく 7 吾わがために麆しかをとりきたり美味びみを製つくりて我われにくはせよ死しぬるまへに我われヱホバの前󠄃まへにて汝なんぢを祝しゆくせんと 8 然されば吾わが子こよ吾わが言ことばにしたがひわが汝なんぢに命めいずるごとくせよ 9 汝なんぢ群畜むれの所󠄃ところにゆきて彼處かしこより山羊やぎの二箇ふたつの善よき羔こを我われにとりきたれ我われ之これをもて汝なんぢの父󠄃ちゝのために其その好このむ美味びみを製つくらん 10 汝なんぢ之これを父󠄃ちゝにもちゆきて食󠄃くはしめ其その死しぬる前󠄃まへに汝なんぢを祝しゆくせしめよ 11 ヤコブ其その母はゝリベカに言いひけるは兄あにエサウは毛け深ぶかき人ひとにして我われは滑澤なめらかなる人ひとなり 12 恐おそらくは父󠄃ちゝ我われに捫さはることあらん然しからば我われは欺あざむく者ものと父󠄃ちゝに見みえんされば祝めぐみをえずして反かへつて呪詛のろひをまねかん 13 其その母はゝ彼かれにいひけるは我わが子こよ汝なんぢの詛のろはるゝ所󠄃ところは我われに歸きせん只たゞわが言ことばにしたがひ往󠄃ゆきて取とり來きたれと 14 是こゝにおいて彼かれ往󠄃ゆきて取とり母はゝの所󠄃もとにもちきたりければ母はゝすなはち父󠄃ちゝの好このむところの美味びみを製つくれり〘33㌻〙 15 而しかしてリベカ家いへの中うちに己おのれの所󠄃ところにある長子ちやうしエサウの美服󠄃びふくをとりて之これを季子おとごヤコブに衣きせ 16 又󠄂また山羊やぎの羔この皮かはをもて其その手てと其その頸くびの滑澤なめらかなる處ところとを掩おほひ 17 其その製つくりたる美味びみとパンを子こヤコブの手てにわたせり

18 彼かれ乃すなはち父󠄃ちゝの許もとにいたりて我わが父󠄃ちゝよといひければ我われ此こゝにありわが子こよ汝なんぢは誰たれなると曰いふ 19 ヤコブ父󠄃ちゝにいひけるは我われは汝なんぢの長子ちやうしエサウなり我われ汝なんぢが我われに命めいじたるごとくなせり請󠄃こふ起󠄃おきて坐ざしわが麆しかの肉󠄁にくをくらひて汝なんぢの心こゝろに我われを祝しゆくせよ 20 イサク其その子こに言いひけるは吾わが子こよ汝なんぢいかにして斯かく速󠄃すみやかに獲えたるや彼かれ言いふ汝なんぢの神かみヱホバ之これを我われにあはせたまひしが故ゆゑなり
 43㌻ 
21 イサク、ヤコブにいひけるはわが子こよ請󠄃こふ近󠄃ちかくよれ我われ汝なんぢに捫さはりて汝なんぢがまことに吾わが子こエサウなるや否いなやをしらん 22 ヤコブ父󠄃ちゝイサクに近󠄃ちかよりければイサク之これにさはりていひけるは聲こゑはヤコブの聲こゑなれども手てはエサウの手てなりと 23 彼かれの手て其その兄あにエサウの手てのごとく毛け深ぶかかりしに因よりて之これを辨別わきまへずして遂󠄅つひに之これを祝しゆくしたり 24 即すなはちイサクいひけるは汝なんぢはまことに吾わが子こエサウなるや彼かれ然しかりといひければ 25 イサクいひけるは我われに持もちきたれ吾わが子この麆しかを食󠄃くらひてわが心こゝろに汝なんぢを祝しゆくせんと是こゝに於おいてヤコブ彼かれの許もとにもちきたりければ食󠄃くらへり又󠄂また酒さけをもちきたりければ飮のめり 26 かくて父󠄃ちゝイサク彼かれにいひけるは吾わが子こよ近󠄃ちかくよりて我われに接吻くちつけせよと 27 彼かれすなはち近󠄃ちかよりて之これに接吻くちつけしければ其その衣ころもの馨香かをりをかぎて彼かれを祝しゆくしていひけるは嗚呼あゝ吾わが子この香かをりはヱホバの祝めぐみたまへる野のの馨香かをりのごとし 28 ねがはくは神かみ天てんの露つゆと地ちの腴󠄂あぶらおよび饒多おほくの穀こくと酒さけを汝なんぢにたまへ 29 諸もろ〳〵の民たみ汝なんぢにつかへ諸もろ〳〵の邦󠄆くに汝なんぢに躬󠄂みを鞠かゞめん汝なんぢ兄弟きやうだい等たちの主しゆとなり汝なんぢの母はゝの子等こら汝なんぢに身みをかゞめん汝なんぢを詛のろふ者ものはのろはれ汝なんぢを祝しゆくす者ものは祝しゆくせらるべし

30 イサク、ヤコブを祝しゆくすることを終󠄃をへてヤコブ父󠄃ちゝイサクの前󠄃まへより出いでさりし時ときにあたりて兄あにエサウ獵かりより歸かへり來きたり 31 己おのれも亦また美味びみをつくりて之これを其その父󠄃ちゝの許もとにもちゆき父󠄃ちゝにいひけるは父󠄃ちゝよ起󠄃おきて其その子この麆しかを食󠄃くらひて心こゝろに我われを祝しゆくせよ 32 父󠄃ちゝイサク彼かれにいひけるは汝なんぢは誰たれなるや彼かれいふ我われは汝なんぢの子こ汝なんぢの長子ちやうしエサウなり 33 イサク甚はなはだ大おほいに戰兢ふるひていひけるは然しからば彼かの麆しかを獵かりて之これを我われにもちきたりし者ものは誰たれぞや我われ汝なんぢがきたるまへに諸もろ〳〵の物ものを食󠄃くらひて彼かれを祝しゆくしたれば彼かれまことに祝福めぐみをうべし 34 エサウ父󠄃ちゝの言ことばを聞きゝて大おほいに哭なげき痛いたく泣なきて父󠄃ちゝにいひけるは父󠄃ちゝよ我われを祝しゆくせよ我われをも祝しゆくせよ 35 イサク言いひけるは汝なんぢの弟おとうと僞いつはりて來きたり汝なんぢの祝めぐみを奪うばひたり〘34㌻〙 36 エサウいひけるは彼かれをヤコブ(推除者おしのくるもの)となづくるは宜うべならずや彼かれが我われをおしのくる事こと此これにて二次󠄄ふたゝびなり昔さきにはわが家か督とくの權けんを奪うばひ今いまはわが祝めぐみを奪うばひたり又󠄂また言いふ汝なんぢは祝めぐみをわがために殘のこしおかざりしや
 44㌻ 
37 イサク對こたへてエサウにいひけるは我われ彼かれを汝なんぢの主しゆとなし其その兄弟きやうだいを悉こと〴〵く僕しもべとして彼かれにあたへたり又󠄂また穀こくと酒さけとを彼かれに授さづけたり然されば吾わが子こよ我われ何なにを汝なんぢになすをえん 38 エサウ父󠄃ちゝに言いひけるは父󠄃ちゝよ父󠄃ちゝの祝めぐみ唯一ただひとつならんや父󠄃ちゝよ我われを祝しゆくせよ我われをも祝しゆくせよと聲こゑをあげて哭なきぬ 39 父󠄃ちゝイサク答こたへて彼かれにいひけるは汝なんぢの住󠄃所󠄃すみかは地ちの膏腴󠄂あぶらにはなれ上うへよりの天てんの露つゆにはなるべし 40 汝なんぢは劍かたなをもて世よをわたり汝なんぢの弟おとうとに事つかへん然されど汝なんぢ繋つなぎを離はなるゝ時ときは其その軛くびきを汝なんぢの頸くびより振ふるひおとすを得えん

41 エサウ父󠄃ちゝのヤコブを祝しゆくしたる其その祝めぐみの爲ためにヤコブを惡にくめり即すなはちエサウ心こゝろに謂いひけるは父󠄃ちゝの喪もの日ひ近󠄃ちかければ其時そのとき我われ弟おとうとヤコブを殺ころさんと 42 長子ちやうしエサウの此この言ことばリベカに聞きこえければ季子おとごヤコブを呼よばよせて之これに言いひけるは汝なんぢの兄あにエサウ汝なんぢを殺ころさんとおもひて自みづから慰なぐさむ 43 されば吾わが子こよ我わが言ことばにしたがひ起󠄃たちてハランにゆきわが兄あにラバンの許もとにのがれ 44 汝なんぢの兄あにの怒いかりの釋とくるまで暫しばらく彼かれとともに居をれ 45 汝なんぢの兄あにの鬱憤いきどほり釋とけて汝なんぢをはなれ汝なんぢが彼かれになしたる事ことを忘󠄃わするゝにいたらば我われ人ひとをやりて汝なんぢを彼處かしこよりむかへん我われ何なんぞ一日いちにちのうちに汝等なんぢら二人ふたりを喪うしなふべけんや

46 リベカ、イサクに言いひけるは我われはヘテの女をんな等どものために世よを厭いとふにいたるヤコブ若もし此地このちの彼かの女をんな等どもの如ごときヘテの女をんなの中うちより妻つまを娶めとらば我わが身み生いくるも何なんの利益かひあらんや

第28章

1 イサク、ヤコブを呼よびて之これを祝しゆくし之これに命めいじて言いひけるは汝なんぢカナンの女をんなの中うちより妻つまを娶めとるなかれ 2 起󠄃たちてパダンアラムに往󠄃ゆき汝なんぢの母はゝの父󠄃ちゝベトエルの家いへにいたり彼處かしこにて汝なんぢの母はゝの兄あにラバンの女むすめの中うちより妻つまを娶めとれ 3 願ねがはくは全󠄃ぜん能のうの神かみ汝なんぢを祝めぐみ汝なんぢをして子女こを多おほく得えせしめ且かつ汝なんぢの子孫しそんを增まして汝なんぢをして多衆おほくの民たみとならしめ 4 又󠄂またアブラハムに賜あたへんと約やく束そくせし祝めぐみを汝なんぢおよび汝なんぢと共ともに汝なんぢの子孫しそんに賜たまひ汝なんぢをして神かみがアブラハムにあたへ給たまひし此この汝なんぢが寄寓やどれる地ちを持たもたしめたまはんことをと
 45㌻ 
5 斯かくてイサク、ヤコブを遣󠄃つかはしければパダンアラムにゆきてラバンの所󠄃もとにいたれりラバンはスリア人びとベトエルの子こにしてヤコブとエサウの母はゝなるリベカの兄あになり〘35㌻〙

6 エサウはイサクがヤコブを祝しゆくして之これをパダンアラムにつかはし彼處かしこより妻つまを娶めとらしめんとしたるを見み又󠄂また之これを祝しゆくし汝なんぢはカナンの女をんなの中うちより妻つまをめとるなかれといひて之これに命めいじたることを見み 7 又󠄂またヤコブが其その父󠄃母ちゝはゝの言ことばに順したがひてパダンアラムに往󠄃ゆきしを見みたり 8 エサウまたカナンの女をんなの其その父󠄃ちゝイサクの心こゝろにかなはぬを見みたり 9 是こゝにおいてエサウ、イシマエルの所󠄃ところにゆきて其その有󠄃もてる妻つまの外ほかに又󠄂またアブラハムの子こイシマエルの女むすめネバヨテの妹いもうとマハラテを妻つまにめとれり

10 茲こゝにヤコブ、ベエルシバより出いでたちてハランの方かたにおもむきけるが 11 一處あるところにいたれる時とき日ひ暮くれたれば即すなはち其處そこに宿やどり其その處ところの石いしをとり枕まくらとなして其その處ところに臥ふして寢いねたり 12 時ときに彼かれ夢ゆめみて梯はしだての地ちにたちゐて其その巓󠄄いたゞきの天てんに達󠄃いたれるを見み又󠄂また神かみの使󠄃者つかひの其それにのぼりくだりするを見みたり 13 ヱホバ其その上うへに立たちて言いひたまはく我われは汝なんぢの祖父󠄃ちゝアブラハムの神かみイサクの神かみヱホバなり汝なんぢが偃󠄂臥ふすところの地ちは我われ之これを汝なんぢと汝なんぢの子孫しそんに與あたへん 14 汝なんぢの子孫しそんは地ちの塵沙すなのごとくなりて西東にしひがし北きた南みなみに蔓ひろがるべし又󠄂また天てん下かの諸もろ〳〵の族やから汝なんぢと汝なんぢの子孫しそんによりて福祉さいはひをえん 15 また我われ汝なんぢとともにありて凡すべて汝なんぢが往󠄃ゆくところにて汝なんぢをまもり汝なんぢを此地このちに率󠄃返󠄄ひきかへるべし我われはわが汝なんぢにかたりし事ことを行おこなふまで汝なんぢをはなれざるなり 16 ヤコブ目めをさまして言いひけるは誠󠄃まことにヱホバ此處このところにいますに我われしらざりきと 17 乃すなはち惶懼おそれていひけるは畏おそるべき哉かな此處このところ是これ即すなはち神かみの殿いへの外ほかならず是これ天てんの門もんなり

18 かくてヤコブ朝󠄃あさ夙つとに起󠄃おき其その枕まくらとなしたる石いしを取とり之これを立たてて柱󠄃はしらとなし膏あぶらを其その上うへに沃そゝぎ 19 其處そこを名なをベテル(神殿かみのいへ)と名なづけたり其その邑まちの名なは初はじめはルズといへり
 46㌻ 
20 ヤコブ乃すなはち誓ちかひをたてゝいひけるは若もし神かみ我われとともにいまし此このわがゆく途󠄃みちにて我われをまもり食󠄃くらふパンと衣きる衣ころもを我われにあたへ 21 我われをしてわが父󠄃ちゝの家いへに安然やすらかに歸かへることを得えせしめたまはゞヱホバをわが神かみとなさん 22 又󠄂またわが柱󠄃はしらにたてたる此この石いしを神かみの家いへとなさん又󠄂また汝なんぢがわれにたまふ者ものは皆みな必かならず其その十じふ分󠄃ぶんの一いちを汝なんぢにさゝげん

第29章

1 斯かくてヤコブ其その途󠄃みちにすゝみて東ひがしの民ひとの地ちにいたりて 2 見みるに野のに井ゐどありて羊ひつじの群むれ三みつ其その傍かたはらに臥ふしゐたり此この井ゐどより群むれに飮みづかへばなり大おほいなる石井いしゐどの口くちにあり 3 羊ひつじの群むれ皆みな其處そこに集あつまる時ときに井ゐどの口くちより石いしをまろばして羊ひつじに水飼みづかひ復また故もとのごとく井ゐどの口くちに石いしをのせおくなり 4 ヤコブ人々ひと〴〵に言いひけるは兄弟きやうだいよ奚いづくよりきたれるや彼等かれらいふ我等われらはハランより來きたる〘36㌻〙 5 ヤコブ彼等かれらにいひけるは汝等なんぢらナホルの子こラバンをしるや彼等かれら識しるといふ 6 ヤコブ又󠄂またかれらにいひけるは彼かれは安やすきや彼等かれらいふ安やすし視みよ彼かれの女むすめラケル羊ひつじと偕ともに來きたると 7 ヤコブ言いふ視みよ日ひ尙なほ高たかし家畜かちくを聚あつむべき時ときにあらず羊ひつじに飮みづかひて往󠄃ゆきて牧ぼくせよ 8 彼等かれらいふ我等われらしかする能あたはず群むれの皆みな聚あつまるに及およびて井ゐどの口くちより石いしをまろばして羊ひつじに飮みづかふべきなり 9 ヤコブ尙なほ彼等かれらと語かたれる時ときにラケル父󠄃ちゝの羊ひつじとともに來きたる其そは之これを牧居かひゐたればなり 10 ヤコブ其その母はゝの兄あにラバンの女むすめラケルおよび其その母はゝの兄あにラバンの羊ひつじを見みしかばヤコブ進󠄃すゝみよりて井ゐどの口くちより石いしをまろばし母はゝの兄あにラバンの羊ひつじに飮みづかひたり 11 而しかしてヤコブ、ラケルに接吻くちつけして聲こゑをあげて啼󠄂哭なきぬ 12 即すなはちヤコブ、ラケルに己おのれはその父󠄃ちゝの兄弟きやうだいにしてリベカの子こなることを吿つげければ彼かれはしりゆきて父󠄃ちゝに吿つげたり

13 ラバン其その妹いもうとの子こヤコブの事ことを聞きゝしかば趨はせゆきて之これを迎󠄃むかへ之これを抱󠄃いだきて接吻くちつけし之これを家いへに導󠄃みちびきいたれりヤコブすなはち此これ等らの事ことを悉こと〴〵くラバンに述󠄃のべたり
 47㌻ 
14 ラバン彼かれにいひけるは汝なんぢは誠󠄃まことにわが骨こつ肉󠄁にくなりとヤコブ一月󠄃ひとつきの間あひだ彼かれとともに居をる 15 茲こゝにラバン、ヤコブにいひけるは汝なんぢはわが兄弟きやうだいなればとて空󠄃むなしく我われに役事つかふべけんや何なにの報酬むくひを望󠄇のぞむや我われに吿つげよ 16 ラバン二人ふたりの女子むすめを有󠄃もてり姉あねの名なはレアといひ妹いもうとの名なはラケルといふ 17 レアは目め弱󠄃よわかりしがラケルは美うつくしくして姝かほよし 18 ヤコブ、ラケルを愛あいしたれば言いふ我われ汝なんぢの季女おとむすめラケルのために七年ねん汝なんぢに事つかへん 19 ラバンいひけるは彼かれを他ほかの人ひとにあたふるよりも汝なんぢにあたふるは善よし我われと偕ともに居をれ 20 ヤコブ七年ねんの間あひだラケルのために勤つとめたりしが彼かれを愛あいするが爲ために此これを數󠄄すう日じつの如ごとく見做みなせり

21 茲こゝにヤコブ、ラバンに言いひけるはわが期き滿みちたればわが妻つまをあたへて我われをしてかれの處ところにいることを得えせしめよ 22 是こゝに於おいてラバン處ところの人ひとを盡こと〴〵く集あつめて酒宴ふるまひを設まうけたりしが 23 晩よひに及およびて其その女むすめレアを携たづさへて此これをヤコブにつれ來きたれりヤコブ即すなはち彼かれの處ところにいりぬ 24 ラバンまた其その侍婢つかへめジルパを娘むすめレアに與あたへて侍婢つかへめとなさしめたり 25 朝󠄃あさにいたりて見みるにレアなりしかばヤコブ、ラバンに言いひけるは汝なんぢなんぞ此事このことを我われになしたるや我われラケルのために汝なんぢに役事つかへしにあらずや汝なんぢなんぞ我われを欺あざむくや 26 ラバンいひけるは姉あねより先さきに妹いもうとを嫁とつがしむる事ことは我わが國くににて爲なさざるところなり 27 其その七日なぬかを過󠄃すごせ我等われら是これをも汝なんぢに與あたへん然されば汝なんぢ是これがために尙なほ七年ねん我われに事つかへて勤つとむべし 28 ヤコブ即すなはち斯かくなして其その七日なぬかをすごせしかばラバン其その女むすめラケルをも之これにあたへて妻つまとなさしむ〘37㌻〙 29 またラバン其その侍婢つかへめビルハを女むすめラケルにあたへて侍婢つかへめとなさしむ 30 ヤコブまたラケルの所󠄃ところにいりぬ彼かれレアよりもラケルを愛あいし尙なほ七年ねんラバンに事つかへたり

31 ヱホバ、レアの嫌󠄃きらはるゝを見みて其その胎たいをひらきたまへり然されどラケルは姙はらみなきものなりき 32 レア孕はらみて子こを生うみ其その名なをルベンと名なづけていひけるはヱホバ誠󠄃まことにわが艱苦なやみを顧󠄃かへりみたまへりされば今いま夫をつと我われを愛あいせんと
 48㌻ 
33 彼かれふたゝび孕はらみて子こを產うみヱホバわが嫌󠄃きらはるゝを聞きゝたまひしによりて我われに是これをもたまへりと言いひて其その名なをシメオンと名なづけたり 34 彼かれまた孕はらみて子こを生うみ我われ三人にんの子こを生うみたれば夫をつと今いまより我われに膠漆したしまんといへり是これによりて其その名なをレビと名なづけたり 35 彼かれ復また姙はらみて子こを生うみ我われ今いまヱホバを讃美ほめんといへり是これによりて其その名なをユダと名なづけたり是こゝにいたりて產うむことやみぬ

第30章

1 ラケル己おのれがヤコブに子こを生うまざるを見みて其その姉あねを妒ねたみヤコブに言いひけるは我われに子こを與あたへよ然しからずば我われ死しなんと 2 ヤコブ、ラケルにむかひて怒いかりを發はつして言いふ汝なんぢの胎はらに子こをやどらしめざる者ものは神かみなり我われ神かみに代かはるをえんや 3 ラケルいふ吾わが婢しもめビルハを視みよ彼かれの處ところに入いれ彼かれ子こを生うみてわが膝ひざに置おかん然しからば我われもまた彼かれによりて子こをうるにいたらんと 4 其その仕女つかへめビルハを彼かれにあたへて妻つまとなさしめたりヤコブ即すなはち彼かれの處ところにいる 5 ビルハ遂󠄅つひにはらみてヤコブに子こを生うみければ 6 ラケルいひけるは神かみ我われを監かんがみ亦またわが聲こゑを聽きゝいれて吾われに子こをたまへりと是これによりて其その名なをダンと名なづけたり 7 ラケルの仕女つかへめビルハ再ふたゝび姙はらみて次󠄄つぎの子こをヤコブに生うみければ 8 ラケル我われ神かみの爭あらそひをもて姉あねと爭あらそひて勝󠄃かちぬといひて其その名なをナフタリと名なづけたり

9 茲こゝにレア產うむことの止やみたるを見みしかば其その仕女つかへめジルパをとりて之これをヤコブにあたへて妻つまとなさしむ 10 レアの仕女つかへめジルパ、ヤコブに子こを產うみければ 11 レア福ふく來きたれりといひて其その名なをガドと名なづけたり 12 レアの仕女つかへめジルパ次󠄄子つぎのこをヤコブに生うみければ 13 レアいふ我われは幸さいはひなり女等むすめたち我われを幸さいはひなる者ものとなさんと其その名なをアセルとなづけたり

14 茲こゝに麥むぎ苅かりの日ひにルベン出いでゆきて野のにて戀茄こひなすを獲えこれを母はゝレアの許もとにもちきたりければラケル、レアにいひけるは請󠄃こふ我われに汝なんぢの子この戀茄こひなすをあたへよ
 49㌻ 
15 レア彼かれにいひけるは汝なんぢのわが夫をつとを奪とりしは微ちひさき事ことならんや然しかるに汝なんぢまたわが子この戀茄こひなすをも奪とらんとするやラケルいふ然されば汝なんぢの子この戀茄こひなすのために夫をつと是この夜よ汝なんぢと寢いぬべし〘38㌻〙 16 晩くれにおよびてヤコブ野のより來きたりければレア之これをいでむかへて言いひけるは我われ誠󠄃まことにわが子この戀茄こひなすをもて汝なんぢを雇󠄃やとひたれば汝なんぢ我われの所󠄃ところにいらざるべからずヤコブ即すなはち其その夜よ彼かれといねたり 17 神かみレアに聽きゝたまひければ彼かれ妊はらみて第だい五ごの子こをヤコブに生うめり 18 レアいひけるは我われわが仕女つかへめを夫をつとに與あたへたれば神かみ我われに其その値あたひをたまへりと其その名なをイツサカルと名なづけたり 19 レア復また妊はらみて第だい六ろくの子こをヤコブに生うめり 20 レアいひけるは神かみ我われに嘉賚よきたまものを貺たまふ我われ六ろく人にんの男子をのこを生うみたれば夫をつと今いまより我われと偕ともにすまんと其その名なをゼブルンとなづけたり 21 其その後のち彼かれ女子をんなのこを生うみ其その名なをデナと名なづけたり 22 茲こゝに神かみラケルを念おもひ神かみ彼かれに聽きゝて其その胎たいを開ひらきたまひければ 23 彼かれ妊はらみて男子をのこを生うみて曰いふ神かみわが恥辱はぢを洒そゝぎたまへりと 24 乃すなはち其その名なをヨセフと名なづけて言いふヱホバ又󠄂また他ほかの子こを我われに加くはへたまはん

25 茲こゝにラケルのヨセフを生うむに及およびてヤコブ、ラバンに言いひけるは我われを歸かへして故郷ふるさとに我わが國くにに往󠄃ゆかしめよ 26 わが汝なんぢに事つかへて得えたる所󠄃ところの妻つま子こを我われに與あたへて我われを去さらしめよわが汝なんぢになしたる役事つとめは汝なんぢ之これを知しるなり 27 ラバン彼かれにいひけるは若もしなんぢの意こゝろにかなはゞねがはくは留とゞまれ我われヱホバが汝なんぢのために我われを祝めぐみしを卜うらなひ得えたり 28 又󠄂また言いふ汝なんぢの望󠄇のぞむ値あたひをのべよ我われ之これを與あたふべし 29 ヤコブ彼かれにいひけるは汝なんぢは如何いかにわが汝なんぢに事つかへしか如何いかに汝なんぢの家畜かちくを牧かひしかを知しる 30 わが來きたれる前󠄃まへに汝なんぢの有󠄃もちたる者ものは鮮少わづかなりしが增まして遂󠄅つひに群ぐんをなすに至いたる吾わが來きたりてよりヱホバ汝なんぢを祝めぐみたまへり然しかれども我われは何時いつ吾わが家いへを成󠄃なすにいたらんや 31 彼かれ言いふ我われ何なにを汝なんぢに與あたへんかヤコブいひけるは汝なんぢ何なに者ものをも我われに與あたふるに及およばず汝なんぢ若もし此事このことを我われになさば我われ復また汝なんぢの群むれを牧守かひまもらん 32 即すなはち我われ今日けふ徧あまねく汝なんぢの群むれをゆきめぐりて其その中うちより凡すべて斑ぶちなる者もの點まだらなる者ものを移うつし綿羊ひつじの中うちの凡すべて黑くろき者ものを移うつし山羊やぎの中うちの點まだらなる者ものと斑ぶちなる者ものを移うつさん是これわが値あたひなるべし
 50㌻ 
33 後のちに汝なんぢ來きたりてわが傭値あたひをしらぶる時ときわが義ぎ我われにかはりて應こたへをなすべし若もしわが所󠄃もとに山羊やぎの斑ぶちならざる者もの點まだらならざる者ものあり綿羊ひつじの黑くろからざる者ものあらば皆みな盜ぬすめる者ものとなすべし 34 ラバンいふ汝なんぢの言ことばの如ごとくなさんことを願ねがふ 35 是こゝに於おいて彼かれ其その日ひ牡山羊をやぎの斑入ふいりなる者もの斑點まだらなる者ものを移うつし凡すべて牝め山羊やぎの斑駁ぶちなる者もの斑點まだらなる者もの都すべて身みに白しろ色いろある者ものを移うつし又󠄂また綿羊ひつじの中うちの凡すべて黑くろき者ものを移うつして其その子等こらの手てに付わたせり 36 而しかして彼かれ己おのれとヤコブの間あひだに三日みつか程󠄃ぢの隔󠄃へだたりをたてたりヤコブはラバンの餘のこりの群むれを牧かふ〘39㌻〙

37 茲こゝにヤコブ楊柳やなぎと楓かへでと桑くはの靑あを枝えだを執とり皮かはを剝はぎて白紋󠄃理しろすじを成󠄃つくり枝えだの白しろき所󠄃ところをあらはし 38 其その皮かはをはぎたる枝えだを群むれの來きたりて飮のむところの水槽みづぶねと水みづ鉢はちに立たてて群むれに向むかはしめ群むれをして水みづのみの來きたる時ときに孕はらましむ 39 群むれすなはち枝えだの前󠄃まへに孕はらみて斑入ふいりの者もの斑駁ぶちなる者もの斑點まだらなる者ものを產うみしかば 40 ヤコブ其その羔羊こを區分󠄃わかちラバンの群むれの面かほを其その群むれの斑入ふいりなる者ものと黑くろき者ものに對むかはしめたりしが己おのれの群むれをば一所󠄃ひとところに置おきてラバンの群むれの中うちにいれざりき 41 又󠄂また家畜かちくの壯健󠄄つよき者もの孕はらみたる時ときはヤコブ水槽みづぶねの中うちにて其その家畜かちくの目めの前󠄃まへに彼かの枝えだを置おき枝えだの傍かたはらにおいて孕はらましむ 42 然されど家畜かちくの羸弱󠄃よわかる時ときは之これを置おかず是これに因よりて羸弱󠄃者よわきものはラバンのとなり壯健󠄄者つよきものはヤコブのとなれり 43 是こゝに於おいて其人そのひと大おほいに富饒ゆたかになりて多おほくの家畜かちくと婢しもめ僕しもべおよび駱駝らくだ驢馬ろばを有󠄃もつにいたれり

第31章

1 茲こゝにヤコブ、ラバンの子等こらがヤコブわが父󠄃ちゝの所󠄃有󠄃ものを盡こと〴〵く奪うばひ吾わが父󠄃ちゝの所󠄃有󠄃ものによりて此この凡すべての榮光さかえを獲えたりといふを聞きけり 2 亦またヤコブ、ラバンの面かほを見みるに己おのれに對たいすること疇昔まへの如ごとくならず 3 時ときにヱホバ、ヤコブに言いひたまへるは汝なんぢの父󠄃ちゝの國くににかへり汝なんぢの親しん族ぞくに至いたれ我われ汝なんぢと偕ともにをらんと 4 是こゝに於おいてヤコブ人ひとをやりてラケルとレアを野のに招まねきて群むれの所󠄃ところに至いたらしめ
 51㌻ 
5 之これにいひけるは我われ汝等なんぢらの父󠄃ちゝの面かほを見みるに其その我われに對たいすること疇昔まへの如ごとくならず然されどわが父󠄃ちゝの神かみは我われと偕ともにいますなり 6 汝等なんぢらがしるごとく我われ力ちからを竭つくして汝なんぢらの父󠄃ちゝに事つかへたるに 7 汝等なんぢらの父󠄃ちゝ我われを欺あざむきて十次󠄄とたびもわが値あたひを易かへたり然しかれども神かみ彼かれの我われを害󠄅がいするを容ゆるしたまはず 8 彼かれ斑駁ぶちなる者ものは汝なんぢの傭値あたひなるべしといへば群むれの生うむところ皆みな斑駁ぶちなり斑入ふいりの者ものは汝なんぢの値あたひなるべしといへば群むれの生うむところ皆みな斑入ふいりなり 9 斯かく神かみ汝なんぢらの父󠄃ちゝの家畜かちくを奪とりて我われに與あたへたまへり 10 群むれの孕はらむ時ときに當あたりて我われ夢ゆめに目めをあげて見みしに群むれの上うへに乘のれる牡羊をひつじは皆みな斑入ふいりの者もの斑駁ぶちなる者もの白點まだらなる者ものなりき 11 時ときに神かみの使󠄃者つかひ夢ゆめの中うちに我われに言いふヤコブよと我われ此ここにありと對こたへければ 12 乃すなはち言いふ汝なんぢの目めをあげて見みよ群むれの上うへに乘のれる牡羊をひつじは皆みな斑入ふいりの者もの斑駁ぶちなる者もの白點まだらなる者ものなり我われラバンが凡すべて汝なんぢに爲なすところを鑒かんがみる 13 我われはベテルの神かみなり汝なんぢ彼處かしこにて柱󠄃はしらに膏あぶらを沃そゝぎ彼處かしこにて我われに誓ちかひを立たてたり今いま起󠄃たちて斯地このちを出いでて汝なんぢの親しん族ぞくの國くにに歸かへれと 14 ラケルとレア對こたへて彼かれにいひけるは我等われらの父󠄃ちゝの家いへに尙なほわれらの分󠄃ぶんあらんや我等われらの產業さんげふあらんや〘40㌻〙 15 我等われらは父󠄃ちゝに他人たにんのごとくせらるるにあらずや其そは父󠄃ちゝ我等われらを賣うり亦また我等われらの金かねを蝕󠄃减くひへらしたればなり 16 神かみがわが父󠄃ちゝより取とりたまひし財寳たからは我等われらとわれらの子女こどもの所󠄃屬ものなり然されば都すべて神かみの汝なんぢに言いひたまひし事ことを爲なせ

17 是こゝに於おいてヤコブ起󠄃たちて子等こどもと妻つま等らを駱駝らくだに乘のせ 18 其その獲えたる凡すべての家畜かちくと凡すべての所󠄃有󠄃もちもの即すなはちパダンアラムにてみづから獲えたるところの家畜かちくを携たづさへ去さりてカナンの地ちに居をる所󠄃ところの其その父󠄃ちゝイサクの所󠄃もとにおもむけり 19 時ときにラバンは羊ひつじの毛けを剪きらんとて往󠄃ゆきてありラケル其その父󠄃ちゝのテラピムを竊ぬすめり 20 ヤコブは其その去さることをスリア人びとラバンに吿つげずして潜ひそかに忍󠄄しのびいでたり 21 即すなはち彼かれその凡すべての所󠄃有󠄃もちものを挈󠄄たづさへて逃󠄄にげ去さり起󠄃たちて河かはを渡わたりギレアデの山やまにむかふ

22 ヤコブの逃󠄄にげ去さりしこと三日みつかにおよびてラバンに聞きこえければ 23 彼かれ兄弟きやうだいを率󠄃ひきゐてその後あとを追󠄃おひしが七日路なぬかぢをへてギレアデの山やまにて之これに追󠄃及おひつきぬ
 52㌻ 
24 神かみ夜よるの夢ゆめにスリア人びとラバンに臨のぞみて汝なんぢ愼つゝしみて善よきも惡あしきもヤコブに道󠄃いふなかれと之これに吿つげたまへり 25 ラバン遂󠄅つひにヤコブに追󠄃及おひつきしがヤコブは山やまに天てん幕まくを張はりゐたればラバンもその兄弟きやうだいと共ともにギレアデの山やまに天てん幕まくをはれり 26 而しかしてラバン、ヤコブに言いひけるは汝なんぢ我われに知しらしめずして忍󠄄しのびいで吾わが女むすめ等らを劍かたなをもて執とらへたる者もののごとくにひき往󠄃ゆけり何なんぞかゝる事ことをなすや 27 何故なにゆゑに汝なんぢ潜ひそかに逃󠄄にげさり我われをはなれて忍󠄄しのびいで我われにつげざりしや我われ歡喜よろこびと歌謠うたと鼗つゞみと琴ことをもて汝なんぢを送󠄃おくりしならんを 28 何なんぞ我われをしてわが孫まごと女むすめに接吻くちつけするを得えざらしめしや汝なんぢ愚妄おろかなる事ことをなせり 29 汝等なんぢらに害󠄅がいをくはふるの能ちからわが手てにあり然されど汝等なんぢらの父󠄃ちゝの神かみ昨夜さくや我われに吿つげて汝なんぢつゝしみて善よきも惡あしきもヤコブに語いふべからずといへり 30 汝なんぢ今いま父󠄃ちゝの家いへを甚いたく戀こひて歸かへらんと願ねがふは善よけれども何なんぞわが神かみを竊ぬすみたるや 31 ヤコブ答こたへてラバンにいひけるは恐おそらくは汝なんぢ强しひて女むすめを我われより奪とるならんと思おもひて懼おそれたればなり 32 汝なんぢの神かみを持もてる者ものを見みば之これを生いかしおくなかれ我等われらの兄弟きやうだい等たちの前󠄃まへにて汝なんぢの何なに物もの我われの許もとにあるかをみわけて之これを汝なんぢに取とれと其そはヤコブ、ラケルが之これを竊ぬすみしを知しらざればなり

33 是こゝに於おいてラバン、ヤコブの天てん幕まくに入いりレアの天てん幕まくに入いりまた二人ふたりの婢しもめの天てん幕まくにいりしが視みいださゞればレアの天てん幕まくを出いでてラケルの天てん幕まくにいる 34 ラケル已すでにテラピムを執とりて之これを駱駝らくだの鞍くらの下したにいれて其その上うへに坐ざしければラバン遍󠄃あまねく天てん幕まくの中うちをさぐりたれども見みいださゞりき 35 時ときにラケル父󠄃ちゝにいひけるは婦󠄃女をんなの經つねの習󠄃例ならはしの事ことわが身みにあれば父󠄃ちゝの前󠄃まへに起󠄃たつあたはず願ねがはくは主しゆ之これを怒いかり給たまふなかれと是ここをもて彼かれさがしたれども遂󠄅つひにテラピムを見みいださざりき〘41㌻〙

36 是こゝに於おいてヤコブ怒いかりてラバンを謫せむ即すなはちヤコブ應こたへてラバンに言いひけるは我われ何なにの愆あやまちあり何なにの罪つみありてか汝なんぢ火急󠄃はげしく我われをおふや
 53㌻ 
37 汝なんぢわが物ものを盡こと〴〵く索さぐりたるが汝なんぢの家いへの何なに物ものを見みいだしたるや此こゝにわが兄弟きやうだいと汝なんぢの兄弟きやうだいの前󠄃まへに其それを置おきて我等われら二人ふたりの間あひだをさばかしめよ 38 我われこの二十年ねん汝なんぢとともにありしが汝なんぢの牝め綿羊ひつじと牝め山羊やぎ其その胎こを殰うみそこねしことなし又󠄂また汝なんぢの群むれの牡を綿羊ひつじは我われ食󠄃くらはざりき 39 又󠄂また噛かみ裂さかれたる者ものは我われこれを汝なんぢの所󠄃もとに持もちきたらずして自みづから之これを補おぎなへり又󠄂また晝ひる竊ぬすまるるも夜よる竊ぬすまるるも汝なんぢわが手てより之これを要󠄃もとめたり 40 我われは是かくありつ晝ひるは暑あつさに夜よるは寒󠄃さむさに犯をかされて目めも寐ねむるの遑いとまなく 41 此この二十年ねん汝なんぢの家いへにありたり汝なんぢの二人ふたりの女むすめの爲ために十四年ねん汝なんぢの群むれのために六年ねん汝なんぢに事つかへたり然しかるに汝なんぢは十次󠄄とたびもわが値あたひを易かへたり 42 若もしわが父󠄃ちゝの神かみアブラハムの神かみイサクの畏かしこむ者もの我われとともにいますにあらざれば汝なんぢ今いま必かならず我われを空󠄃手むなしでにて去さらしめしならん神かみわが苦難なやみとわが手ての勞苦はたらきをかへりみて昨夜さくや汝なんぢを責せめたまへるなり

43 ラバン應こたへてヤコブに言いひけるは女むすめ等らはわが女むすめ子等こらはわが子こ群むれはわが群むれ汝なんぢが見みる者ものは皆みなわが所󠄃屬ものなり我われ今日けふ此このわが女むすめ等らとその生うみたる子等こらに何なにをなすをえんや 44 然されば來きたれ我われと汝なんぢ二人ふたり契󠄅約けいやくをむすび之これを我われと汝なんぢの間あひだの證憑あかしとなすべし 45 是ここに於おいてヤコブ石いしを執とりこれを建󠄄たてて柱󠄃はしらとなせり 46 ヤコブ又󠄂またその兄弟きやうだい等たちに石いしをあつめよといひければ即すなはち石いしをとりて垤つかを成󠄃つくれり斯かくて彼等かれら彼處かしこにて垤つかの上うへに食󠄃しよくす 47 ラバン之これをエガルサハドタ(證憑あかしの垤つか)と名なづけヤコブ之これをギレアデ(證憑あかしの垤つか)と名なづけたり 48 ラバン此この垤つか今日けふわれとなんぢの間あひだの證憑あかしたりといひしによりて其その名なはギレアデとと稱󠄄となへらる 49 又󠄂またミヅパ(觀望󠄇樓ものみ)と稱󠄄となへらる其そは彼かれ我等われらが互たがひにわかるゝに及およべる時ときねがはくはヱホバ我われと汝なんぢの間あひだを監かんがみたまへといひたればなり 50 彼かれ又󠄂またいふ汝なんぢもしわが女むすめをなやまし或あるひはわが女むすめのほかに妻つまをめとらば人ひとの我われらと偕ともなる者ものなきも神かみと汝なんぢのあひだにいまして證あかしをなしたまふ 51 ラバン又󠄂またヤコブにいふ我わがわれとなんぢの間あひだにたてたる此この垤つかを視みよ柱󠄃はしらをみよ 52 此この垤つか證あかしとならん柱󠄃はしら證あかしとならん我われこの垤つかを越こえて汝なんぢを害󠄅がいせじ汝なんぢこの垤つかこの柱󠄃はしらを越こえて我われを害󠄅がいせざれ
 54㌻ 
53 アブラハムの神かみナホルの神かみ彼等かれらの父󠄃ちゝの神かみわれらの間あひだを鞫さばきたまへとヤコブ乃すなはちその父󠄃ちゝイサクの畏かしこむ者ものをさして誓ちかへり 54 斯かくてヤコブ山やまにて犧牲いけにへをさゝげその兄弟きやうだいを招まねきてパンを食󠄃くらはしむ彼等かれらパンを食󠄃くらひて山やまに宿やどれり〘42㌻〙 55 ラバン朝󠄃あさ蚤つとに起󠄃おき其その孫まごと女むすめに接吻くちつけして之これを祝しゆくせりしかしてラバンゆきて其その所󠄃ところにかへりぬ

第32章

1 茲こゝにヤコブその途󠄃みちに進󠄃すゝみしが神かみの使󠄃者つかひこれにあふ 2 ヤコブこれを見みて是こは神かみの陣ぢん營えいなりといひてその處ところの名なをマハナイム(二に營えい)となづけたり

3 かくてヤコブ己おのれより前󠄃さきに使󠄃者つかひをつかはしてセイルの地ちエドムの野のにをる其その兄あにエサウの所󠄃もとにいたらしむ 4 即すなはち之これに命めいじて言いふ汝等なんぢらかくわが主しゆエサウにいふべし汝なんぢの僕しもべヤコブ斯かくいふ我われラバンの所󠄃ところに寄寓やどりて今いままでとゞまれり 5 我われ牛うし驢馬ろば羊ひつじ僕しもべ婢しもめあり人ひとをつかはしてわが主しゆに吿つぐ汝なんぢの前󠄃まへに恩めぐみをえんことを願ねがふなりと 6 使󠄃者つかひヤコブにかへりて言いひけるは我等われら汝なんぢの兄あにエサウの許もとに至いたれり彼かれ四百人にんをしたがへて汝なんぢをむかへんとて來きたると 7 是これによりヤコブ大おほいにおそれ且かつくるしみ己おのれとともにある人衆ひと〴〵および羊ひつじと牛うしと駱駝らくだを二隊󠄄ふたくみにわかちて 8 言いひけるはエサウもし一ひとつの隊󠄄くみに來きたりて之これをうたば遺󠄃のこれるところの一隊󠄄ひとくみ逃󠄄のがるべし 9 ヤコブまた言いひけるはわが父󠄃ちゝアブラハムの神かみわが父󠄃ちゝイサクの神かみヱホバよ汝なんぢ甞かつて我われにつげて汝なんぢの國くににかへり汝なんぢの親しん族ぞくに到いたれ我われなんぢを善よくせんといひたまへり 10 我われはなんぢが僕しもべにほどこしたまひし恩惠めぐみと眞󠄃實まことを一ひとつも受うくるにたらざるなり我われわが杖つゑのみを持もちてこのヨルダンを濟わたりしが今いまは二隊󠄄ふたくみとも成󠄃なるにいたれり 11 願ねがはくはわが兄あにの手てよりエサウの手てより我われをすくひいだしたまへ我われ彼かれをおそる恐おそらくは彼かれきたりて我われをうち母はゝと子ことに及およばん 12 汝なんぢは甞かつて我われかならず汝なんぢを惠めぐみ汝なんぢの子孫しそんを濱はまの沙いさごの多おほくして數󠄄かぞふべからざるが如ごとくなさんといひたまへりと
 55㌻ 

13 彼かれその夜よ彼處かしこに宿やどりその手てにいりし物ものの中うちより兄あにエサウへの禮物おくりものをえらべり 14 即すなはち牝め山羊やぎ二百牡山羊をやぎ二十牝め羊ひつじ二百牡羊をひつじ二十 15 乳󠄃ちゝ駱駝らくだと其その子こ三十 牝め牛うし四十 牡牛をうし十 牝めの驢馬ろば二十 驢馬ろばの子こ十 16 而しかして其その群むれと群むれとをわかちて之これを僕しもべの手てに授わたし僕しもべにいひけるは吾われに先さきだちて進󠄃すゝみ群むれと群むれとの間あひだを隔󠄃へだてておくべし 17 又󠄂またその前󠄃者さきのものに命めいじて言いひけるはわが兄あにエサウ汝なんぢにあひ汝なんぢに問とふて汝なんぢは誰たれの人ひとにして何處いづくにゆくや是この汝なんぢのまへなる者ものは誰たれの所󠄃有󠄃ものなるやといはば 18 汝なんぢの僕しもべヤコブの所󠄃有󠄃ものにしてわが主しゆエサウにたてまつる禮物おくりものなり視みよ彼かれもわれらの後うしろにをるといふべしと 19 彼かれかく第だい二にの者もの第だい三さんの者ものおよび凡すべて群々むれ〳〵にしたがひゆく者ものに命めいじていふ汝等なんぢらエサウにあふ時ときはかくの如ごとく之これにいふべし〘43㌻〙 20 且かつ汝等なんぢらいへ視みよなんぢの僕しもべヤコブわれらの後うしろにをるとヤコブおもへらく我われわが前󠄃さきにおくる禮物おくりものをもて彼かれを和なだめて然しかるのち其その面かほを觀みん然さらば彼かれわれを接遇󠄃うけいるることあらんと 21 是これによりて禮物おくりものかれに先さきだちて行ゆく彼かれは其その夜よ陣ぢん營えいの中うちに宿やどりしが

22 其その夜よおきいでて二人ふたりの妻つまと二人ふたりの仕女つかへめおよび十じふ一いち人にんの子こを導󠄃みちびきてヤボクの渡わたりをわたれり 23 即すなはち彼等かれらをみちびきて川かはを渉わたらしめ又󠄂またその有󠄃もてる物ものを渡わたせり 24 而しかしてヤコブ一人ひとり遺󠄃のこりしが人ひとありて夜よの明あくるまで之これと角力ちからくらべす 25 其人そのひと己おのれのヤコブに勝󠄃かたざるを見みてヤコブの髀もゝの樞骨つがひに觸ふれしかばヤコブの髀もゝの樞骨つがひ其人そのひとと角力ちからくらべする時とき挫離はづれたり 26 其人そのひと夜明よあけんとすれば我われをさらしめよといひければヤコブいふ汝なんぢわれを祝しゆくせずばさらしめずと 27 是こゝに於おいて其人そのひとかれにいふ汝なんぢの名なは何なになるや彼かれいふヤコブなり 28 其人そのひといひけるは汝なんぢの名なは重かさねてヤコブととなふべからずイスラエルととなふべし其そは汝なんぢ神かみと人ひととに力ちからをあらそひて勝󠄃かちたればなりと 29 ヤコブ問とふて請󠄃こふ汝なんぢの名なを吿つげよといひければ其人そのひと何故なにゆゑにわが名なをとふやといひて乃すなはち其處そこにて之これを祝しゆくせり 30 是こゝを以もてヤコブその處ところの名なをベニエル(神かみの面かほ)となづけて曰いふ我われ面かほと面かほをあはせて神かみとあひ見みてわが生命いのちなほ存いくるなりと
 56㌻ 
31 斯かくて彼かれ日ひのいづる時ときにベニエルを過󠄃すぎたりしが其その髀もゝのために步行あゆみはかどらざりき 32 是故このゆえにイスラエルの子孫ひと〴〵は今日こんにちにいたるまで髀もゝの樞つがひの巨󠄃筋おほすぢを食󠄃くらはず是これ彼人かのひとがヤコブの髀もゝの巨󠄃筋おほすぢに觸ふれたるによりてなり

第33章

1 爰こゝにヤコブ目めをあげて視みしにエサウ四百人にんをひきゐて來きたりしかば即すなはち子等こどもを分󠄃わかちてレアとラケルと二人ふたりの仕女つかへめとに付わたし 2 仕女つかへめとその子等こどもを前󠄃まへにおきレアとその子等こどもを次󠄄つぎにおきラケルとヨセフを後あとにおきて 3 自みづから彼等かれらの前󠄃さきに進󠄃すゝみ七度なゝたび身みを地ちにかゞめて遂󠄅つひに兄あにに近󠄃ちかづきけるに 4 エサウ趨はしりてこれを迎󠄃むかへ抱󠄃いだきてその頸くびをかゝへて之これに接吻くちつけすしかして二人ふたりともに啼󠄂泣なけり 5 エサウ目めをあげて婦󠄃人をんなと子等こどもを見みていひけるは是等これらの汝なんぢとともなる者ものは誰たれなるやヤコブいひけるは神かみが僕しもべに授さづけたまひし子こなりと 6 時ときに仕女つかへめ等らその子ことともに近󠄃ちかよりて拜はいし 7 レアも亦またその子ことともに近󠄃ちかよりて拜はいす其その後のちにヨセフとラケルちかよりて拜はいす 8 エサウ又󠄂またいひけるは我わがあへる此この諸もろ〳〵の群むれは何なにのためなるやヤコブいふ主しゆの目めの前󠄃まへに恩めぐみを獲えんがためなり 9 エサウいひけるは弟おとうとよわが有󠄃もつところの者ものは足たれり汝なんぢの所󠄃有󠄃もちものは汝なんぢ自みづから之これを有󠄃もてよ〘44㌻〙 10 ヤコブいひけるは否いな我われもし汝なんぢの目めの前󠄃まへに恩めぐみをえたらんには請󠄃こふわが手てよりこの禮物おくりものを受うけよ我われ汝なんぢの面かほをみるに神かみの面かほをみるがごとくなり汝なんぢまた我われをよろこぶ 11 神かみ我われをめぐみたまひて我わが有󠄃もつところの者もの足たれりされば請󠄃こふわが汝なんぢにたてまつる禮物おくりものを受うけよと彼かれに强しひければ終󠄃つひに受うけたり 12 エサウいひけるは我等われらいでたちてゆかん我われ汝なんぢにさきだつべし 13 ヤコブ彼かれにいひけるは主しゆのしりたまふごとく子等こどもは幼弱󠄃わかし又󠄂また子こを持もてる羊ひつじと牛うしと我われにしたがふ若もし一日いちにちこれを驅おひすごさば群むれみな死しなん 14 請󠄃こふわが主しゆ僕しもべにさきだちて進󠄃すゝみたまへ我われはわが前󠄃まへにゆくところの家畜かちくと子女こどもに足あしにまかせて徐しづかに導󠄃みちびきすゝみセイルにてわが主しゆに詣いたらん
 57㌻ 
15 エサウいひけるは然しからば我われわがひきゐる人ひと數󠄄すう人にんを汝なんぢの所󠄃ところにのこさんヤコブいひけるは何なんぞ此これを須もちゐんや我われをして主しゆの目めの前󠄃まへに恩めぐみを得えせしめよ 16 是こゝに於おいてエサウは此この日ひその途󠄃みちにしたがひてセイルに還󠄃かへりぬ 17 斯かくてヤコブ、スコテに進󠄃すゝみて己おのれのために家いへを建󠄄たて又󠄂また家畜かちくのために廬こやを作つくれり是これによりて其その處ところの名なをスコテ(廬こや)といふ

18 ヤコブ、パダンアラムより來きたりて恙つゝがなくカナンの地ちにあるシケムの邑まちに至いたり邑まちの前󠄃まへにその天てん幕まくを張はり 19 遂󠄅つひにその天てん幕まくをはりしところの野のをシケムの父󠄃ちゝハモルの子等こらの手てにより金きん百ひやく枚まいにて購󠄄かひとり 20 彼處かしこに壇だんをきづきて之これをエル、エロヘ、イスラエル(イスラエルの神かみなる神かみ)となづけたり

第34章

1 レアのヤコブに生うみたる女むすめデナその國くにの婦󠄃女をんなを見みんとていでゆきしが 2 その國くにの君主きみなるヒビ人びとハモルの子こシケムこれを見みて之これをひきいれこれと寢いねてこれを辱はづかしむ 3 而しかしてその心こゝろふかくヤコブの女むすめデナを戀したひて彼かれ此この女をんなを愛あいしこの女をんなの心こゝろをいひなだむ 4 斯かくてシケムその父󠄃ちゝハモルに語かたり此この少わかき女むすめをわが妻つまに獲えよといへり 5 ヤコブ彼かれがその女子むすめデナを汚けがしたることを聞きゝしかどもその子等こら家畜かちくを牧かひて野のにをりしによりて其そのかへるまでヤコブ默もくしゐたり 6 シケムの父󠄃ちゝハモル、ヤコブの許もとにいできたりて之これと語かたらふ 7 茲こゝにヤコブの子等こら野のより來きたりしが之これを聞きゝしかば其その人々ひと〴〵憂うれへかつ甚いたく怒いかれり是こはシケムがヤコブの女むすめと寢いねてイスラエルに愚おろかなる事ことをなしたるに因よれり是かくのごとき事ことはなすべからざる者ものなればなり 8 ハモル彼等かれらに語かたりていひけるはわが子こシケム心こゝろになんぢの女むすめを戀こふねがはくは彼かれをシケムにあたへて妻つまとなさしめよ〘45㌻〙 9 汝なんぢら我われらと婚姻こんいんをなし汝なんぢらの女むすめを我われらにあたへ我われらの女むすめ汝なんぢらに娶めとれ 10 かくして汝等なんぢらわれらとともに居をるべし地ちは汝等なんぢらの前󠄃まへにあり此こゝに住󠄃すみて貿易あきなひをなし此こゝにて產業もちものを獲えよ 11 シケム又󠄂またデナの父󠄃ちゝと兄弟きやうだい等らにいひけるは我われをして汝等なんぢらの目めのまへに恩めぐみを獲えせしめよ汝なんぢらが我われにいふところの者ものは我われあたへん
 58㌻ 
12 いかに大おほいなる聘物おくりものと禮物れいもつを要󠄃もとむるも汝なんぢらがわれに言いふごとくあたへん唯たゞこの女むすめを我われにあたへて妻つまとなさしめよ 13 ヤコブの子等こらシケムとその父󠄃ちゝハモルに詭いつはりて答こたへたり即すなはちシケムがその妹いもうとデナを汚けがしたるによりて 14 彼等かれらこれに語かたりていひけるは我等われらこの事ことを爲なすあたはず割󠄅禮かつれいをうけざる者ものにわれらの妹いもうとをあたふるあたはず是これわれらの恥辱はぢなればなり 15 然されど斯かくせば我等われら汝なんぢらに允ゆるさん若もし汝なんぢらの中うちの男子をとこみな割󠄅禮かつれいをうけてわれらの如ごとくならば 16 我等われらの女子むすめを汝等なんぢらにあたへ汝なんぢらの女子むすめをわれらに娶めとり汝なんぢらと偕ともにをりて一ひとつの民たみとならん 17 汝等なんぢらもし我等われらに聽きかずして割󠄅禮かつれいをうけずば我等われら女子むすめをとりて去さるべしと

18 彼等かれらの言ことばハモルとハモルの子こシケムの心こゝろにかなへり 19 此この若わかき人ひとヤコブの女むすめを愛あいするによりて其その事ことをなすを遲󠄃おそくせざりき彼かれはその父󠄃ちゝの家いへの中うちにて最もつとも貴たふとばれたる者ものなり 20 ハモルとその子こシケム乃すなはちその邑まちの門もんにいたり邑まちの人々ひと〴〵に語かたりていひけるは 21 是この人々ひと〴〵は我等われらと睦むつまし彼等かれらをして此地このちに住󠄃すみて此こゝに貿易あきなひをなさしめよ地ちは廣ひろくして彼かれらを容いるるにたるなり我われら彼かれらの女むすめを妻つまにめとり我われらの女むすめをかれらに與あたへん 22 若もし唯たゞわれらの中うちの男子をとこみな彼かれらが割󠄅禮かつれいをうくるごとく割󠄅禮かつれいを受うけなば此この人々ひと〴〵われらに聽きゝて我等われらと偕ともにをり一ひとつの民たみとなるべし 23 然しからばかれらの家畜かちくと財產もちものと其その諸もろ〳〵の畜けものは我等われらが所󠄃有󠄃ものとなるにあらずや只たゞかれらに聽きかんしからば彼かれらわれらとともにをるべしと 24 邑まちの門もんに出で入いりする者ものみなハモルとその子こシケムに聽きゝしたがひ邑まちの門もんに出で入いりする男子をとこ皆みな割󠄅禮かつれいを受うけたり 25 斯かくて三日みつかにおよび彼等かれらその痛いたみをおぼゆる時ときヤコブの子こ二人ふたり即すなはちデナの兄弟きやうだいなるシメオンとレビ各おの〳〵劍かたなをとり往󠄃ゆきて思おもひよらざる時ときに邑まちを襲󠄂おそひ男子をとこを悉こと〴〵く殺ころし 26 利刃やいばをもてハモルとその子こシケムをころしシケムの家いへよりデナを携たづさへいでたり 27 而しかしてヤコブの子等こらゆきて其その殺ころされし者ものを剝はぎ其その邑まちをかすめたり是これ彼等かれらがその妹いもうとを汚けがしたるによりてなり
 59㌻ 
28 またその羊ひつじと牛うしと驢馬ろばおよびその邑まちにある者ものと野のにある者もの 29 並ならびにその諸もろ〳〵の貨財たからを奪うばひその子女こどもと妻つま等らを悉こと〴〵く擄とりこにし家いへの中うちなる物ものを悉こと〴〵く掠かすめたり〘46㌻〙 30 ヤコブ、シメオンとレビに言いひけるは汝等なんぢら我われを累わづらはし我われをして此この國くにの人ひと即すなはちカナン人びととペリジ人びとの中うちに避󠄃嫌󠄃いまれしむ我われは數󠄄かずすくなければ彼かれら集あつまりて我われをせめ我われをころさん然しからば我われとわが家いへ滅ほろぼさるべし 31 彼かれらいふ彼かれ豈あにわれらの妹いもうとを娼妓あそびめのごとくしてよからんや

第35章

1 茲こゝに神かみヤコブに言いひたまひけるは起󠄃たちてベテルにのぼりて彼處かしこに居をり汝なんぢが昔さきに兄あにエサウの面かほをさけて逃󠄄にぐる時ときに汝なんぢにあらはれし神かみに彼處かしこにて壇だんをきづけと 2 ヤコブ乃すなはちその家人いへのひとおよび凡すべて己おのれとともなる者ものにいふ汝等なんぢらの中うちにある異神ことなるかみを棄すて身みを淸きよめて衣服󠄃ころもを易かへよ 3 我等われら起󠄃たちてベテルにのぼらん彼處かしこにて我われわが苦患くるしみの日ひに我われに應こたへわが往󠄃ゆくところの途󠄃みちにて我われとともに在いませし神かみに壇だんをきづくべし 4 是こゝに於おいて彼等かれらその手てにある異神ことなるかみおよびその耳みゝにある耳みゝ環󠄃わを盡こと〴〵くヤコブに與あたへしかばヤコブこれをシケムの邊󠄎ほとりなる橡樹かしのきの下もとに埋うづめたり 5 斯かくて彼等かれらいでたちしが神かみ其その四周󠄃まはりの邑々まち〳〵をして懼おそれしめたまひければヤコブの子この後あとを追󠄃おふ者ものなかりき 6 ヤコブ及および之これと共ともなる諸すべての人ひと遂󠄅つひにカナンの地ちにあるルズに至いたる是これ即すなはちベテルなり 7 彼かれかしこに壇だんをきづき其處そのところをエルベテルと名なづけたり是こは兄あにの面かほをさけて逃󠄄にぐる時ときに神かみ此こゝにて己おのれにあらはれ給たまひしによりてなり 8 時ときにリベカの乳󠄃媼うばデボラ死しにたれば之これをベテルの下しもにて橡樹かしのきの下もとに葬はうむれり是これによりてその樹きの名なをアロンバクテ(哀哭なげきの橡かし)といふ

9 ヤコブ、パダンアラムより歸かへりし時とき神かみ復またこれにあらはれて之これを祝しゆくしたまふ 10 神かみかれに言いひたまはく汝なんぢの名なはヤコブといふ汝なんぢの名なは重かさねてヤコブとよぶべからずイスラエルを汝なんぢの名なとなすべしとその名なをイスラエルと稱󠄄よびたまふ 11 神かみまた彼かれにいひたまふ我われは全󠄃ぜん能のうの神かみなり生うめよ殖ふえよ國民たみおよび多おほくの國民たみ汝なんぢよりいで又󠄂また王等わうたちなんぢの腰󠄃こしよりいでん
 60㌻ 
12 わがアブラハムおよびイサクに與あたへし地ちは我われこれを汝なんぢにあたへん我われなんぢの後のちの子孫しそんにその地ちをあたふべしと 13 神かみかれと言ものいひたまひし處ところより彼かれをはなれて昇のぼりたまふ 14 是こゝに於おいてヤコブ神かみの己おのれと言ものいひたまひし處ところに柱󠄃はしらすなはち石いしの柱󠄃はしらを立たて其その上うへに酒さけを灌そゝぎまた其その上うへに膏あぶらを沃そゝげり 15 而しかしてヤコブ神かみの己おのれとものいひたまひし處ところの名なをベテルとなづけたり

16 かくてヤコブ等らベテルよりいでたちしがエフラタに至いたるまでは尙なほ路みちの隔󠄃へだゝりある處ところにてラケル產さんにのぞみその產さんおもかりき 17 彼かれ難なん產ざんにのぞめる時とき產婆とりあげをんな之これにいひけるは懼おそるるなかれ汝なんぢまた此この男をとこの子こを得えたり〘47㌻〙 18 彼かれ死しにのぞみてその魂たましひさらんとする時ときその子この名なをベノニ(吾わが苦痛くるしみの子こ)と呼よびたり然されど其その父󠄃ちゝこれをベニヤミン(右手みぎのての子こ)となづけたり 19 ラケル死しにてエフラタの途󠄃みちに葬はうむらる是これ即すなはちベテレヘムなり 20 ヤコブその墓はかに柱󠄃はしらを立たてたり是これはラケルの墓はかの柱󠄃はしらといひて今日こんにちまで在あり 21 イスラエル復またいでたちてエダルの塔たふの外さきにその天てん幕まくを張はれり 22 イスラエルかの地ちに住󠄃すめる時ときにルベン往󠄃ゆきて父󠄃ちゝの妾そばめビルハと寢いねたりイスラエルこれを聞きく    夫それヤコブの子こは十二人にんなり

23 即すなはちレアの子こはヤコブの長子ちやうしルベンおよびシメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルンなり 24 ラケルの子こはヨセフとベニヤミンなり 25 ラケルの仕女つかへめビルハの子こはダンとナフタリなり 26 レアの仕女つかへめジルパの子こはガドとアセルなり是等これらはヤコブの子こにしてパダンアラムにて彼かれに生うまれたる者ものなり 27 ヤコブ、キリアテアルバのマムレにゆきてその父󠄃ちゝイサクに至いたれり是これすなはちヘブロンなり彼處かしこはアブラハムとイサクの寄寓やどりしところなり
 61㌻ 

28 イサクの齡よはひは百八十歳さいなりき 29 イサク老おいて年とし滿みち氣息いきたえ死しにて其その民たみにくはゝれりその子こエサウとヤコブ之これをはうむる

第36章

1 エサウの傳でんはかくのごとしエサウはすなはちエドムなり 2 エサウ、カナンの女むすめの中うちより妻つまをめとれり即すなはちヘテ人びとエロンの女むすめアダおよびヒビ人びとヂベオンの女むすめなるアナの女むすめアホリバマ是これなり 3 又󠄂またイシマエルの女むすめネバヨテの妹いもうとバスマテをめとれり 4 アダはエリパズをエサウに生うみバスマテはリウエルを生うみ 5 アホリバマはヱウシ、ヤラムおよびコラを生うめり是等これらはエサウの子こにしてカナンの地ちに於おいて彼かれに生うまれたる者ものなり 6 エサウその妻つまと子むすこ女むすめおよびその家いへの諸すべての人ひと並ならびに家畜かちくと諸すべての畜類けものおよびそのカナンの地ちにて獲えたる諸もろ〳〵の物ものを挈󠄄たづさへて弟おとうとヤコブをはなれて他ほかの地ちにゆけり 7 其そは二人ふたりの富有󠄃もちもの多おほくして俱ともにをるあたはざればなり彼かれらが寄寓やどりしところの地ちはかれらの家畜かちくのためにかれらを容いるるをえざりき 8 是こゝに於おいてエサウ、セイル山やまに住󠄃すめりエサウはすなはちエドムなり

9 セイル山やまにをりしエドミ人びとの先祖せんぞエサウの傳でんはかくのごとし 10 エサウの子この名なは左さのごとしエサウの妻つまアダの子こはエリパズ、エサウの妻つまバスマテの子こはリウエル 11 エリパズの子こはテマン、オマル、ゼポ、ガタムおよびケナズなり〘48㌻〙 12 テムナはエサウの子こエリパズの妾めかけにしてアマレクをエリパズに生うめり是等これらはエサウの妻つまアダの子こなり 13 リウエルの子こは左さの如ごとしナハテ、ゼラ、シヤンマおよびミザ是等これらはエサウの妻つまバスマテの子こなり 14 ヂベオンの女むすめなるアナの女むすめにしてエサウの妻つまなるアホリバマの子こは左さのごとし彼かれヱウシ、ヤラムおよびコラをエサウに生うめり
 62㌻ 

15 エサウの子孫しそんの侯こうたる者ものは左さのごとしエサウの冡子うひごエリパズの子こにはテマン侯こうオマル侯こうゼボ侯こうケナズ侯こう 16 コラ侯こうガタム侯こうアマレク侯こう是等これらはエリパズよりいでたる侯こうにしてエドムの地ちにありき是等これらはアダの子こなり 17 エサウの子こリウエルの子こは左さのごとしナハテ侯こうゼラ侯こうシヤンマ侯こうミザ侯こう是等これらはリウエルよりいでたる侯こうにしてエドムの地ちにありき是等これらはエサウの妻つまバスマテの子こなり 18 エサウの妻つまアホリバマの子こは左さのごとしヱウシ侯こうヤラム侯こうコラ侯こう是等これらはアナの女むすめにしてエサウの妻つまなるアホリバマよりいでたる侯こうなり 19 是等これらはエサウすなはちエドムの子孫しそんにしてその侯こうたる者ものなり

20 素もとより此地このちに住󠄃すまひしホリ人びとセイルの子こは左さのごとしロタン、シヨバル 、ヂベオン、アナ 21 デシヨン、エゼル、デシヤン是等これらはセイルの子こホリ人びとの中うちの侯こうにしてエドムの地ちにあり 22 ロタンの子こはホリ、ヘマムなりロタンの妹いもうとはテムナ 23 シヨバルの子こは左さのごとしアルワン、マナハテ、エバル、シボ、オナム 24 ヂベオンの子こは左さのごとし即すなはちアヤとアナ此このアナその父󠄃ちゝヂベオンの驢馬ろばを牧かひをりし時とき曠野あらのにて溫泉おんせんを發見みいだせり 25 アナの子こは左さのごとしデシヨンおよびアホリバマ、アホリバマはアナの女むすめなり 26 デシヨンの子こは左さのごとしヘムダン、エシバン、イテラン、ケラン 27 エゼルの子こは左さのごとしビルハン、ザワン、ヤカン 28 デシヤンの子こは左さのごとしウヅ、アラン 29 ホリ人びとの侯こうたる者ものは左さのごとしロタン侯こうシヨバル侯こうヂベオン侯こうアナ侯こう 30 デシヨン侯こうエゼル侯こうデシヤン侯こう是等これらはホリ人びとの侯こうにしてその所󠄃領くににしたがひてセイルの地ちにあり

31 イスラエルの子孫ひと〴〵を治をさむる王わういまだあらざる前󠄃さきにエドムの地ちを治をさめたる王わうは左さのごとし 32 ベオルの子こベラ、エドムに王わうたりその都みやこの名なはデナバといふ 33 ベラ薨しにてボヅラのゼラの子こヨバブ之これにかはりて王わうとなる
 63㌻ 
34 ヨバブ薨しにてテマン人びとの地ちのホシヤムこれにかはりて王わうとなる 35 ホシヤム薨しにてベダデの子こハダデこれに代かはりて王わうとなる彼かれモアブの野のにてミデアン人びとを擊うちしことあり其その邑まちの名なはアビテといふ〘49㌻〙 36 ハダデ薨しにてマスレカのサムラこれにかはりて王わうとなる 37 サラム薨しにて河かはの旁ほとりなるレホボテのサウル之これにかはりて王わうとなる 38 サウル薨しにてアクボルの子こバアルハナンこれに代かはりて王わうとなる 39 アクボルの子こバアルハナン薨しにてハダル之これにかはりて王わうとなる其その都みやこの名なはパウといふその妻つまの名なはメヘタベルといひてマテレデの女むすめなりマテレデはメザハブの女むすめなり

40 エサウよりいでたる侯こうの名なはその宗族やからと居處ところと名なに循したがひていへば左さのごとしテムナ侯こうアルワ侯こうエテテ侯こう 41 アホリバマ侯こうエラ侯こうピノン侯こう 42 ケナズ侯こうテマン侯こうミブザル侯こう 43 マグデエル侯こうイラム侯こう是等これらはエドムの侯こうにして其その領地りやうちの居處すまひによりて言いへる者ものなりエドミ人びとの先祖せんぞはエサウ是これなり

第37章

1 ヤコブはカナンの地ちに住󠄃すめり即すなはちその父󠄃ちゝが寄寓やどりし地ちなり 2 ヤコブの傳でんは左さのごとしヨセフ十七歳さいにしてその兄弟きやうだいと偕ともに羊ひつじを牧かふヨセフは童子わらべにしてその父󠄃ちゝの妻つまビルハの子こおよびジルパの子こと侶ともたりしが彼等かれらの惡あしき事ことを父󠄃ちゝにつぐ 3 ヨセフは老年子としよりごなるが故ゆゑにイスラエルその諸すべての兄弟きやうだいよりも深ふかくこれを愛あいしこれがために綵いろどれる衣ころもを製つくれり 4 その兄弟きやうだい等ら父󠄃ちゝがその諸すべての兄弟きやうだいよりも深ふかく彼かれを愛あいするを見みて彼かれを惡にくみ穩和やはらかに彼かれにものいふことを得えせざりき

5 茲こゝにヨセフ夢ゆめをみてその兄弟きやうだいに吿つげければ彼等かれら愈󠄃いよ〳〵これを惡にくめり 6 ヨセフ彼等かれらにいひけるは請󠄃こふわが夢みたる此この夢ゆめを聽きけ 7 我等われら田はたけの中なかに禾束たばをむすび居ゐたるにわが禾束たばおき且かつ立たてり而しかして汝等なんぢらの禾束たば環󠄃めぐりたちてわが禾束たばを拜はいせり 8 その兄弟きやうだい等たち之これにいひけるは汝なんぢ眞󠄃まことにわれらの君きみとなるや眞󠄃まことに我等われらををさむるにいたるやとその夢ゆめとその言ことばのために益ます〳〵これを惡にくめり
 64㌻ 
9 ヨセフ又󠄂また一ひとつの夢ゆめをみて之これをその兄弟きやうだいに述󠄃のべていひけるは我われまた夢ゆめをみたるに日ひと月󠄃つきと十一の星ほしわれを拜はいせりと 10 則すなはちこれをその父󠄃ちゝと兄弟きやうだいに述󠄃のべければ父󠄃ちゝかれを戒いましめて彼かれにいふ汝なんぢが夢みしこの夢ゆめは何なにぞや我われと汝なんぢの母はゝとなんぢの兄弟きやうだいと實まことにゆきて地ちに鞠かゞみて汝なんぢを拜はいするにいたらんやと 11 斯かゝりしかばその兄弟きやうだいかれを嫉ねためり然されどその父󠄃ちゝはこの言ことばをおぼえたり

12 茲こゝにその兄弟きやうだい等らシケムにゆきて父󠄃ちゝの羊ひつじを牧かひゐたりしかば 13 イスラエル、ヨセフにいひけるは汝なんぢの兄弟きやうだいはシケムにて羊ひつじを牧かひをるにあらずや來きたれ汝なんぢを彼等かれらにつかはさんヨセフ父󠄃ちゝにいふ我われこゝにあり 14 父󠄃ちゝかれにいひけるは請󠄃こふ往󠄃ゆきて汝なんぢの兄弟きやうだいと群むれの恙つゝがなきや否いなを見みてかへりて我われにつげよと彼かれをヘブロンの谷たにより遣󠄃つかはしければ遂󠄅つひにシケムに至いたる。〘50㌻〙 15 或ある人ひとかれに遇󠄃あふに彼かれ野のにさまよひをりしかば其人そのひとかれに問とふて汝なんぢ何なにをたづぬるやといひければ 16 彼かれいふ我われはわが兄弟きやうだい等たちをたづぬ請󠄃こふかれらが羊ひつじをかひをる所󠄃ところをわれに吿つげよ 17 その人ひといひけるは彼等かれらは此こゝをされり我われかれらがドタンにゆかんといふを聞きゝたりと是こゝに於おいてヨセフその兄弟きやうだいの後あとをおひゆきドタンにて之これに遇󠄃あふ

18 ヨセフの彼等かれらに近󠄃ちかづかざる前󠄃まへに彼かれら之これを遙はるかに見みてこれを殺ころさんと謀はかり 19 互たがひにいひけるは視みよ作夢者ゆめみるものきたる 20 去來いざ彼かれをころして阱あなに投なげいれ或ある惡あしき獸けものこれを食󠄃くらひたりと言いはん而しかして彼かれの夢ゆめの如何いかになるかを觀みるべし 21 ルベン聞きゝてヨセフを彼等かれらの手てより拯すくひださんとして言いひけるは我等われらこれを殺ころすべからず 22 ルベンまた彼かれらにいひけるは血ちをながすなかれ之これを曠野あれのの此この阱あなに投なげいれて手てをこれにつくるなかれと是こは之これを彼等かれらの手てよりすくひだして父󠄃ちゝに歸かへさんとてなりき 23 茲こゝにヨセフ兄弟きやうだいの許もとに到いたりければ彼等かれらヨセフの衣ころも即すなはちその着きたる綵いろどれる衣ころもを褫󠄃はぎ 24 彼かれを執とらへて阱あなに投なげいれたり阱あなは空󠄃からにしてその中なかに水みづあらざりき
 65㌻ 

25 斯かくして彼等かれら坐すわりてパンを食󠄃くらひ目めをあげて見みしに一群ひとくみのイシマエル人びと駱駝らくだに香物かうもつと乳󠄃香にうかうと沒藥もつやくをおはせてエジプトにくだりゆかんとてギレアデより來きたる 26 ユダその兄弟きやうだいにいひけるは我儕われら弟おとうとをころしてその血ちを匿かくすも何なにの益えきかあらん 27 去來いざ彼かれをイシマエル人びとに賣うらん彼かれは我等われらの兄弟きやうだいわれらの肉󠄁にくなればわれらの手てをかれにつくべからずと兄弟きやうだい等らこれを善よしとす 28 時ときにミデアンの商旅󠄃あきうど經過󠄃とほりければヨセフを阱あなよりひきあげ銀ぎん二十枚まいにてヨセフをイシマエル人びとに賣うれり彼等かれらすなはちヨセフをエジプトにたづさへゆきぬ

29 茲こゝにルベンかへりて阱あなにいたり見みしにヨセフ阱あなにをらざりしかばその衣ころもを裂さき 30 兄弟きやうだいの許もとにかへりて言いふ童子わらべはをらず嗚呼あゝ我われ何處いづくにゆくべきや 31 斯かくて彼等かれらヨセフの衣ころもをとり牡山羊をやぎの羔こをころしてその衣ころもを血ちに濡ぬらし 32 その綵いろどれる衣ころもを父󠄃ちゝにおくり遣󠄃つかはしていひけるは我等われらこれを得えたりなんぢの子この衣ころもなるや否いなやを知しれと 33 父󠄃ちちこれを知しりていふわが子この衣ころもなり惡あしき獸けもの彼かれをくらへりヨセフはかならずさかれしならんと 34 ヤコブその衣ころもを裂さき麻󠄃布あさぬのを腰󠄃こしにまとひ久ひさしくその子このためになげけり 35 その子むすこ女むすめみな起󠄃たちてかれを慰なぐさむれどもその慰籍󠄃なぐさめをうけずして我われは哀なげきつゝ陰府よみにくだりて我わが子このもとにゆかんといふ斯かくその父󠄃ちちかれのために哭なきぬ〘51㌻〙 36 偖さてミデアン人びとはエジプトにてパロの侍衛󠄅ぢゑいの長かしらポテパルにヨセフを賣うれり

第38章

1 當時そのころユダ兄弟きやうだいをはなれて下くだりアドラム人びと名なはヒラといふ者ものの近󠄃邊󠄎ほとりに天てん幕まくをはりしが 2 ユダかしこにてカナン人びと名なはシュアといふ者ものの女子むすめを見みこれを娶めとりてその所󠄃ところにいる 3 彼かれはらみて男子なんしを生うみければユダその名なをエルとなづく 4 彼かれふたたび孕はらみて男子なんしを生うみその名なをオナンとなづけ 5 またかさねて孕はらみて男子なんしを生うみてその名なをシラとなづく此この子こをうみける時ときユダはクジブにありき 6 ユダその長子ちやうしエルのために妻つまをむかふその名なをタマルといふ
 66㌻ 
7 ユダの長子ちやうしエル、ヱホバの前󠄃まへに惡あくをなしたればヱホバこれを死しなしめたまふ 8 茲こゝにユダ、オナンにいひけるは汝なんぢの兄あにの妻つまの所󠄃ところにいりて之これをめとり汝なんぢの兄あにをして子たねをえせしめよ 9 オナンその子たねの己おのれのものとならざるを知しりたれば兄あにの妻つまの所󠄃ところにいりし時とき兄あにに子こをえせしめざらんために地ちに洩もらしたり 10 斯かくなせし事ことヱホバの目めに惡あしかりければヱホバ彼かれをも死しなしめたまふ 11 ユダその媳よめタマルにいひけるは嫠婦󠄃やもめとなりて汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへにをりわが子こシラの人ひととなるを待まてと恐おそらくはシラも亦またその兄弟きやうだいのごとく死しぬるならんとおもひたればなりタマルすなはち往󠄃ゆきてその父󠄃ちゝの家いへにをる

12 日ひかさなりて後のちシュアの女むすめユダの妻つま死しにたりユダ慰なぐさめをいれてその友ともアドラム人びとヒラとともにテムナにのぼりその羊毛ひつじのけを剪きる者ものの所󠄃ところにいたる 13 茲こゝにタマルにつげて視みよなんぢの舅しうとはその羊ひつじの毛けを剪きらんとてテムナにのぼるといふ者ものありしかば 14 彼かれその嫠やもめの服󠄃ころもを脫ぬぎすて被衣かつぎをもて身みをおほひつゝみテムナの途󠄃みちの側かたはらにあるエナイムの入いり口くちに坐ざす其そはシラ人びととなりたれども己おのれこれが妻つまにせられざるを見みたればなり 15 彼かれその面かほを蔽おほひゐたりしかばユダこれを見みて娼妓あそびめならんとおもひ 16 途󠄃みちの側かたはらにて彼かれに就つき請󠄃こふ來きたりて我われをして汝なんぢの所󠄃ところにいらしめよといふ其そはその子この妻つまなるをしらざればなり彼かれいひけるは汝なんぢ何なにを我われにあたへてわが所󠄃ところにいらんとするや 17 ユダいひけるは我われ群むれより山羊やぎの羔こをおくらん彼かれいふ汝なんぢ其それをおくるまで質しるしをあたへんか 18 ユダ何なにの質しるしをなんぢに與あたふべきやといふに彼かれ汝なんぢの印いんと綬ひもと汝なんぢの手ての杖つゑをといひければ即すなはちこれを與あたへて彼かれの所󠄃ところにいりぬ彼かれユダに由よりて姙はらめり 19 彼かれ起󠄃たちて去さりその被衣かつぎをぬぎすて嫠婦󠄃やもめの服󠄃ころもをまとふ 20 かくてユダ婦󠄃をんなの手てより質しるしをとらんとてその友ともアドラム人びとの手てに托たくして山羊やぎの羔こをおくりけるが彼かれ婦󠄃をんなを見みざれば〘52㌻〙
 67㌻ 
21 その處ところの人ひとに問とふて途󠄃みちの側かたはらなるエナイムの娼妓あそびめは何處いづこにをるやといふに此こゝには娼妓あそびめなしといひければ 22 ユダの許もとにかへりていふ我われ彼かれを見みいださず亦またその處ところの人ひと此こゝには娼妓あそびめなしといへりと 23 ユダいひけるは彼かれにとらせおけ恐おそらくはわれら笑抦ものわらひとならん我われこの山羊やぎの羔こをおくりたるに汝なんぢかれを見みざるなりと

24 三月󠄃みつきばかりありて後のちユダに吿つぐる者ものありていふ汝なんぢの媳よめタマル姦淫かんいんをなせり亦またその姦淫かんいんによりて妊はらめりユダいひけるは彼かれを曳ひきいだして焚やくべし 25 彼かれひきいだされし時ときその舅しうとにいひつかはしけるは是これをもてる人ひとによりて我われは妊はらめりと彼かれすなはち請󠄃こふこの印いんと綬ひもと杖つゑは誰たれの所󠄃屬ものなるかを辨別みわけよといふ 26 ユダこれを見識みしりていひけるは彼かれは我われよりも正たゞしわれ彼かれをわが子こわがシラにあたへざりしによりてなりと再ふたゝびこれを知しらざりき 27 かくて產さんの時ときにいたりて見みるにその胎はらに孿ふたごあり 28 その產うむ時とき手て出いでしかば產婆とりあげをんな是これ首さきにいづといひて綘あかき線いとをとりてその手てにしばりしが 29 手てを引ひきこむるにあたりて兄弟きやうだいいでたれば汝なんぢなんぞ坼やぶりいづるやその坼やぶり汝なんぢに歸きせんといへり故ゆゑにその名なはペレヅ(坼やぶり)と稱󠄄よばる 30 その兄弟きやうだい手てに綘線あかいとのある者もの後のちにいづその名なはゼラとよばる

第39章

1 ヨセフ挈󠄄たづさへられてエジプトにくだりしがエジプト人びとポテパル、パロの臣しん侍衛󠄅ぢゑいの長かしらなる者もの彼かれを其處そこにたづさへくだれるイシマエル人びとの手てよりこれを買かふ 2 ヱホバ、ヨセフとともに在います彼かれ享通󠄃者さかゆるものとなりてその主人しゆじんなるエジプト人びとの家いへにをる 3 その主人しゆじんヱホバの彼かれとともにいますを見みまたヱホバがかれの手ての凡すべてなすところを享通󠄃さかえしめたまふを見みたり 4 是これによりてヨセフかれの心こゝろにかなひて其その近󠄃侍そばづかへとなる彼かれヨセフにその家いへを宰つかさどらしめその所󠄃有󠄃もてるものを盡こと〴〵くその手てに委ゆだねたり 5 彼かれヨセフにその家いへとその有󠄃もてる凡すべての物ものをつかさどらせし時ときよりしてヱホバ、ヨセフのために其そのエジプト人びとの家いへを祝めぐみたまふ即すなはちヱホバの祝福めぐみかれが家いへと田はたけに有󠄃もてる凡すべての物ものにおよぶ
 68㌻ 
6 彼かれその有󠄃もてる物ものをことごとくヨセフの手てにゆだねその食󠄃くらふパンの外ほかは何なにもかへりみざりき夫それヨセフは容貌かたち麗󠄃うるはしくして顏かほ美うつくしかりき

7 これらの事ことの後のちその主人しゆじんの妻つまヨセフに目めをつけて我われと寢いねよといふ 8 ヨセフ拒󠄃いなみて主人しゆじんの妻つまにいひけるは視みよわが主人しゆじんの家いへの中うちの物ものをかへりみずその有󠄃もてるものことごとくわが手てに委ゆだぬ 9 この家いへには我われより大おほいなるものなし又󠄂また主人しゆじん何なにをも我われに禁きんぜず只たゞ汝なんぢを除のぞくのみ汝なんぢはその妻つまなればなり然されば我われいかで此このおほいなる惡あくをなして神かみに罪つみををかすをえんや〘53㌻〙 10 彼かれ日々ひゞにヨセフに言いひよりたれどもヨセフきかずして之これといねず亦また與ともにをらざりき 11 當時そのころヨセフその職つとめをなさんとて家いへにいりしが家いへの人ひと一箇ひとりもその內うちにをらざりき 12 時ときに彼かの婦󠄃をんなその衣ころもを執とらへて我われといねよといひければヨセフ衣ころもを彼かれの手てに棄すておきて外そとに遁󠄅にげいでたり 13 彼かれヨセフがその衣ころもを己おのれの手てに棄すておきて遁󠄅にげいでしを見みて 14 その家いへの人々ひと〴〵を呼よびてこれにいふ視みよヘブル人びとを我等われらの所󠄃ところにつれ來きたりて我等われらにたはむれしむ彼かれ我われといねんとて我われの所󠄃ところにいり來きたりしかば我われ大おほ聲ごゑによばはれり 15 彼かれわが聲こゑをあげて呼よばはるを聞きゝしかばその衣ころもをわが許もとにすておきて外そとに遁󠄅にげいでたりと 16 其その衣ころもを傍かたはらに置おきて主人しゆじんの家いへに歸かへるを待まつ 17 かくて彼かれ是この言ことばのごとく主人しゆじんにつげていふ汝なんぢが我われらに携たづさへきたりしヘブルの僕しもべわれにたはむれんとて我わが許もとにいりきたりしが 18 我われ聲こゑをあげてよばはりしかばその衣ころもを我わが許もとにすておきて遁󠄅にげいでたり

19 主人しゆじんその妻つまが己おのれにつげて汝なんぢの僕しもべ斯かくのごとく我われになせりといふ言ことばを聞きゝて怒いかりを發はつせり 20 是ここに於おいてヨセフの主人しゆじん彼かれを執とらへて獄ひとやにいる其その獄ひとやは王わうの囚徒めしうどを繋つなぐ所󠄃ところなりヨセフ彼處かしこにて獄ひとやにをりしが 21 ヱホバ、ヨセフとともに在いまして之これに仁慈あはれみを加くはへ典獄ひとやをさの恩顧󠄃めぐみをこれにえさせたまひければ
 69㌻ 
22 典獄ひとやをさ獄ひとやにある囚人めしうどをことごとくヨセフの手てに付まかせたり其處そこになす所󠄃ところの事ことは皆みなヨセフこれをなすなり 23 典獄ひとやをさそのまかせたる所󠄃ところの事ことは何なにをもかへりみざりき其そはヱホバ、ヨセフとともにいませばなりヱホバかれのなすところをさかえしめたまふ

第40章

1 これらの事ことの後のちエジプト王わうの酒人さかびとと膳夫かしはでその主しゆエジプト王わうに罪つみををかす 2 パロその二人ふたりの臣しんすなはち酒人さかびとの長かしらと膳夫かしはでの長かしらを怒いかりて 3 之これを侍衛󠄅じゑいの長かしらの家いへの中うちなる獄ひとやに幽囚とらふヨセフが繋つながれをる所󠄃ところなり 4 侍衛󠄅じゑいの長かしらヨセフをして彼等かれらの側そばに侍はべらしめたればヨセフ之これにつかふ彼等かれら幽囚とらはれて日ひを經へたり 5 茲ここに獄ひとやに繋つながれたるエジプト王わうの酒人さかびとと膳夫かしはでの二人ふたりともに一夜ひとよの中うちに各おの〳〵夢ゆめを見みたりその夢ゆめはおのおのその解明ときあかしにかなふ 6 ヨセフ朝󠄃あさに及およびて彼等かれらの所󠄃ところに入いりて視みるに彼等かれら物憂ものうげに見みゆ 7 是こゝに於おいてヨセフその主人しゆじんの家いへに己おのれとともに幽囚とらはれをるパロの臣しんに問とふて汝等なんぢらなにゆゑに今日けふは顏かほ色いろあしきやといふに 8 彼等かれらこれにいふ我等われら夢ゆめを見みたれど之これを解とく者ものなしとヨセフ彼等かれらにいひけるは解とく事ことは神かみによるにあらずや請󠄃こふ我われに述󠄃のべよ〘54㌻〙

9 酒人さかびとの長かしらその夢ゆめをヨセフに述󠄃のべて之これにいふ我われ夢ゆめの中うちに見みしにわが前󠄃まへに一ひとつの葡萄樹ぶだうづるあり 10 その樹つるに三みつの枝えだあり芽めいで花はなひらきて葡萄ぶだうなり球ふさをなして熟うみたるがごとくなりき 11 時ときにパロの爵󠄄さかづきわが手てにあり我われ葡萄ぶだうを摘とりてこれをパロの爵󠄄さかづきに搾しぼりその爵󠄄さかづきをパロの手てに奉さゝげたり 12 ヨセフ彼かれにいひけるはその解明ときあかしは是かくのごとし三みつの枝えだは三日みつかなり 13 今いまより三日みつかの中うちにパロなんぢの首かうべを擧あげ汝なんぢを故もとの所󠄃ところにかへさん汝なんぢは曩さきに酒人さかびとたりし時ときになせし如ごとくパロの爵󠄄さかづきをその手てに奉さゝぐるにいたらん 14 然されば請󠄃こふ汝なんぢ善よくならん時ときに我われをおもひて我われに恩惠めぐみをほどこし吾わが事ことをパロにのべてこの家いへよりわれを出いだせ 15 我われはまことにヘブル人びとの地ちより掠さらはれ來きしものなればなりまた此ここにても我われは牢らうにいれらるるがごとき事ことはなさざりしなり
 70㌻ 

16 茲こゝに膳夫かしはでの長かしらその解明ときあかしの善よかりしを見みてヨセフにいふ我われも夢ゆめを得えて見みたるに白しろきパン三筐みかごわが首かしらにありて 17 その上うへの筐かごには膳夫かしはでがパロのために作つくりたる各種さま〴〵の饌くひものありしが鳥とりわが首かしらの筐かごの中うちより之これをくらへり 18 ヨセフこたへていひけるはその解明ときあかしはかくのごとし三みつの筐かごは三日みつかなり 19 今いまより三日みつかの中うちにパロ汝なんぢの首かうべを擧あげはなして汝なんぢを木きに懸かけんしかして鳥とり汝なんぢの肉󠄁にくをくらひとるべしと 20 第三日みつかめはパロの誕󠄅辰うまれびなればパロその諸すべての臣僕けらいに筵席ふるまひをなし酒人さかびとの長かしらと膳夫かしはでの長かしらをして首かうべをその臣僕けらいの中うちに擧もたげしむ 21 即すなはちパロ酒人さかびとの長かしらをその職つとめにかへしければ彼かれ爵󠄄さかづきをパロの手てに奉さゝげたり 22 されど膳夫かしはでの長かしらは木きに懸かけらるヨセフの彼等かれらに解明ときあかせるがごとし 23 然しかるに酒人さかびとの長かしらヨセフをおぼえずして之これを忘󠄃わすれたり

第41章

1 二に年ねんの後のちパロ夢ゆめみることあり即すなはち河かはの濱ほとりにたちて 2 視みるに七なゝつの美うるはしき肥こえたる牝め牛うし河かはよりのぼりて葦あしを食󠄃くらふ 3 その後のちまた七なゝつの醜みにくき痩やせたる牛うし河かはよりのぼり河かはの畔󠄃ふちにて彼かの牛うしの側そばにたちしが 4 その醜みにくき痩やせたる牛うしかの美うるはしき肥こえたる七なゝつの牛うしを食󠄃くらひつくせりパロ是こゝにいたりて寤めさむ 5 彼かれまた寢ねむりて再ふたゝび夢ゆめみるに一ひとつの莖くきに七なゝつの肥こえたる佳よき穗ほいできたる 6 其そののちに又󠄂またしなびて東風こちに燒やけたる七なゝつの穗ほいできたりしが 7 その七なゝつのしなびたる穗ほかの七なゝつの肥こえ實みのりたる穗ほを呑盡のみつくせりパロ寤めさめて見みるに夢ゆめなりき 8 パロ朝󠄃あさにおよびてその心安こころやすからず人ひとをつかはしてエジプトの法術󠄃士はふじゆつしとその博󠄄士はかせを皆みなことごとく召めし之これにその夢ゆめを述󠄃のべたり然されど之これをパロに解ときうる者ものなかりき〘55㌻〙

9 時ときに酒人さかびとの長かしらパロに吿つげていふ我われ今日けふわが過󠄃あやまちをおもひいづ 10 甞かつてパロその僕しもべを怒いかりて我われと膳夫かしはでの長かしらを侍衛󠄅じゑいの長かしらの家いへに幽囚とらへたまひし時とき 11 我われと彼かれともに一夜ひとよのうちに夢ゆめみ各おの〳〵その解明ときあかしにかなふ夢ゆめをみたりしが 12 彼處かしこに侍衛󠄅じゑいの長かしらの僕しもべなる若わかきヘブル人びと我われらと偕ともにあり我等われらこれにのべたれば彼かれわれらの夢ゆめを解ときその夢ゆめにしたがひて各人おの〳〵に解明ときあかしをなせり
 71㌻ 
13 しかして其その事ことかれが解ときたるごとくなりて我われはわが職つとめにかへり彼かれは木きに懸かけらる

14 是こゝに於おいてパロ人ひとをやりてヨセフを召めしければ急󠄃いそぎてこれを獄ひとやより出いだせりヨセフすなはち髭ひげを薙そり衣ころもをかへてパロの許もとにいり來きたる 15 パロ、ヨセフにいひけるは我われ夢ゆめをみたれど之これをとく者ものなし聞きくに汝なんぢは夢ゆめをきゝて之これを解とくことをうると云いふ 16 ヨセフ、パロにこたへていひけるは我われによるにあらず神かみパロの平󠄃安へいあんを吿つげたまはん 17 パロ、ヨセフにいふ我われ夢ゆめに河かはの岸きしにたちて見みるに 18 河かはより七なゝつの肥こえたる美うるはしき牝め牛うしのぼりて葦あしを食󠄃くらふ 19 後のちまた弱󠄃よわく甚はなはだ醜みにくき瘠やせたる七なゝつの牝め牛うしのぼりきたる其その惡あしき事ことエジプト全󠄃國ぜんこくにわが未いまだ見みざるほどなり 20 その瘠やせたる醜みにくき牛うし初さきの七なゝつの肥こえたる牛うしを食󠄃くらひつくしたりしが 21 已すでに腹はらにいりても其その腹はらにいりし事ことしれず尙なほ前󠄃さきのごとく醜みにくかりき我われ是ここにいたりて寤めさめたり 22 我われまた夢ゆめに見みるに七なゝつの實みのりたる佳よき穗ほ一ひとつの莖くきにいできたる 23 その後のちにまたいぢけ萎しなびて東風こちにやけたる七なゝつの穗ほ生しやうじたりしが 24 そのしなびたる穗ほかの七なゝつの佳よき穗ほを呑のみつくせり我われこれを法術󠄃士はふじゆつしに吿つげたれどもわれにこれをしめすものなし

25 ヨセフ、パロにいひけるはパロの夢ゆめは一ひとつなり神かみその爲なさんとする所󠄃ところをパロに示しめしたまへるなり 26 七なゝつの美よき牝め牛うしは七年ねん七なゝつの佳よき穗ほも七年ねんにして夢ゆめは一ひとつなり 27 其その後のちにのぼりし七なゝつの瘠やせたる醜みにくき牛うしは七年ねんにしてその東風こちにやけたる七なゝつの空󠄃穗しひなほは七年ねんの饑󠄃饉ききんなり 28 是これはわがパロに申まうすところなり神かみそのなさんとするところをパロにしめしたまふ 29 エジプトの全󠄃地ぜんちに七年ねんの大おほいなる豐ほう年ねんあるべし 30 その後のちに七年ねんの凶きやう年ねんおこらん而しかしてエジプトの地ちにありし豐ほう作さくを皆みな忘󠄃わするるにいたるべし饑󠄃饉ききん國くにを滅ほろぼさん 31 後のちにいたるその饑󠄃饉ききんはなはだはげしきにより前󠄃さきの豐ほう作さく國くにの中うちに知しれざるにいたらん
 72㌻ 
32 パロのふたゝび夢ゆめをかさね見みたまひしは神かみがこの事ことをさだめて速󠄃すみやかに之これをなさんとしたまふなり〘56㌻〙 33 さればパロ慧󠄄さとく賢かしこき人ひとをえらみて之これにエジプトの國くにを治をさめしめたまふべし 34 パロこれをなし國こく中ちうに官吏󠄄くわんりを置おきてその七年ねんの豐ほう年ねんの中うちにエジプトの國くにの五ご分󠄃ぶんの一いちを取とりたまふべし 35 而しかして其その官吏󠄄くわんりをして來きたらんとするその善よき年としの諸すべての糧りやう食󠄃しよくを斂あつめてその穀物こくもつをパロの手てに蓄たくはへしめ糧りやう食󠄃しよくを邑々まち〳〵にかこはしめたまふべし 36 その糧りやう食󠄃しよくを國くにのために畜藏たくはへおきてエジプトの國くににのぞむ七年ねんの饑󠄃饉ききんに備そなへ國くにをして饑󠄃饉ききんのために滅ほろびざらしむべし

37 パロとその諸すべての臣僕けらい此事このことを善よしとす 38 是ここに於おいてパロその臣僕けらいにいふ我等われら神かみの靈みたまのやどれる是かくのごとき人ひとを看みいだすをえんやと 39 しかしてパロ、ヨセフにいひけるは神かみ是これを盡こと〴〵く汝なんぢにしめしたまひたれば汝なんぢのごとく慧󠄄さとく賢かしこき者ものなかるべし 40 汝なんぢわが家いへを宰つかさどるべしわが民たみみな汝なんぢの口くちにしたがはん唯たゞ位くらゐにおいてのみ我われは汝なんぢより大おほいなるべし 41 パロ、ヨセフにいひけるは視みよ我われ汝なんぢをエジプト全󠄃國ぜんこくの冢󠄄宰つかさとなすと 42 パロすなはち指環󠄃ゆびわをその手てより脫はづして之これをヨセフの手てにはめ之これを白しろ布ぬのを衣きせ金かねの索くさりをその項くびにかけ 43 之これをして己おのれのもてる次󠄄つぎの輅くるまに乘のらしめ下したにゐよと其その前󠄃まへに呼よばしむ是かく彼かれをエジプト全󠄃國ぜんこくの冢󠄄宰つかさとなせり 44 パロ、ヨセフにいひけるは我われはパロなりエジプト全󠄃國ぜんこくに汝なんぢの允准ゆるしをえずして手て足あしをあぐる者ものなかるべしと 45 パロ、ヨセフの名なをザフナテパネアと名なづけまたオンの祭司さいしポテパルの女むすめアセナテを之これにあたへて妻つまとなさしむヨセフいでてエジプトの地ちをめぐる

46 ヨセフはエジプトの王わうパロのまへに立たちし時とき三十歳さいなりきヨセフ、パロのまへを出いでて遍󠄃あまねくエジプトの地ちを巡󠄃めぐれり 47 七年ねんの豐ほう年ねんの中うちに地ち山やまなして物ものを生しやうず 48 ヨセフすなはちエジプトの地ちにありしその七年ねんの糧りやう食󠄃しよくを斂あつめてその糧りやう食󠄃しよくを邑々まち〳〵に藏をさむ即すなはち邑まちの周󠄃圍󠄃まはりの田圃たはたの糧りやう食󠄃しよくを其その邑まちの中うちに藏をさむ
 73㌻ 
49 ヨセフ海隅はまの沙いさごのごとく甚はなはだ多おほく穀物こくもつを儲たくはへ遂󠄅つひに數󠄄かぞふることをやむるに至いたる其そは數󠄄かずかぎり無なければなり 50 饑󠄃饉ききんの歳としのいたらざる前󠄃まへにヨセフに二人ふたりの子こうまる是これはオンの祭司さいしポテパルの女むすめアセナテの生うみたる者ものなり 51 ヨセフその冡子うひごの名なをマナセ(忘󠄃わすれ)となづけて言いふ神かみ我われをしてわが諸もろ〳〵の苦難くるしみとわが父󠄃ちゝの家いへの凡すべての事ことをわすれしめたまふと 52 又󠄂また次󠄄つぎの子この名なをエフライム(多おほく生うまる)となづけていふ神かみわれをしてわが艱難なやみの地ちにて多おほくの子こをえせしめたまふと 53 爰こゝにエジプトの國くにの七年ねんの豐ほう年ねんをはり〘57㌻〙 54 ヨセフの言いひしごとく七年ねんの凶きやう年ねんきたりはじむその饑󠄃饉ききんは諸もろ〳〵の國くににあり然されどエジプト全󠄃國ぜんこくには食󠄃物しよくもつありき 55 エジプト全󠄃國ぜんこく饑󠄃うゑし時とき民たみさけびてパロに食󠄃物しよくもつを乞こふパロ、エジプトの諸すべての人ひとにいひけるはヨセフに往󠄃ゆけ彼かれが汝等なんぢらにいふところをなせと 56 饑󠄃饉ききん全󠄃地ぜんちの面おもてにありヨセフすなはち諸もろ〳〵の倉廩くらをひらきてエジプト人びとに賣うりわたせり饑󠄃饉ききんますますエジプトの國くににはげしくなる 57 饑󠄃饉ききん諸もろ〳〵の國くににはげしくなりしかば諸國くに〴〵の人ひとエジプトにきたりヨセフにいたりて穀物こくもつを買かふ

第42章

1 ヤコブ、エジプトに穀物こくもつあるを見みしかばその子等こらにいひけるは汝等なんぢらなんぞたがひに面かほを見みあはするや 2 ヤコブまたいふ我われエジプトに穀物こくもつありと聞きけり彼處かしこにくだりて彼處かしこより我等われらのために買かひきたれ然しからばわれら生いくるを得えて死しをまぬかれんと 3 ヨセフの十人にんの兄弟きやうだいエジプトにて穀物こくもつをかはんとて下くだりゆけり 4 されどヨセフの弟おとうとベニヤミンはヤコブこれをその兄弟きやうだいとともに遣󠄃つかはさざりきおそらくは災難わざはひかれの身みにのぞむことあらんと思おもひたればなり 5 イスラエルの子等こら穀物こくもつを買かはんとて來きたれる者ものとともに來きたる其そはカナンの地ちに饑󠄃饉ききんありたればなり 6 時ときにヨセフは國くにの總󠄂督つかさにして國くにの凡すべての人ひとに賣うることをなせりヨセフの兄弟きやうだい等ら來きたりてその前󠄃まへに地ちに伏ふして拜はいす
 74㌻ 
7 ヨセフその兄弟きやうだいを見みてこれを知しりたれども知しらざる者もののごとくして荒々あら〳〵しく之これにものいふ即すなはち彼等かれらに汝等なんぢらは何處いづくより來きたれるやといへば彼等かれらいふ糧りやう食󠄃しよくを買かはんためにカナンの地ちより來きたれりと 8 ヨセフはその兄弟きやうだいをしりたれども彼等かれらはヨセフをしらざりき 9 ヨセフその昔さきに彼等かれらの事ことを夢ゆめみたる夢ゆめを憶おもひいだし彼等かれらに言いひけるは汝等なんぢらは間者かんじやにして此この國くにの𨻶すきを窺うかゞはんとて來きたれるなり 10 彼等かれら之これにいひけるはわが主しゆよ然しからず唯ただ糧りやう食󠄃しよくをかはんとて僕しもべ等らは來きたれるなり 11 我等われらはみな一箇ひとりの人ひとの子こにして篤實まことなる者ものなり僕しもべ等らは間者かんじやにあらず 12 ヨセフ彼等かれらにいひけるは否いな汝等なんぢらは此地このくにの𨻶すきを窺うかゞはんとて來きたれるなり 13 彼等かれらいひけるは僕しもべ等らは十二人にんの兄弟きやうだいにしてカナンの地ちの一箇ひとりの人ひとの子こなり季子すゑのこは今日けふ父󠄃ちゝとともにをる又󠄂また一人ひとりはをらずなりぬ 14 ヨセフかれらにいひけるはわが汝等なんぢらにつげて汝等なんぢらは間者かんじやなりといひしはこの事ことなり 15 汝等なんぢら斯かくしてその眞󠄃實まことをあかすべしパロの生命いのちをさして誓ちかふ汝等なんぢらの末弟すゑのおとうとここに來きたるにあらざれば汝等なんぢらは此こゝをいづるをえじ 16 汝等なんぢらの一人ひとりをやりて汝等なんぢらの弟おとうとをつれきたらしめよ汝等なんぢらをば繋つなぎおきて汝等なんぢらの言ことばをためし汝なんぢらの中うちに眞󠄃實まことあるや否いなやをみんパロの生命いのちをさして誓ちかふ汝等なんぢらはかならず間者かんじやなりと〘58㌻〙 17 彼等かれらを皆みなともに三日みつかのあひだ幽囚とらへおけり

18 三日みつかにおよびてヨセフかれらにいひけるは我われ神かみを畏おそる汝等なんぢら是かくなして生命いのちをえよ 19 汝等なんぢらもし篤實まことなる者ものならば汝なんぢらの兄弟きやうだいの一人ひとりをしてこの獄ひとやに繋つながれしめ汝等なんぢらは穀物こくもつをたづさへゆきてなんぢらの家々いへ〳〵の饑󠄃うゑをすくへ 20 但たゞし汝なんぢらの末弟すゑのおとうとを我われにつれきたるべしさすればなんぢらの言ことばの眞󠄃實まことあらはれて汝等なんぢら死しをまぬかるべし彼等かれらすなはち斯かくなせり 21 茲こゝに彼かれらたがひに言いひけるは我等われらは弟おとうとの事ことによりて信まことに罪つみあり彼等かれらは彼かれが我われらに只管ひたすらにねがひし時ときにその心こゝろの苦くるしみを見みながら之これを聽きかざりき故ゆゑにこの苦くるしみわれらにのぞめるなり 22 ルベンかれらに對こたへていひけるは我われなんぢらにいひて童子わらべに罪つみををかすなかれといひしにあらずや然しかるに汝等なんぢらきかざりき是故このゆえに視みよ亦また彼かれの血ちをながせし罪つみをたゞさると
 75㌻ 
23 彼等かれらはヨセフが之これを解げするをしらざりき其そは互たがひに通󠄃辨つうべんをもちひたればなり 24 ヨセフ彼等かれらを離はなれゆきて哭なき復またかれらにかへりて之これとかたり遂󠄅つひにシメオンを彼かれらの中うちより取とりその目めのまへにて之これを縛󠄃しばれり 25 而しかしてヨセフ命めいじてその器うつはに穀物こくもつをみたしめ其その人々ひと〴〵の金かねを嚢ふくろに返󠄄かへさしめ又󠄂また途󠄃みちの食󠄃しよくを之これにあたへしむヨセフ斯かくかれらになせり

26 彼等かれらすなはち穀物こくもつを驢馬ろばにおはせて其處そこをさりしが 27 其その一人ひとり旅󠄃邸やどりにて驢馬ろばに糧くひものを與あたへんとて嚢ふくろをひらき其その金かねを見みたり其そは嚢ふくろの口くちにありければなり 28 彼かれその兄弟きやうだいにいひけるは吾わが金かねは返󠄄かへしてあり視みよ嚢ふくろの中なかにありと是こゝにおいて彼等かれら膽きもを消󠄃けし懼おそれてたがひに神かみの我われらになしたまふ此事このことは何なんぞやといへり 29 かくて彼等かれらカナンの地ちにかへりて父󠄃ちゝヤコブの所󠄃ところにいたり其その身みにありし事等ことどもを悉こと〴〵く之これにつげていひけるは 30 彼かの國くにの主しゆ荒々あら〳〵しく我等われらにものいひ我われらをもて國くにを偵うかゞふ者ものとなせり 31 我われら彼かれにいふ我等われらは篤實まことなる者ものなり間者かんじやにあらず 32 我われらは十二人にんの兄弟きやうだいにして同おなじ父󠄃ちゝの子こなり一人ひとりはをらずなり季すゑのは今日けふ父󠄃ちゝとともにカナンの地ちにありと 33 國くにの主しゆなるその人ひとわれらにいひけるは我われかくして汝等なんぢらの篤實まことなるをしらん汝等なんぢらの兄弟きやうだいの一人ひとりを吾わがもとにのこし糧りやう食󠄃しよくをたづさへゆきて汝なんぢらの家々いへ〳〵の饑󠄃うゑをすくへ 34 而しかして汝なんぢらの季すゑの弟おとうとをわが許もとにつれきたれ然さすれば我われなんぢらが間者かんじやにあらずして篤實まことなる者ものたるをしらん我われなんぢらの兄弟きやうだいを汝等なんぢらに返󠄄かへし汝等なんぢらをしてこの國くににて交󠄄易かうえきをなさしむべしと〘59㌻〙

35 茲こゝに彼等かれらその嚢ふくろを傾あけたるに視みよ各人おの〳〵の金包󠄃かねづつみその嚢ふくろのなかにあり彼等かれらとその父󠄃ちゝ金包󠄃かねづつみを見みておそれたり 36 その父󠄃ちゝヤコブ彼等かれらにいひけるは汝等なんぢらは我われをして子こを喪うしなはしむヨセフはをらずなりシメオンもをらずなりたるにまたベニヤミンを取とらんとす是これみなわが身みにかゝるなり 37 ルベン父󠄃ちゝに吿つげていふ我われもし彼かれを汝なんぢにつれかへらずば吾わがふたりの子こを殺ころせ彼かれをわが手てにわたせ我われ之これをなんぢにつれかへらん 38 ヤコブいひけるはわが子こはなんぢらとともに下くだるべからず彼かれの兄あには死しにて彼かれひとり遺󠄃のこりたればなり若もしなんぢらが行ゆくところの途󠄃みちにて災難わざはひかれの身みにおよばゞ汝等なんぢらはわが白髮しらがをして悲かなしみて墓はかにくだらしむるにいたらん
 76㌻ 

第43章

1 饑󠄃饉ききんその地ちにはげしかりき 2 茲こゝに彼等かれらエジプトよりもちきたりし穀物こくもつを食󠄃くひつくせし時とき父󠄃ちゝかられらに再ふたゝびゆきて少許すこしの糧りやう食󠄃しよくを買かひきたれといひければ 3 ユダ父󠄃ちゝにかたりていひけるは彼人かのひとかたく我等われらをいましめていふ汝なんぢらの弟おとうと汝なんぢらとともにあるにあらざれば汝なんぢらはわが面かほをみるべからずと 4 汝なんぢもし弟おとうとをわれらとともに遣󠄃つかはさば我等われら下くだりて汝なんぢのために糧りやう食󠄃しよくを買かふべし 5 されど汝なんぢもし彼かれをつかはさずば我等われらくだらざるべし其そはかの人ひとわれらにむかひ汝等なんぢらの弟おとうとなんぢらとともにあるにあらざれば汝なんぢら吾わが面かほをみるべからずといひたればなりと 6 イスラエルいひけるは汝等なんぢらなにゆゑに汝等なんぢらに尙なほ弟おとうとのあることを彼人かのひとにつげて我われを惡あしくなすや 7 彼等かれらいふ其人そのひとわれらの模樣ありさまとわれらの親しん族ぞくを問とひたゞして汝なんぢらの父󠄃ちゝは尙なほ生存いきながらへをるや汝等なんぢらは弟おとうとをもつやといひしにより其その言ことばの條々かど〳〵にしたがひて彼かれにつげたるなり我等われらいかでか彼かれが汝等なんぢらの弟おとうとをつれくだれといふならんとしるをえん 8 ユダ父󠄃ちゝイスラエルにいひけるは童子わらべをわれとともに遣󠄃つかはせ我等われらたちて往󠄃ゆかん然しからば我儕われらと汝なんぢおよびわれらの子女こども生いくることを得えて死しをまぬかるべし 9 我われ彼かれの身みを保うけあはん汝なんぢわが手てにかれを問とへ我われもし彼かれを汝なんぢにつれかへりて汝なんぢのまへに置おかずば我われ永遠󠄄とこしなへに罪つみをおはん 10 我儕われらもし濡滯ためらふことなかりしならば必かならずすでにゆきて再ふたゝびかへりしならん 11 父󠄃ちゝイスラエル彼等かれらにいひけるは然しからば斯かくなせ汝等なんぢら國くにの名めい物ぶつを器うつはにいれ携たづさへくだりて彼人かのひとに禮物れいもつとせよ乳󠄃香にうかう少許すこし、蜜みつ少許すこし、香物かうもつ、沒藥もつやく、胡桃くるみおよび巴旦杏はだんきやう
 77㌻ 
12 又󠄂また手てに一いち倍ばいの金かねを取とりゆけ汝等なんぢらの嚢ふくろの口くちに返󠄄かへしてありし彼かの金かねを再ふたゝび手てにたづさへ行ゆくべし恐おそらくは差謬󠄃あやまりにてありしならん 13 且かつまた汝なんぢらの弟おとうとを挈󠄄たづさへ起󠄃たちて ふたゝび其人そのひとの所󠄃ところにゆけ〘60㌻〙 14 ねがはくは全󠄃ぜん能のうの神かみその人ひとのまへにて汝等なんぢらを矜恤あはれみその人ひとをして汝等なんぢらの他ほかの兄弟きやうだいとベニヤミンを放はなちかへさしめたまはんことを若もしわれ子こに別わかるべくあらば別わかれんと 15 是こゝに於おいてかの人々ひと〴〵その禮物れいもつを執とり一いち倍ばいの金かねを手てに執とりベニヤミンを携たづさへて起󠄃たちてエジプトにくだりヨセフの前󠄃まへに立たつ

16 ヨセフ、ベニヤミンの彼かれらと偕ともなるを見みてその家宰いへづかさにいひけるはこの人々ひと〴〵を家いへに導󠄃みちびき畜けものを屠󠄃ほふりて備とゝのへよこの人々ひと〴〵卓午ひるに我われとともに食󠄃しよくをなすべければなり 17 其人そのひとヨセフのいひしごとくなし其人そのひとこの人々ひと〴〵をヨセフの家いへに導󠄃みちびけり 18 人々ひと〴〵ヨセフの家いへに導󠄃みちびかれたるによりて懼おそれいひけるは初はじめにわれらの嚢ふくろにかへりてありし金かねの事ことのために我等われらはひきいれらる是これわれらを抑留とりおさへて我等われらにせまり執とらへて奴隸どれいとなし且かつわれらの驢馬ろばを取とらんとするなりと 19 彼等かれらすなはちヨセフの家宰いへづかさに進󠄃すゝみよりて家いへの入いり口くちにて之これにかたりて 20 いひけるは主しゆよ我等われら實まことに最初はじめくだりて糧りやう食󠄃しよくを買かひたり 21 しかるに我等われら旅󠄃邸やどりに至いたりて嚢ふくろを啓󠄃ひらき見みるに各人おの〳〵の金かねその嚢ふくろの口くちにありて其その金かねの量りやう全󠄃まつたかりし然されば我等われらこれを手てにもちかへれり 22 又󠄂また糧りやう食󠄃しよくを買かふ他ほかの金かねをも手てにもちくだる我等われらの金かねを嚢ふくろにいれたる者ものは誰たれなるかわれらは知しらざるなり 23 彼かれいひけるは汝なんぢら安やすんぜよ懼おそるるなかれ汝なんぢらの神かみ汝なんぢらの父󠄃ちゝの神かみ財寳たからを汝等なんぢらの嚢ふくろにおきて汝なんぢらに賜たまひしなり汝なんぢらの金かねは我われにとゞけりと遂󠄅つひにシメオンを彼等かれらの所󠄃ところにたづさへいだせり 24 かくて其人そのひとこの人々ひと〴〵をヨセフの家いへに導󠄃みちびき水みづをあたへてその足あしを濯󠄄あらはしめ又󠄂またその驢馬ろばに飼草かひばをあたふ 25 彼等かれら其處そこにて食󠄃しよくをなすなりと聞きゝしかば禮物れいもつを調󠄃ととのへてヨセフの日午ひるに來きたるをまつ
 78㌻ 

26 茲こゝにヨセフ家いへにかへりしかば彼等かれらその手ての禮物れいもつを家いへにもちきたりてヨセフの許もとにいたり地ちに伏ふしてこれを拜はいす 27 ヨセフかれらの安否あんぴをとふていふ汝等なんぢらの父󠄃ちゝ汝なんぢらが初さきにかたりしその老人らうじんは恙つゝがなきや尙なほいきながらへをるや 28 彼等かれらこたへてわれらの父󠄃ちゝ汝なんぢの僕しもべは恙つゝがなくしてなほ生いきながらへをるといひ身みをかゞめ禮れいをなす 29 ヨセフ目めをあげてその母はゝの子こなる己おのれの弟おとうとベニヤミンを見みていひけるは是これは汝なんぢらが初さきに我われにかたりし汝なんぢらの若わかき兄弟きやうだいなるや又󠄂またいふわが子こよ願ねがはくは神かみ汝なんぢをめぐみたまはんことをと 30 ヨセフその弟おとうとのために心こゝろ焚やくるがごとくなりしかば急󠄃いそぎてその泣なくべきところを尋󠄃たづね室しつにいりて其處そこに泣なけり 31 而しかして面かほをあらひて出いで自みづから抑おさへて食󠄃しよくをそなへよといふ〘61㌻〙 32 すなはちヨセフはヨセフ彼等かれらは彼等かれら陪ばい食󠄃しよくするエジプト人びとはエジプト人びとと別々べつべつに之これを供そなふ是こはエジプト人びとヘブル人びとと共ともに食󠄃しよくすることをえざるによる其その事ことエジプト人びとの穢けがらはしとするところなればなり 33 かくて彼等かれらヨセフの前󠄃まへに坐すわるに長子ちやうしをばその長ちやうたるにしたがひて坐すわらせ若わかき者ものをばその幼少わかきにしたがひてすわらせければその人々ひと〴〵駭おどろきあへり 34 ヨセフ己おのれのまへより皿さらを彼等かれらに供そなふベニヤミンの皿さらは他ほかの人ひとのよりも五ご倍ばいおほかりきかれら飮のみてヨセフとともに樂たのしめり

第44章

1 爰こゝにヨセフその家宰いへづかさに命めいじていふこの人々ひと〴〵の嚢ふくろにその負󠄅おひうるほど糧りやう食󠄃しよくを充みたせ各人おの〳〵の金かねをその嚢ふくろの口くちに置いれ 2 またわが杯さかづきすなはち銀ぎんの杯さかづきを彼かの少わかき者ものの嚢ふくろの口くちに置いれてその穀物こくもつの金子かねとともにあらしめよと彼かれがヨセフがいひし言ことばのごとくなせり 3 かくて夜よのあくるにおよびてその人々ひと〴〵と驢馬ろばをかへしけるが 4 かれら城󠄃邑まちをいでてなほ程󠄃ほどとほからぬにヨセフ家宰いへづかさにいひけるは起󠄃たちてかの人々ひと〴〵の後あとを追󠄃おひおひつきし時とき之これにいふべし汝なんぢらなんぞ惡あくをもて善ぜんにむくゆるや 5 其それはわが主しゆがもちひて飮のみ又󠄂また用もちひて常つねに卜うらなふ者ものにあらずや汝なんぢらかくなすは惡あしと
 79㌻ 
6 是こゝに於おいて家宰いへづかさかれらにおひつきてこの言ことばをかれらにいひければ 7 かれら之これにいふ主しゆなにゆゑに是この事ことをいひたまふや僕しもべ等らきはめてこの事ことをなさず 8 視みよ我われらの嚢ふくろの口くちにありし金かねはカナンの地ちより汝なんぢの所󠄃ところにもちかへれり然されば我等われらいかで汝なんぢの主しゆの家いへより金銀きんぎんをぬすまんや 9 僕しもべ等らの中うち誰たれの手てに見みあたるも其その者ものは死しぬべし我等われらまたわが主しゆの奴隸どれいとなるべし 10 彼かれいひけるはさらば汝なんぢらの言ことばのごとくせん其それの見みあたりし者ものはわが奴隸どれいとなるべし汝等なんぢらは咎とがなしと 11 是こゝにおいて彼等かれら急󠄃いそぎて各おの〳〵その嚢ふくろを地ちにおろし各おの〳〵その嚢ふくろをひらきしかば 12 彼かれすなはち索さがし長者としうへよりはじめて少者とししたにをはるに杯さかづきはベニヤミンの嚢ふくろにありき 13 斯有󠄃かゝりしかば彼等かれらその衣ころもを裂さきおのおのその驢馬ろばに荷にを負󠄅おはせて邑まちにかへる

14 しかしてユダとその兄弟きやうだい等らヨセフの家いへにいたるにヨセフなほ其處そこにをりしかばその前󠄃まへに地ちに伏ふす 15 ヨセフかれらにいひけるは汝等なんぢらがなしたるこの事ことは何なにぞや我われのごとき人ひとは善よく卜うらなひうる者ものなるをしらざるや 16 ユダいひけるは我等われら主しゆに何なにをいはんや何なにをのべんや如何いかにしてわれらの正直たゞしきをあらはさんや神かみ僕しもべ等らの罪つみを摘發あらはしたまへり然されば我等われらおよびこの杯さかづきの見みあたりし者もの俱ともに主しゆの奴隸どれいとなるべし〘62㌻〙 17 ヨセフいひけるはきはめて然しかせじ杯さかづきの手てに見みあたりし人ひとはわが奴隸どれいとなるべし汝等なんぢらは安然やすらかに父󠄃ちゝにかへりのぼるべし

18 時ときにユダかれに近󠄃ちかよりていひけるはわが主しゆよ請󠄃こふ僕しもべをして主しゆの耳みゝに一言ひとこといふをえせしめよ僕しもべにむかひて怒いかりを發はつしたまふなかれ汝なんぢはパロのごとくにいますなり 19 昔さきにわが主しゆ僕しもべ等らに問とふて汝等なんぢらは父󠄃ちゝあるや弟おとうとあるやといひたまひしかば 20 我等われら主しゆにいへり我等われらにわが父󠄃ちゝあり老人らうじんなり又󠄂またその老年子としよりごなる少者わかうどありその兄あには死しにてその母はゝの遺󠄃のこせるは只たゞ是これのみ故ゆゑに父󠄃ちゝこれを愛あいすと 21 汝なんぢまた僕しもべ等らにいひたまはく彼かれを我わが許もとにつれくだり我われをして之これに目めをつくることをえせしめよと
 80㌻ 
22 われら主しゆにいへり童子わらべ父󠄃ちゝを離はなるるをえず若もし父󠄃ちゝをはなるゝならば父󠄃ちゝ死しぬべしと 23 汝なんぢまた僕しもべ等らにいひたまはく汝なんぢらの季すゑの弟おとうと汝等なんぢらとともに下くだるにあらざれば汝等なんぢらふたゝびわが面かほを見みるべからずと 24 我等われらすなはちなんぢの僕しもべわが父󠄃ちゝの所󠄃もとにかへりのぼりて主しゆの言ことばをこれに吿つげたり 25 我われらの父󠄃ちゝ再ふたゝびゆきて少許すこしの糧りやう食󠄃しよくを買かひきたれといひければ 26 我われらいふ我われらくだりゆくことをえずわれらの季すゑの弟おとうとわれらと共ともにあらば下くだりゆくべし其そは季すゑの弟おとうとわれらと共ともにあるにあらざれば彼人かのひとの面かほをみるをえざればなりと 27 なんぢの僕しもべわが父󠄃ちゝわれらにいふ汝なんぢらのしるごとく吾わが妻つまわれに二人ふたりを生うみしが 28 その一人ひとり出いでてわれをはなれたれば必かならず裂さきころされしならんと思おもへり我われ今いまにいたるまで彼かれを見みず 29 なんぢら是これをも我わが側そばより取とりゆかんに若もし災害󠄅わざはひ是これの身みにおよぶあらば遂󠄅つひにわが白髮しらがをして悲かなしみて墓はかにくだらしむるにいたらんと 30 抑そも〳〵父󠄃ちゝの生命いのちと童子わらべの生命いのちとは相あひ結むすびてあれば我われなんぢの僕しもべわが父󠄃ちゝに歸かへりいたらん時ときに童子わらべもしわれらと共ともに在をらずば如何いかんぞや 31 父󠄃ちゝ童子わらべの在をらざるを見みば死しぬるにいたらん然しかれば僕しもべ等らなんぢの僕しもべわれらの父󠄃ちゝの白髮しらがをして悲かなしみて墓はかにくだらしむるなり 32 僕しもべわが父󠄃ちゝに童子わらべの事ことを保うけあひて我われもし是これを汝なんぢにつれかへらずば永久とこしなへに罪つみを父󠄃ちゝに負󠄅おはんといへり 33 されば請󠄃こふ僕しもべをして童子わらべにかはりをりて主しゆの奴隸どれいとならしめ童子わらべをしてその兄弟きやうだいとともに歸かへりのぼらしめたまへ 34 我われいかでか童子わらべを伴󠄃ともなはずして父󠄃ちゝの許もとに上のぼりゆくべけん恐おそらくは災害󠄅わざはひの父󠄃ちゝにおよぶを見みん

第45章

1 茲こゝにヨセフその側そばにたてる人々ひと〴〵のまへに自みづから禁しのぶあたはざるに至いたりければ人ひと皆みなわれを離はなれていでよと呼よばはれり是こゝをもてヨセフが己おのれを兄弟きやうだいにあかしたる時とき一人ひとりも之これとともにたつものなかりき〘63㌻〙 2 ヨセフ聲こゑをあげて泣なけりエジプト人びとこれを聞ききパロの家いへまたこれを聞きく 3 ヨセフすなはちその兄弟きやうだいにいひけるは我われはヨセフなりわが父󠄃ちゝはなほ生いきながらへをるやと兄弟きやうだい等らその前󠄃まへに愕󠄂おどろき懼おそれて之これにこたふるをえざりき
 81㌻ 
4 ヨセフ兄弟きやうだいにいひけるは請󠄃こふ我われにちかよれとかれらすなはち近󠄃ちかよりければ言いふ我われはなんぢらの弟おとうとヨセフなんぢらがエジプトにうりたる者ものなり 5 されど汝等なんぢら我われをこゝに賣うりしをもて憂うれふるなかれ身みを恨うらむるなかれ神かみ生命いのちをすくはしめんとて我われを汝等なんぢらの前󠄃さきにつかはしたまへるなり 6 この二年ねんのあひだ饑󠄃饉ききん國くにの中うちにありしが尙なほ五年ねんの間あひだ耕󠄃たがへすことも穫かることもなかるべし 7 神かみ汝等なんぢらの後あとを地ちにつたへんため又󠄂また大おほいなる救すくひをもて汝なんぢらの生命いのちを救すくはんために我われを汝等なんぢらの前󠄃さきに遣󠄃つかはしたまへり 8 然されば我われを此こゝにつかはしたる者ものは汝等なんぢらにはあらず神かみなり神かみわれをもてパロの父󠄃ちゝとなしその全󠄃家ぜんかの主しゆとなしエジプト全󠄃國ぜんこくの宰つかさとなしたまへり 9 汝等なんぢらいそぎ父󠄃ちゝの許もとにのぼりゆきて之これにいへ汝なんぢの子こヨセフかく言いふ神かみわれをエジプト全󠄃國ぜんこくの主しゆとなしたまへりわが所󠄃ところにくだれ遲󠄃疑ためらふなかれ 10 汝なんぢゴセンの地ちに住󠄃すむべし斯かく汝なんぢと汝なんぢの子こと汝なんぢの子この子こおよびなんぢの羊ひつじと牛うし並ならびに汝なんぢのすべて有󠄃もつところの者ものわれの近󠄃方ちかくにあるべし 11 なほ五年ねんの饑󠄃饉ききんあるにより我われ其處そこにてなんぢを養󠄄やしなはん恐おそらくは汝なんぢとなんぢの家族かぞくおよびなんぢの凡すべて有󠄃もつところの者もの匱乏とぼしくならん 12 汝等なんぢらの目めとわが弟おとうとベニヤミンの目めの視みるごとく汝等なんぢらにこれをいふ者ものはわが口くちなり 13 汝等なんぢらわがエジプトにて享うくる顯榮さかえとなんぢらが見みたる所󠄃ところとを皆みな悉こと〴〵く父󠄃ちゝにつげよ汝なんぢら急󠄃いそぎて父󠄃ちゝを此こゝにみちびき下くだるべし 14 而しかしてヨセフその弟おとうとベニヤミンの頸くびを抱󠄃かゝへて哭なくにベニヤミンもヨセフの頸くびをかゝへて哭なく 15 ヨセフ亦またその諸すべての兄弟きやうだいに接吻くちつけし之これをいだきて哭なく是こののち兄弟きやうだい等らヨセフと言ものいふ

16 爰こゝにヨセフの兄弟きやうだい等らきたれりといふ聲こゑパロの家いへにきこえければパロとその臣僕しもべこれを悅よろこぶ 17 パロすなはちヨセフにいひけるは汝なんぢの兄弟きやうだいに言いふべし汝等なんぢらかく爲なせ汝等なんぢらの畜けものに物ものを負󠄅おはせ往󠄃ゆきてカナンの地ちに至いたり 18 なんぢらの父󠄃ちゝとなんぢらの家族かぞくを携たづさへて我われにきたれ我われなんぢらにエジプトの地ちの嘉物よきものをあたへん汝等なんぢら國くにの膏腴󠄂あぶらを食󠄃くらふことをうべしと
 82㌻ 
19 今いま汝なんぢ命めいをうく汝等なんぢらかく爲なせ汝等なんぢらエジプトの地ちより車くるまを取とりゆきてなんぢらの子女こどもと妻つま等らを載のせ汝等なんぢらの父󠄃ちゝを導󠄃みちびきて來きたれ 20 また汝等なんぢらの器うつはを惜おしみ視みるなかれエジプト全󠄃國ぜんこくの嘉物よきものは汝なんぢらの所󠄃屬ものなればなり〘64㌻〙

21 イスラエルの子等こらすなはち斯かくなせりヨセフ、パロの命めいにしたがひて彼等かれらに車くるまをあたへかつ途󠄃みちの餱糧くひものをかれらにあたへたり 22 又󠄂またかれらに皆みなおのおの衣ころも一襲󠄂ひとかさねを與あたへたりしがベニヤミンには銀ぎん三百びやくと衣ころも五襲󠄂いつかさねをあたへたり 23 彼かれまた斯かくのごとく父󠄃ちゝに餽おくれり卽すなはち驢馬ろば十疋とをにエジプトの嘉物よきものをおはせ牝めの驢馬ろば十疋とをに父󠄃ちゝの途󠄃みちの用ように供そなふる穀物こくもつと糧かてと肉󠄁にくをおはせて餽おくれり 24 斯かくして兄弟きやうだいをかへして去さらしめ之これにいふ汝等なんぢら途󠄃みちにて相あひあらそふなかれと 25 かれらエジプトより上のぼりてカナンの地ちにゆきその父󠄃ちゝヤコブにいたり 26 之これにつげてヨセフは尙なほいきてをりエジプト全󠄃國ぜんこくの宰つかさとなりをるといふしかるにヤコブの心こゝろなほ寒󠄃冷ひやゝかなりき其そはこれを信しんぜざればなり 27 彼等かれらまたヨセフの己おのれにいひたる言ことばをことごとく之これにつげたりその父󠄃ちゝヤコブ、ヨセフがおのれを載のせんとておくりし車くるまをみるにおよびて其その氣きおのれにかへれり 28 イスラエルすなはちいふ足たれりわが子こヨセフなほ生いきをるわれ死しなざるまへに往󠄃ゆきて之これを視みん

第46章

1 イスラエルその己おのれにつける諸すべての者ものとともに出いでたちベエルシバにいたりてその父󠄃ちゝイサクの神かみに犧牲いけにへをさゝぐ 2 神かみ夜よるの異象まぼろしにイスラエルにかたりてヤコブよヤコブよといひたまふ 3 ヤコブわれ此こゝにありといひければ神かみいひたまふ我われは神かみなり汝なんぢの父󠄃ちゝの神かみなりエジプトにくだることを懼おそるるなかれわれ彼處かしこにて汝なんぢを大おほいなる國民たみとなさん 4 我われ汝なんぢと共ともにエジプトに下くだるべし亦またかならず汝なんぢを導󠄃みちびきのぼるべしヨセフ手てをなんぢの目めの上うへにおかんと 5 かくてヤコブ、ベエルシバをたちいでたりイスラエルの子等こらすなはちパロの載のせんとておくりたる車くるまに父󠄃ちゝヤコブと己おのれの子女こどもと妻つま等らを載のせ
 83㌻ 
6 その家畜かちくとカナンの地ちにてえたる貨財もちものをたづさへ斯かくしてヤコブとその子孫まごこ皆みなともにエジプトにいたれり 7 ヤコブかくその子こと子この子こおよびその女むすめと子この女むすめすなはちその子孫まごこを皆みなともなひてエジプトににつれゆけり

8 イスラエルの子このエジプトにくだれる者ものの名なは左さのごとしヤコブとその子等こらヤコブの長子うひごはルベン 9 ルベンの子こはヘノク、パル、ヘヅロン、カルミ 10 シメオンの子こはヱムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハルおよびカナンの婦󠄃をんなのうめる子こシヤウル 11 レビの子こはゲルシヨン、コハテ、メラリ 12 ユダの子こエル、オナン、シラ、ペレヅ、ゼラ但たゞしエルとオナンはカナンの地ちに死しにたりペレヅの子こはヘヅロンおよびハムルなり 13 イツサカルの子こはトラ、プワ、ヨブ、シムロン〘65㌻〙 14 ゼブルンの子こはセレデ、エロン、ヤリエルなり 15 是等これらおよび女子むすめデナはレアがパダンアラムにてヤコブにうみたる者ものなりその男子なんし女子によしあはせて三十三人にんなりき 16 ガドの子こはゼボン、ハギ、シユニ、エヅポン、エリ、アロデ、アレリ 17 アセルの子こはヱムナ、イシワ、イスイ、ベリアおよびその妹いもうとサラ並ならびにベリアの子こヘベルとマルキエルなり 18 是等これらはラバンがその女むすめレアにあたへたるジルパの子こなり彼かれ是等これらをヤコブにうめり都合あはせて十六人にん 19 ヤコブの妻つまラケルの子こはヨセフとベニヤミンなり 20 エジプトの國くににてヨセフにマナセとエフライムうまれたり是これはオンの祭司さいしポテパルの女むすめアセナテが生うみたる者ものなり 21 ベニヤミンの子こはベラ、ベケル、アシベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシ、ムツピム、ホパム、アルデ 22 是等これらはラケルの子こにしてヤコブにうまれたる者ものなり都合あはせて十四人にん 23 ダンの子こはホシム 24 ナフタリの子こはヤジエル、グニ、ヱゼル、シレム 25 是等これらはラバンがその女むすめラケルにあたへたるビルハの子こなり彼かれこれらをヤコブにうめり都合あはせて七人にん 26 ヤコブとともにエジプトにいたりし者ものはヤコブの子この妻つまをのぞきて六十六人にんなりき是これ皆みなヤコブの身みよりいでたる者ものなり
 84㌻ 
27 エジプトにてヨセフにうまれたる子こ二人ふたりありヤコブの家いへの人ひとのエジプトにいたりし者ものはあはせて七十人にんなりき

28 ヤコブ預あらかじめユダをヨセフにつかはしおのれをゴセンにみちびかしむ而しかして皆みなゴセンの地ちにいたる 29 ヨセフその車くるまを整とゝのへゴセンにのぼりて父󠄃ちゝイスラエルを迓むかへ之これにまみえてその頸くびを抱󠄃いだき頸くびをかゝへて久ひさしく啼󠄂なく 30 イスラエル、ヨセフにいふ汝なんぢなほ生いきてをり我われ汝なんぢの面かほを見みることをえたれば今いまは死しぬるも可よしと 31 ヨセフその兄弟きやうだい等たちと父󠄃ちゝの家族かぞくとにいひけるは我われのぼりてパロにつげて之これにいふべしわが兄弟きやうだい等らとわが父󠄃ちゝの家族かぞくカナンの地ちにをりし者もの我われのところに來きたれり 32 その人々ひと〴〵は牧者ぼくしやにして牧ぼく畜ちくの人ひとなり彼等かれらその羊ひつじと牛うしおよびその有󠄃もてる諸すべての物ものをたづさへ來きたれりと 33 パロもし汝等なんぢらを召めして汝等なんぢらの業げふは何いかなるやと問とふことあらば 34 僕しもべ等らは幼少いとけなきより今いまに至いたるまで牧ぼく畜ちくの人ひとなり我儕われらも先祖せんぞ等らもともにしかりといへしからばなんぢらゴセンの地ちにすむことをえん牧者ぼくしやは皆みなエジプト人びとの穢けがらはしとするものなればなり

第47章

1 茲こゝにヨセフゆきてパロにつげていひけるはわが父󠄃ちゝと兄弟きやうだいおよびその羊ひつじと牛うしと諸すべての所󠄃有󠄃物もちものカナンの地ちよりいたれり彼かれらはゴセンの地ちにをると〘66㌻〙 2 その兄弟きやうだいの中うちより五人にんをとりてこれをパロにまみえしむ 3 パロ、ヨセフの兄弟きやうだい等らにいひけるは汝なんぢらの業げふは何なになるか彼等かれらパロにいふ僕しもべ等らは牧者ぼくしやなりわれらも先祖せんぞ等らもともにしかりと 4 かれら又󠄂またパロにいひけるは此この國くにに寓やどらんとて我等われらはきたる其そはカナンの地ちに饑󠄃饉ききんはげしくして僕しもべ等らの群むれをやしなふ牧場まきばなければなりされば請󠄃こふ僕しもべ等らをしてゴセンの地ちにすましめたまへ
 85㌻ 
5 パロ、ヨセフにかたりていふ汝なんぢの父󠄃ちゝと兄弟きやうだい汝なんぢの所󠄃ところにきたれり 6 エジプトの地ちはなんぢの前󠄃まへにあり地ちの善よき處ところに汝なんぢの父󠄃ちゝと兄弟きやうだいをすましめよすなはちゴセンの地ちにかれらをすましめよ汝なんぢもし彼等かれらの中うちに才能ちからある者ものあるをしらば其その人々ひと〴〵をしてわが家畜かちくをつかさどらしめよ 7 ヨセフまた父󠄃ちゝヤコブを引ひきていりパロの前󠄃まへにたゝしむヤコブ、パロを祝しゆくす 8 パロ、ヤコブにいふ汝なんぢの齡よはひの日ひは幾何いくばくなるか 9 ヤコブ、パロにいひけるはわが旅󠄃たび路ぢの年とし月󠄃つきは百三十年ねんにいたる我わが齡よはひの日ひは僅少わづかにして且かつ惡あしかり未いまだわが先祖せんぞ等らの齡よはひの日ひと旅󠄃たび路ぢの日ひにはおよばざるなり 10 ヤコブ、パロを祝しゆくしパロのまへよりいでさりぬ 11 ヨセフ、パロの命めいぜしごとくその父󠄃ちゝと兄弟きやうだいに居所󠄃すみかを與あたへエジプトの國くにの中うちの善よき地ち即すなはちラメセスの地ちをかれらにあたへて所󠄃有󠄃もちものとなさしむ 12 ヨセフその父󠄃ちゝと兄弟きやうだいと父󠄃ちゝの全󠄃家ぜんかにその子この數󠄄かずにしたがひて食󠄃物くひものをあたへて養󠄄やしなへり

13 却説さて饑󠄃饉ききんははなはだはげしくして全󠄃國ぜんこくに食󠄃物くひものなくエジプトの國くにとカナンの國くに饑󠄃饉ききんのために弱󠄃よわれり 14 ヨセフ穀物こくもつを賣うりあたへてエジプトの地ちとカナンの地ちにありし金かねをことごとく斂あつむ而しかしてヨセフその金かねをパロの家いへにもちきたる 15 エジプトの國くにとカナンの國くにに金かねつきたればエジプト人びとみなヨセフにいたりていふ我等われらに食󠄃物くひものをあたへよ如何いかんぞなんぢの前󠄃まへに死しぬべけんや金かねすでにたえたり 16 ヨセフいひけるは汝等なんぢらの家畜かちくをいだせ金かねもしたえたらば我われなんぢらの家畜かちくにかへて與あたふべしと 17 かれら乃すなはちその家畜かちくをヨセフにひききたりければヨセフその馬むまと羊ひつじの群むれと牛うしの群むれおよび驢馬ろばにかへて食󠄃物くひものをかれらにあたへそのすべての家畜かちくのために其その年としのあひだ食󠄃物くひものをあたへてこれをやしなふ 18 かくてその年とし暮くれけるが明年あくるとしにいたりて人衆ひと〴〵またヨセフにきたりて之これにいふ我等われら主しゆに隱かくすところなしわれらの金かねは竭つきたりまたわれらの畜けものの群むれは主しゆに皈きす主しゆのまへにいだすべき者ものは何なにものこりをらず唯ただわれらの身體からだと田でん地ぢあるのみ
 86㌻ 
19 われらいかんぞわれらの田でん地ぢとともに汝なんぢの目めのまへに死亡しにほろぶべけんや我等われらとわれらの田でん地ぢを食󠄃物くひものに易かへて買かひとれ我等われら田でん地ぢとともにパロの僕しもべとならんまた我等われらに種たねをあたへよ然しからばわれら生いくるをえて死しぬるにいたらず田でん地ぢも荒蕪あるゝにいたらじ〘67㌻〙

20 是こゝに於おいてヨセフ、エジプトの田でん地ぢをことごとく購󠄄かひとりてパロに納󠄃いる其そはエジプト人びと饑󠄃饉ききんにせまりて各人おの〳〵その田圃たはたを賣うりたればなり是こゝによりて地ちはパロの所󠄃有󠄃ものとなれり 21 また民たみはエジプトのこの境さかひの極はてよりかの境さかひの極はての者ものまでヨセフこれを邑々まち〳〵にうつせり 22 但たゞ祭司さいしの田でん地ぢは購󠄄かひとらざりき祭司さいしはパロより祿ろくをたまはりをればパロの與あたふる祿ろくを食󠄃はみたるによりてその田でん地ぢを賣うらざればなり 23 茲こゝにヨセフ民たみにいひけるは視みよ我われ今日けふ汝等なんぢらとなんぢらの田でん地ぢをかひてパロに納󠄃いる視みよこの種子たねを汝なんぢらに與あたふ地ちに播まくべし 24 しかして收穫とりいれの五分󠄃ぶんの一をパロに輸󠄃いだし四し分󠄃ぶんをなんぢらに取とりて田圃たはたの種たねとしなんぢらの食󠄃しよくとしなんぢらの家族かぞくと子女こどもの食󠄃しよくとせよ 25 人衆ひとびといひけるは汝なんぢわれらの生命いのちを拯すくひたまへりわれら主しゆのまへに恩めぐみをえんことをねがふ我等われらパロの僕しもべとなるべしと 26 ヨセフ、エジプトの田でん地ぢに法おきてをたてその五分󠄃ぶんの一をパロにをさめしむその事こと今日けふにいたる唯たゞ祭司さいしの田でん地ぢのみパロの有󠄃ものとならざりき

27 イスラエル、エジプトの國くにに於おいてゴセンの地ちにすみ彼處そこに產業もちものを獲えその數󠄄かず增まして大おほいに殖ふえたり 28 ヤコブ、エジプトの國くにに十七年ねんいきながらへたりヤコブの年齒よはいの日ひは合あはせて百四十七年ねんなりき 29 イスラエル死しぬる日ひちかよりければその子こヨセフをよびて之これにいひけるは我われもし汝なんぢのまへに恩めぐみを得うるならば請󠄃こふなんぢの手てをわが髀もゝの下したにいれ懇ねんごろに眞󠄃實まことをもて我われをあつかへ我われをエジプトに葬はうむるなかれ 30 我われは先祖せんぞ等たちとともに偃󠄂ふさんことをねがふ汝なんぢわれをエジプトより舁かきいだして先祖せんぞ等たちの墓はか場ばにはうむれヨセフいふ我われなんぢが言いへるごとくなすべしと
 87㌻ 
31 ヤコブまた我われに誓ちかへといひければすなはち誓ちかへりイスラエル床とこの頭かみにて拜をがみをなせり

第48章

1 是等これらの事ことの後のち汝なんぢの父󠄃ちゝ病やまひにかゝるとヨセフに吿つぐる者ものありければヨセフ二人ふたりの子こマナセとエフライムをともなひて至いたる 2 人ひとヤコブに吿つげて汝なんぢの子こヨセフなんぢの許もとにきたるといひければイスラエル强おして床とこに坐ざす 3 しかしてヤコブ、ヨセフにいひけるは昔さきに全󠄃ぜん能のうの神かみカナンの地ちのルズにて我われにあらはれて我われを祝しゆくし 4 我われにいひたまひけらく我われなんぢをして多おほく子こをえせしめ汝なんぢをふやし汝なんぢを衆多おほくの民たみとなさん我われこの地ちを汝なんぢの後のちの子孫しそんにあたへて永久とこしなへの所󠄃有󠄃もちものとなさしめんと 5 わがエジプトにきたりて汝なんぢに就つくまへにエジプトにて汝なんぢに生うまれたる二人ふたりの子こエフライムとマナセ是等これらはわが子ことなるべしルベンとシメオンのごとく是等これらはわが子ことならん〘68㌻〙 6 是等これらの後のちになんぢが得えたる子こは汝なんぢのものとすべし又󠄂またその產業さんげふはその兄弟きやうだいの名なをもて稱󠄄となへらるべし 7 我わが事ことをいはんに我われ昔むかしパダンより來きたれる時ときラケル我われにしたがひをりて途󠄃みちにてカナンの地ちに死しねり其處そこはエフラタまで尙なほ途󠄃みちの隔󠄃へだたりあるところなりわれ彼處かしこにて彼かれをエフラタの途󠄃みちにはうむれり(エフラタはすなはちベテレヘムなり)

8 斯かくてイスラエル、ヨセフの子等こどもを見みて是等これらは誰たれなるやといひければ 9 ヨセフ父󠄃ちゝにいふ是これは神かみの此こゝにて我われにたまひし子等こどもなりと父󠄃ちゝすなはちいふ請󠄃こふ彼かれらを我所󠄃わがもとにつれきたれ我われこれを祝しゆくせんと 10 イスラエルの目めは年壽としのために眯くもりて見みるをえざりしがヨセフかれらをその許もとにつれきたりければ之これに接吻くちつけしてこれを抱󠄃いだけり 11 しかしてイスラエル、ヨセフにいひけるは我われなんぢの面かほを見みるあらんとは思おもはざりしに視みよ神かみなんぢの子たねをもわれにしめしたまふと 12 ヨセフかれらをその膝ひざの間あひだよりいだし地ちに俯ふして拜はいせり 13 しかしてヨセフ、エフライムを右みぎの手てに執とりてヤコブに左ひだりの手てにむかはしめマナセを左ひだりの手てに執とりてヤコブの右みぎの手てにむかはしめ二人ふたりをみちびきてかれに就つきければ
 88㌻ 
14 イスラエル右みぎの手てをのべて季子おとごエフライムの頭かうべに按おき左ひだりの手てをのべてマナセの頭かうべにおけりマナセは長子うひごなれども故ことさらにかくその手てをおけるなり 15 斯かくしてヨセフを祝しゆくしていふわが父󠄃ちゝアブラハム、イサクの事つかへし神かみわが生うまれてより今日けふまで我われをやしなひたまひし神かみ 16 我われをして諸もろ〳〵の災禍わざはひを贖あがなはしめたまひし天使󠄃てんのつかひねがはくは是この童子わらべ等どもを祝めぐみたまへねがはくは是等これらの者ものわが名なとわが父󠄃ちゝアブラハム、イサクの名なをもて稱󠄄となへられんことをねがはくは是等これら地ちの中うちに繁殖ふえひろがるにいたれ 17 ヨセフ父󠄃ちゝが右みぎの手てをエフライムの頭かうべに按おけるを見みてよろこばず父󠄃ちゝの手てをあげて之これをエフライムの頭かうべよりマナセの頭かうべにうつさんとす 18 ヨセフすなはち父󠄃ちゝにいひけるは然さにあらず父󠄃ちゝよ是これ長子うひごなれば右みぎの手てをその頭かうべに按おきたまへ 19 父󠄃ちゝこばみていひけるは我われ知しるわが子こよわれしる彼かれも一ひとつの民たみとなり彼かれも大おほいなる者ものとならん然しかれどもその弟おとうとは彼かれよりも大おほいなる者ものとなりてその子孫しそんは多衆おほくの國民たみとなるべしと 20 此この日ひ彼等かれらを祝しゆくしていふイスラエル汝なんぢを指さして人ひとを祝しゆくし願ねがはくは神かみ汝なんぢをしてエフライムのごとくマナセのごとくならしめたまへといふにいたらんとすなはちエフライムをマナセの先さきにたてたり 21 イスラエルまたヨセフにいひけるは視みよわれは死しなんされど神かみなんぢらとともにいまして汝等なんぢらを先祖せんぞ等たちの國くににみちびきかへりたまふべし〘69㌻〙 22 且かつわれ一ひとつの分󠄃ぶんをなんぢの兄弟きやうだいよりもおほく汝なんぢにあたふ是これわが刀かたなと弓ゆみを以もてアモリ人びとの手てより取とりたる者ものなり

第49章

1 ヤコブその子等こどもを呼よびていひけるは汝なんぢらあつまれ我われ後のちの日ひに汝なんぢらが遇󠄃あはんところの事ことを汝等なんぢらにつげん 2 汝等なんぢらつどひて聽きけヤコブの子等こらよ汝なんぢらの父󠄃ちゝイスラエルに聽きけ 3 ルベン汝なんぢはわが冡子うひごわが勢いきほひわが力ちからの始はじめ威󠄂光ゐくわうの卓越すぐれたる者もの權威󠄂けんゐの卓越すぐれたる者ものなり
 89㌻ 
4 汝なんぢは水みづの沸わきあがるがごとき者ものなれば卓越すぐるゝを得えざるべし汝なんぢ父󠄃ちゝの床とこにのぼりて浼けがしたればなり嗚呼あゝ彼かれはわが寢ね牀どこにのぼれり 5 シメオン、レビは兄弟きやうだいなりその劍つるぎは暴ぼう逆󠄃ぎやくの器うつはなり 6 我わが魂たましひよかれらの席せきにのぞむなかれ我わが寳たからよかれらの集會あつまりにつらなるなかれ其そは彼等かれらその怒いかりにまかせて人ひとをころしその意こゝろにまかせて牛うしを筋截すじきりたればなり 7 その怒いかりは烈はげしかれば詛のろふべしその憤いきどほりは暴あらくあれば詛のろふべし我われ彼かれらをヤコブの中うちに分󠄃わかちイスラエルの中うちに散ちらさん 8 ユダよ汝なんぢは兄弟きやうだいの讚ほむる者ものなり汝なんぢの手てはなんぢの敵てきの頸くびを抑おさへんなんぢの父󠄃ちゝの子等こどもなんぢの前󠄃まへに鞠かゞまん 9 ユダは獅子しゝの子この如ごとしわが子こよ汝なんぢは所󠄃掠物えものをさきてかへりのぼる彼かれは牡獅子をじゝのごとく伏ふし牝獅めじゝのごとく蹲うづくまる誰たれか之これをおこすことをせん 10 杖つゑユダを離はなれず法のりを立たつる者ものその足あしの間あひだをはなるゝことなくしてシロの來きたる時ときにまでおよばん彼かれに諸もろ〳〵の民たみしたがふべし 11 彼かれその驢馬ろばを葡萄ぶだうの樹きに繋つなぎその牝驢馬めろばの子こを葡萄ぶだうの蔓つるに繋つながん又󠄂またその衣ころもを酒さけにあらひ其その服󠄃きぬを葡萄ぶだうの汁しるにあらふべし 12 その目めは酒さけによりて紅あかくその齒はは乳󠄃ちゝによりて白しろし 13 ゼブルンは海邊󠄎うみべにすみ舟ふねの泊とまる海邊󠄎うみべに住󠄃すまはんその界さかひはシドンにおよぶべし 14 イッサカルは羊ひつじの牢をりの間あひだに伏ふす健󠄄たくましき驢馬ろばの如ごとし 15 彼かれみて安泰やすきを善よしとしその國くにを樂たのしとし肩󠄃かたをさげて負󠄅になひ租税みつぎをいだして僕しもべとなるべし 16 ダンはイスラエルの他ほかの支󠄂派󠄄わかれの如ごとく其その民たみを鞫さばかん 17 ダンは路みちの旁かたはらの蛇へびのごとく途󠄃邊󠄎みちべにある蝮まむしのごとし馬むまの踵くびすを噛かみてその騎者のるものをして後うしろに落おちしむ 18 ヱホバよわれ汝なんぢの拯救すくひを待まてり 19 ガドは軍勢ぐんぜいこれにせまらんされど彼かれ返󠄄かへつてその後うしろにせまらん 20 アセルよりいづる食󠄃物くひものは美よかるべし彼かれ王わうの食󠄃くらふ美味うまきものをいださん 21 ナフタリは釋はなたれたる麀󠄂めじかのごとし彼かれ美言よきことばをいだすなり 22 ヨセフは實みを結むすぶ樹きの芽めのごとし即すなはち泉いづみの傍かたはらにある實みをむすぶ樹きの芽めのごとしその枝えだつひに垣かきを踰こゆ〘70㌻〙
 90㌻ 
23 射󠄂者いるもの彼かれをなやまし彼かれを射󠄂いかれを惡にくめり 24 然されどかれの弓ゆみはなほ勁つよくあり彼かれの手ての臂ひぢは力ちからあり是これヤコブの全󠄃能者ぜんのうしやの手てによりてなり其それよりイスラエルの磐いはなる牧者ぼくしやいづ 25 汝なんぢの父󠄃ちゝの神かみによる彼かれなんぢを助たすけん全󠄃能者ぜんのうしやによる彼かれなんぢを祝めぐまん上うへなる天てんの福ふく、下したによこたはる淵わだの福ふく、乳󠄃哺ちゝの福ふく、胎はらの福ふく、汝なんぢにきたるべし 26 父󠄃ちゝの汝なんぢを祝しゆくすることはわが父󠄃祖ちゝの祝しゆくしたる所󠄃ところに勝󠄃まさりて恒久とこしなへの山やまの限極かぎりにまでおよばん是等これらの祝福めぐみはヨセフの首かうべに歸きしその兄弟きやうだいと別べつになりたる者ものの頭頂いたゞきに歸きすべし 27 ベニヤミンは物ものを噛かむ狼おほかみなり朝󠄃あしたにその所󠄃掠物えものを啖くらひ夕ゆふべにその所󠄃攫物ぶんどりものをわかたん

28 是等これらはイスラエルの十二じふにの支󠄂派󠄄わかれなり斯かくその父󠄃ちゝ彼かれらに語かたり彼等かれらを祝しゆくせりすなはちその祝しゆくすべき所󠄃ところにしたがひて彼等かれら諸人すべてを祝しゆくせり 29 ヤコブまた彼等かれらに命めいじて之これにいひけるは我われはわが民たみにくははらんとすヘテ人びとエフロンの田はたけにある洞穴󠄄ほらあなにわが先祖せんぞ等たちとともに我われをはうむれ 30 その洞穴󠄄ほらあなはカナンの地ちにてマムレのまへなるマクペラの田はたけにあり是これはアブラハムがヘテ人びとエフロンより田はたけとともに購󠄄かひて所󠄃有󠄃もちものの墓所󠄃はかどころとなせし者ものなり 31 アブラハムとその妻つまサラ彼處かしこにはうむられイサクとその妻つまリベカ彼處かしこに葬はうむられたり我われまたかしこにレアを葬はうむれり 32 彼かの田はたけとその中うちの洞穴󠄄ほらあなはヘテの子孫ひと〴〵より購󠄄かひたる者ものなり 33 ヤコブその子こに命めいずることを終󠄃をへし時とき足あしを床とこに斂をさめて氣いきたえてその民たみにくはゝる

第50章

1 ヨセフ父󠄃ちゝの面かほに俯ふし之これをいだきて哭なき之これに接吻くちつけす 2 而しかしてヨセフその僕しもべなる醫い者しやに命めいじてその父󠄃ちゝに釁くすりぬらしむ醫い者しやイスラエルに釁くすりぬれり 3 すなはち之これがために四十日にちを用もちふ其そは尸しかばねに釁くすりぬるにはこの日數󠄄ひかずを用もちふべければなりエジプト人びと七十日にちの間あひだ之これがために哭なげけり
 91㌻ 

4 哀哭なげきの日ひすぎし時ときヨセフ、パロの家いへにかたりていひけるは我われもし汝等なんぢらの前󠄃まへに恩惠めぐみを得うるならば請󠄃こふパロの耳みゝにまうして言いへ 5 わが父󠄃ちゝ我われ死しなばカナンの地ちにわが掘ほりおきたる墓はかに我われをはうむれといひて我われを誓ちかはしめたり然されば請󠄃こふわれをして上のぼりて父󠄃ちゝを葬はうむらしめたまへまた歸かへりきたらんと 6 パロいひけるは汝なんぢの父󠄃ちゝ汝なんぢをちかはせしごとくのぼりて之これを葬はうむるべし 7 是こゝに於おいてヨセフ父󠄃ちゝを葬はうむらんとて上のぼるパロの諸もろ〳〵の臣しんパロの家いへの長老としより等たちエジプトの地ちの長老としより等たち 8 およびヨセフの全󠄃家ぜんかとその兄弟きやうだい等たちおよび其その父󠄃ちゝの家いへ之これとともに上のぼる只たゞその子女こどもと羊ひつじと牛うしはゴセンの地ちにのこせり 9 また車くるまと騎兵きへいヨセフにしたがひてのぼり其その隊󠄄くみははなはだ大おほいなりき〘71㌻〙 10 彼等かれらつひにヨルダンの外さきなるアタデの禾場うちばに到いたり彼かしこにて大おほいに泣なき痛いたく哀かなしむヨセフすなはち七日なぬか父󠄃ちゝのために哭なげきぬ 11 その國くにの居人ひとなるカナン人びと等らアタデの禾場うちばの哀哭なげきを見みて是これはエジプト人びとの痛いたくなげくなりといへり是これによりて其處そこの名なをアベルミツライム(エジプト人びとの哀哭なげき)と稱󠄄となふヨルダンの外さきにあり 12 ヤコブの子等こらその命めいぜられたるごとく之これになせり 13 すなはちヤコブの子等こら彼かれをカナンの地ちに舁かきゆきて之これをマクペラの田はたけの洞穴󠄄ほらあなにはうむれり是これはアブラハムがヘテ人びとエフロンより田はたけとともに購󠄄かひとりて所󠄃有󠄃もちものの墓所󠄃はかどころとなせし者ものにてマムレの前󠄃まへにあり 14 ヨセフ父󠄃ちゝを葬はうむりてのち其その兄弟きやうだいおよび凡すべて己おのれとともにのぼりて父󠄃ちゝをはうむれる者ものとともにエジプトにかへりぬ

15 ヨセフの兄弟きやうだい等らその父󠄃ちゝの死しにたるを見みていひけるはヨセフあるいはわれらを恨うらむることあらん又󠄂またかならずわれらが彼かれになしたる諸もろ〳〵の惡あくにむくゆるならんと 16 すなはちヨセフにいひおくりけるはなんぢの父󠄃ちゝ死しぬるまへに命めいじて言いひけらく 17 汝なんぢら斯かくヨセフにいふべし汝なんぢの兄弟きやうだい汝なんぢに惡あくをなしたれども冀こひねがはくはその罪咎つみとがをゆるせと然されば請󠄃こふ汝なんぢの父󠄃ちゝの神かみの僕しもべ等らの咎とがをゆるせとヨセフその言ことばを聞きゝて啼󠄂泣なけり
 92㌻ 
18 兄弟きやうだい等らもまた自みづからきたりヨセフの面かほの前󠄃まへに俯ふし我儕われらは汝なんぢの僕しもべとならんといふ 19 ヨセフかれらに曰いひけるは懼おそるるなかれ我われあに神かみにかはらんや 20 汝等なんぢらは我われを害󠄅がいせんとおもひたれども神かみはそれを善よきにかはらせ今日こんにちのごとく多おほくの民たみの生命いのちを救すくふにいたらしめんとおもひたまへり 21 故ゆゑに汝なんぢらおそるゝなかれ我われなんぢらと汝なんぢらの子女こどもをやしなはんと彼等かれらをなぐさめ懇ねんごろに之これにかたれり

22 ヨセフ父󠄃ちゝの家族かぞくとともにエジプトにすめりヨセフは百十歳さいいきながらへたり 23 ヨセフ、エフライムの三さん世せいの子女こどもをみるにいたれりマナセの子こマキルの子女こどももうまれてヨセフの膝ひざにありき 24 ヨセフその兄弟きやうだい等たちにいひけるは我われ死しなん神かみかならず汝等なんぢらを眷顧󠄃かへりみなんぢらを此地このちよりいだしてそのアブラハム、イサク、ヤコブに誓ちかひし地ちにいたらしめたまはんと 25 ヨセフ神かみかならず汝等なんぢらをかへりみたまはん汝なんぢらわが骨ほねをこゝよりたづさへのぼるべしといひてイスラエルの子孫こらを誓ちかはしむ 26 ヨセフ百十歳さいにして死しにたれば之これに釁くすりぬりて櫃ひつぎにをさめてエジプトにおけり〘72㌻〙
 93㌻